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第72話『極寒地帯』


 吹雪こそ吹いていないが辺り一面に広がる凍った地面に積もる雪。

 雪を踏むたびにじゃくじゃくと音を立てコンクリートや土の地面とは違う面白い踏み心地だった。

 

 「あー! さっぶい!!」

 「わーい、雪だぁ」

 

 輸送機から降り、キャンピングカーで目的地に着いた紫菀達は一度外へ出て見たのだが支給された防寒具を着ていても想像以上の寒さが体を襲う。

 

 「隊長とマシロちゃんの温度差半端ないですね。マシロちゃんの防寒着はコート一枚だけですし」

 「しかし、ノエルの作った防寒着は凄いな。ここまで薄く軽いのにこれほど暖かいとは」

 

 二人で楽しそうに雪を投げあっているマシロとノエル。そしてそれの近くで身をちぢ込めている紫菀を見て琴音と弘は暖かいコーヒーを飲む。

 

 「一瞬で冷めたな」

 「はい、これはもうほとんどアイスコーヒーですね。美味しいからいいんですけど」

 

 体をちぢ込めている紫菀はぎこちなく体を動かしながら弘と琴音の元へと来た。

 

 「おい、この防寒具はほんとに使えるものなのか? さっきからとんでもなく寒いんだが」

 「どうなんでしょう? これを作ったのはノエルでして……自分たちには見た目ではさっぱり」

 

 弘は困ったように頬を掻く。

 

 「隊長くんとマシロちゃんのは普通の防寒着よ〜」

 

 マシロと歩いてきたノエルがそう伝えると紫菀はドスの効いた声でノエルを呼び雪の上に正座させた。

 

 「なんで普通の防寒着なのかな?」

 

 微妙に笑顔なのがかなり恐怖を煽る。

 いつも妖艶な笑みを浮かべているノエルもコレばかりは流石に引きつった笑みに変わり、ダラダラと脂汗が流れる。

 

 「にぃには半分悪魔だしシロと一緒で寒いのなんてへっちゃらだもんね」

 「そ、そういうことなんですぅ〜……」

 

 マシロの言葉にノエルは紫菀の顔を伺いながら同調する。すると紫菀はマシロを連れて少しその場を離れる。

 弘と琴音は顔を合わせ首を傾げ、ノエルは一時的に脅威が去ったと座っている体から力が抜けへにゃっとなる。

  

 「マシロ、ノエルにその服の採寸してもらってる時になんか言ったのか?」

 「うん! 悪魔は寒さとか暑さに強いからにぃにもマシロみたいに普通の服でも大丈夫って!」

 

 紫菀は頭を抱える。

 マシロは寒さや暑さに強く、それを悪魔ならみんなそうであると思っている。当然、悪魔も暑さや寒さへの耐性には個人差がある。

 

 「マシロは寒くなくても俺は寒いの。それに悪魔でも寒さや暑さのへ強さは人それぞれだから」

 「え?! そーなの!?」

 

 はぁ〜、と大きなため息をついてから紫菀はノエルの元へと行くと、ノエルのへにゃっとなっていた体にビシッと力が入り背筋が伸びる。それに対して紫菀はバツが悪そうに少し目を逸らす。

 

 「マシロのせいで互いに勘違いしてたみたいだな……その、悪かったよ。だから俺の防寒着何とかしてくれねぇか?」

 「あ、あぁ〜……」

 

 再びノエルの体の力が抜けて脱力しきった、安心したような声を出した。

 

 「まぁじで怖かったぁ〜。隊長くんってば殺意満々の笑顔とか向けてくるしぃ!」

 「悪かったって……」

 「でも、心配だったから一応持ってきておいて良かったよぉ。車内にあるの出してくるし、みんなもそろそろ一度中へ戻ろぉ」

 

 少し風が強くなり雪もふりはじめてきたため、調査は後回しにすることになった。

 

 「かなり吹雪いてきましたね」

 

 琴音が窓にうちつける雪を見ながらコーヒーを準備する。

 湯気の立ち上るコーヒーの入ったカップを四つ机に並べ、一杯だけホットミルクを用意する。

 

 「ここの近くにあるクレバスの中に遺跡への入口があるのか?」

 「自分も実際見た訳では無いのですが情報が正しいのならここで間違いないでしょう」

 「でも、そのクレバスを探すのも苦労しそうねぇ。この吹雪で完全に隠れるでしょうし〜」

 

 探すのが困難であるのは確かだが紫菀にはクレバスに落ちることへの不安があった。紫菀やマシロは落ちたところで問題は無いだろうが他は違う。

 

 「それにしても雪で隠れたクレバスをどうやって見つけるかを考えないと」

 「シロに良い考えがあるよ!」

 

 ホットミルクでヒゲを作っているマシロがズバリ閃いたと言わんばかりのドヤ顔を見せる。

 

 「あー……ちなみにどんな作戦だ?」

 

 紫菀は恐る恐る聞く。

 

 「にぃにの魔法で雪を全部浮かしちゃうの! そうすればくればすも見えるよ」

 

 ノエルと琴音と弘はドヤ顔のマシロを見てから紫菀に半信半疑の目線を送る。

 

 「そんなことできるんですか?」

 

 口を開いたのは弘だった。

 

 「出来なくはないと思うんだが今までそんな広範囲で大量の物を操作したことがないから」

 「物は試しでやってみましょう」

 

 琴音に後押しされるような形で吹雪がやんでから防寒着を着てキャンピングカーの外へと出る。

 広々と広がる雪原が太陽の光に照らされ美しく輝いている。

 

 「ここからどれくらいの位置にあるか予測はついてるのか?」

 「ここから半径一キロ圏内ですよぉ」

 

 広い範囲で探すためのドローンを四台準備しているノエルが答えた。

 

 「隊長は今までどれくらいの範囲までものを操作していたんですか?」

 「体に負担をかけない程度なら直径五十メートルでアサルトライフルを操作するくらいかな」

 

 必要な範囲からはあまりにも少なすぎる答えに弘はこの作業を何十回とやる覚悟を決めた。

 

 「しかし、何度もこの作業をするとなるとどちらにせよ隊長にはかなりの負担がかかりそうですね」

 「弘はこんな面倒な作業を何回もやりたいのか? てか、俺に何回もやらせるのか?」

 「い、いえ、そういう訳では……しかし、これほどまでの広さとなるといくらなんでも……」

 

 少し慌てる巨漢の男、という少し面白い光景に紫菀は堪えきれず吹き出した。

 

 「持ち上げられるのはせいぜい二分程度、持ち上げる高さは二メートルから三メートルが限界だから」

 「じゃあ、ドローンをあと三台追加しますねぇ」

 

 ノエルは荷台からさらに三台のドローンを準備し、七台のドローンを浮かせた。

 

 「よし、いつでもいいですよぉ」

 「でもどうやって……」

 「さすがに無理なんじゃ……」

 

 淡々と準備を終わらせ不安を一切見せないノエルに対して弘と琴音は不安げな様子で紫菀を見る。

 

 「マシロ、滅龍断糸(スニークテール)

 「はーい」

 

 マシロはワイヤーへと姿を変え、紫菀の周りを漂う。

 

 「半径一キロ圏内の雪に糸を張り巡らせてくれ、雪の厚さに合わせて縦方向にもな」

 「わかった」

 

 ワイヤーが雪に刺さり数分後にマシロは準備が出来たサインを出す。

 

 「じゃあ行くぞ、支配域(アカトル)!」

 

 紫菀が魔法を発動すると紫菀たちの周囲の雪が少し動いた。

 

 「ぬぐぐぐ……!」

 

 紫菀は眉間にシワをよせ、苦悶の表情をうかべる。少し、また少しと雪が動く。

 

 「よし……これで半径一キロ分の雪を回転させずらせた……」

 

 極寒の地だと言うのに紫菀の額に汗が滲む。

 

 「一気に持ち上げるから早くしてくれよ?」

 

 紫菀は一度息を整え、一気に力を込める。

 

 「オラァ!!」

 

 轟音と共に厚さ一〇〇センチはある雪の超巨大な雪の塊は綺麗にくり抜かれ二メートルほど持ち上げられる。

 ノエルはすぐさまドローンを動かしクレバスの捜索を始める。

 

 一分が経過した。紫菀は息も荒れ始めかなり苦しそうな状態だった。

 

 「あった!」

 

 ノエルはモニター越しに巨大なクレバスとその奥に見える遺跡のようなものを見つけた。

 

 「ノエルゥ、早く……!」

 

 紫菀はそろそろ限界だった。

 ドローンから発信機をクレバスの中へと落しすぐさまドローンを帰還させる。

 

 七台のドローンが雪の屋根を抜けた瞬間に紫菀の力が抜け、綺麗にくり抜かれた雪はすっぽりと綺麗に元の位置へと収まった。

 

 紫菀は肩で息をし、そのまま後ろへと倒れる。倒れると熱を帯びた体にひんやりとした雪が心地よく、そして後頭部には柔らかい感触が当たる。

 

 目をゆっくりと開けると何故かさっきまでモニターの前に座っていたノエルの顔が見える、そして胸。

 仰向けに寝ている自分がノエルを見上げ、そして後頭部への柔らかな感触から紫菀は膝枕されていることを理解しギョッとする。


 「お疲れさま」

 

 ノエルが優しく微笑む。

 すぐに頭をあげようとしたが力が入らず結局ノエルの柔らかな太ももに頭をあずける。

 

 「シロも頑張ったのに……」

 

 褒めてもらえていないことに少し不服そうに唇をとがらせていじけるマシロ。

 

 「シロちゃんもよく頑張っねぇ。おいで、ギュッてしてあげるわ」

 

 両手を広げるノエルにマシロの表情はパァっと明るくなりノエルの胸に顔を埋める。

 

 「最初喧嘩腰だったとは思えないな」

 「そうですね」

 

 いつの間にかノエルになついていたマシロを見て弘と琴音は微笑ましく思う。

 ようやく遺跡を調査する準備が整った。

第72話を読んでいただきありがとうございます。

第73話『ピラミッドの呪い』は8月3日に投稿するのでよろしくお願いします。

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