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第70話『師弟』


 薫那の師匠を名乗るミンディ·ウォードという女性。しかし、薫那とさほど変わらない年齢にも見える。

 

 「師匠……!」

 

 困り顔で小さく抵抗はしているが薫那の様子からどうやら本当に師弟関係のようだった。

 

 「ミンディさん! 薫那さんも困ってますから離れてあげてください」

 「セクラハで訴えられますよ」

 

 弘と同じくらいの体格に束ねたドレッドヘアーの似合う黒い肌の男と鍛えてはいるがかなり細身で少し長い前髪に常に笑っいるような表情の男にミンディは薫那から引き剥がされる。

 

 「お前ら! 離せ! 可愛い弟子を愛でて何が悪い! 挙句の果てにセクハラだとォ!?」

 

 薫那から引き剥がされたミンディはムスッとした顔のまま一歩距離を取って立っている。

 

 「ありがとうございます」

 「いえいえ、それにしても薫那さんのことはミンディさんからよく聞きいていますよ。可愛くて出来た弟子がいたと」

 「ジャック、余計なことを言うな」

 

 少し顔を赤くして頬を掻くミンディを見てジャックと呼ばれた黒い肌に鍛え上げられた肉体と束ねたドレッドヘアーを持つ男が白い歯を見せながら、すみません、と笑う。

 

 「じゃあ、そろそろ僕達の自己紹介でもさせてもろてもよろしいやろか?」

 

 常に笑っいるようなキツネ顔の男が遥に聞いてくる。遥はそれに頷き、自己紹介を始めてもらう。

 

 「僕は鮫島 圭斗(さめじま けいと)いいます。ミンディさんと同じく対魔法特殊部隊のメンバーで戦闘はもちろんやけど医学全般の知識もありますんでよろしく」

 

 ブレザータイプの軍服のような格好に軍帽から除く淡いクリーム色の髪。そして拭いきれない胡散臭い雰囲気があった。

 圭斗に続くようにミンディにジャックと呼ばれた男も自己紹介を始める。

 

 「私はジャック·フランソンと言います。ミンディさんや圭斗と同じく対魔法特殊部隊出身です。戦闘以外大したことは出来ませんが料理は得意です」

 

 圭斗と同じ軍服に身を包み、黒い肌から作られる爽やかさも若干感じる笑顔から覗く白い歯はやけに眩しく感じた。

 

 ようやく全員の自己紹介も終わり十代から二十代半ばで構成された部隊。最年長のジャックでも二十八歳、これほどまでの若き天才兵士が集められたことに紫菀と遥は思わずため息が漏れた。

 

 「それにしてもだ、かにゃぁ〜」

 

 再びミンディが薫那に絡み出す。

 スルスルっと手を薫那の着ているブレザーに入れる。さすがに薫那も赤面しながらも怒ろうとする。

 

 「もう! 師匠もいい加減に――」

 「あたしがあげたこの銃使ってるんだな」

 

 ミンディが抜き取ったのは薫那が普段肌身離さずショルダーホルスターに入れて持っているハンドガンだった。

 

 「それは……最新も武器も悪くないけどいざって時は古くてもずっと使ってる武器の方が安心できる。師匠の教えじゃないですか」

 

 ミンディから銃を受け取り、薫那は少し気恥しそうに笑いながら銃をホルスターにしまう。

 

 「よく覚えてるじゃないか」

 

 薫那の頭を撫でるミンディ。

 薫那より身長も高く、その頭を撫でる姿は年上で、師匠らしさを物語っていた。

 

 「さぁ、師弟の微笑ましいのは良いとして早く任務の準備に取り掛かった方がいいんじゃないか?」

 

 紫菀が手をパンパンと大きく叩き、全員の注目を集める。

 

 「さっきボスから今回の任務の詳しい内容の書かれた資料が送られてきた」

 

 紫菀は携帯端末に送信された資料を見せる。

 

 「軍用のキャンピングカーとそれに連結できる荷台を二つ用意しているみたいだ。一つは食料庫でもう一つは武器庫と発電機って書いてあるな」

 

 資料に書いてある指定された場所へ行くとそこには巨大な輸送機とキャンピングカーが二台用意されていた。

 

 「それで今から何をするんだ?」

 

 紫菀は遥に聞かれ資料を眺める。

 

 「食料庫と武器庫の確認、あと発電機が動くかどうかの確認だな。リストはそれに載ってる」

 

 遥も携帯端末を取りだし資料を開く。

 

 「三ヶ月分の食料ってことは三ヶ月に一度ここに戻ってきて食料を積んてまた戻るってことか」

 「報告も兼ねてそういうことだろう。だから輸送機があるんだろうな」

 

 キャンピングカーの中へと入り食料、武器、発電機の状態や個数などを調べると同時にキャンピングカーの設備に問題がないかなども入念にチェックし、作業が終わった時には三時間以上かかっていた。

 

 「はぁ〜疲れた」

 

 大きな溜息をつきながら座り込む遥の横に薫那は座り買ってきたコーヒーを渡す。

 

 「ほんと、意外と大変だったわね」

 「ああ、ほんとにな」

 

 コーヒーを飲みながらボーッと前を見る遥。その視線の先には楽しそうに話している紫菀と圭斗と弘とジャック、それとマシロと遊ぶミンディと琴音とノエル。

 遥の目線は無意識ではあったがなんとなくミンディの方へといってしまった。

 

 「私が昔何してたか気になる?」

 「ん? あー、少し……?」

 

 気の抜けた返事をする。

 

 薫那は懐かしそうにマシロとじゃれるミンディを眺めてからフッと笑みをこぼす。

 

 「私は師匠に拾われたんだ。今から六年くらい前の話なんだけど幼い頃からボスに無理言って任務にでてたんだけど任務で失敗して部隊とはぐれたことがあったのよ」

 

 薫那は幼い頃からボスに育てられ、その頃の任務というのは突然変異を遂げた異形の生物。それを秘密裏に討伐し表沙汰にしないようにすること

 

 「その異形の生物って」

 「そう、クリーチャーよ」

 

 六年前からすでにヴァサゴが関わる事件が多数起こっていたのだった。

 

 「それでね。クリーチャーとの戦闘でクリーチャーの攻撃をくらい崖から転落、捜索されたみたいだけど見つからず死んだと思われてたの」

 

 薫那は、ひどいでしょ、なんて言いながら自虐的な笑みを浮かべる。

 

 「でも実際は三日間さまよい続けてそろそろ死ぬなって思った時にクリーチャーの噂をどこからか入手したのか当時傭兵だった師匠に拾われたの」

 

 拾われた薫那は体力回復のためにミンディが作ったキャンプに行き、治療をしてもらい食事ももらった。

 

 「それから数日後のことよ。体力がだいぶ回復してきた頃にキャンプに手負いのクリーチャーが現れたの」

 

 そのクリーチャーは薫那がはぐれた後にあと少しというところで逃がしたようで瀕死の状態だった。

 

 「手元に武器がなかった私は楓華さんに渡してほとんど力を失い始めていた魔法を使った。魔法は使えはしたけどクリーチャーは倒せず、魔力切れで倒れたの」

 

 もうダメだ、そう思った時に薫那とクリーチャーとの間にミンディが立ち塞がった。

 その時の薫那は朦朧とする意識の中で凄まじい焦りを覚えてた。

 

 「逃げてって叫んだ、でも師匠は聞く耳を持たなかったわ。師匠が殺される、そう思ったわ。でも現実は違ったわ」

 

 ミンディは薫那を抱き上げ華麗にクリーチャーの攻撃を避けたのだった。そして薫那を非難せたミンディは巨大なケースから二丁のアサルトライフルを取り出した。

 まるでダンスを踊っているように避け二本の銃口を口に差し込み引き金を引いた。

 

 「その姿に感動して弟子入りを志願したの。そしたら師匠ってば案外すんなりと受け入れてくれてね。それなら三年くらい一緒にいて、その途中に対魔法特殊部隊に配属されたのよ」

 

 話し終えた薫那は立ち上がりスカートをパンパンとはらい遥に手を伸ばす。

 

 「昔話は終わりよ。みんなのところへ行きましょ」

 

 遥は薫那の手を取り立ち上がり横に並んで二人で賑やかに話している所へと歩み寄っていく。

第70話を読んでいただきありがとうございます。

第71話『砂漠地帯』は7月20日に投稿するのでよろしくお願いします。

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