表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/105

第67話『それぞれの仕事』


 出撃口に向かうとボスが立っていた。

 

 「遥達から聞いてわざわざ見送りにいてくれるなんて優しいですね。それとも出ていこうとする部下を止める熱血的な感じですか?」

 

 健司はニヤニヤとふざけた笑みを浮かべながらボスに話しかけるとボスはため息をついてからつられるように笑みを作る。

 

 「お前たちが死に行くような行為をするというのなら骨を折ってでも止めてるが」

 

 ボスは健司とヒツギとの距離を歩いてゆっくりと詰める。

 

 「そういう訳でもなさそうだしな。二人が生きて帰ってくると信じて見送ることにした」

 

 ボスはポケットから鍵を取り出して健司に渡した。

 

 「これは?」

 「あそこに置いてあるバイクのキーだ。動力源には魔宝石を使い乗ってる者の魔力を使って動くからな。旅の移動手段としては最高だろ?」

 「ありがとうございます」

 

 健司は鍵を受け取り試しにバイクにキーを差し込みエンジンをかける。その音は普通のオートバイと同じようなエンジン音で動力源が魔宝石とは思えなかった。

 

 「機能は普通のバイクと変わらないが操作方法も変わらないし扱いやすいだろう」

 「そうみたいですね。これならなんの問題もなさそうです」

 

 バイクにまたがった健司はヒツギに後ろに乗るように顎で支持する。ヒツギは健司の鍛えられた背中に抱きつくように捕まった。

 

 「なるべく早く帰ってきてくれることを願うがまず第一に死ぬなよ」

 「分かってますよ。まだ俺の復讐は始まってすらいないんですから」

 「じゃあ行ってくるよ。ボク達がいない間に全滅なんてしないでよ?」

 

 健司が普段言いそうな軽口を叩きながらヒツギが笑うとボスもそれにもつられて笑みを作った。

 

 「それじゃあくれぐれも気をつけてな」

 「はい、それじゃあ行ってきます」

 

 健司はエンジンを二、三度ふかしてそのままバイクを発進させる。

 響き渡るエンジン音は勤務を終えて帰ってきた遥達の耳にも入っていた。

 

 「なぁ、遥。健司の奴は残ってると思うか? それともヒツギと一緒にいると思うか?」

 「ヒツギと一緒にいるに決まってるだろ。目的はボスが話していた健司の祖先の持ってた修羅刀を探しに行くとかそんなんだろ?」

 「けんじも素直にひつぎちゃんと一緒に居たいって言えばいいのに、ね? かなちゃん」

 

 マシロはそれが当然であるかのように薫那に共感を求められ薫那は、そうね、と共感してマシロの頭を撫でた。

 

 「あーあ、健司とヒツギがいなくなったぶん俺たちの仕事が増えるんだよなぁ」

 「あ、そう言えば近々でかい任務が入るって隊長が言ってたよな……なぁ、紫菀。やっぱ今すぐ健司を呼び戻しに行かないか?」

 

 紫菀は大きなため息をつく。

 

 「そうしたいのは山々だがもう健司が出て十五分ほどたってる。バイク、それに健司の魔法があったら追いつくなんて無理だろ」

 「くっそ〜」

 

 そんなことを話しながら自分たちの部屋へと戻っていった。

 

 「ねぇ、遥」

 「ん? なんだ?」

 

 薫那が夕食の準備をしながら真面目なトーンで遥に話しかけた。

 

 「健司はもしヒツギが殺されそうになったら健司はどうすると思う?」

 「どうだろうな。いつもなら助けるだろうけど今回はヒツギ自身が決着をつけたがっていからな……それも家族とだ」

 

 遥は顎に手を当て難しそうに唸りながら考える。しかし、遥はすぐにそんな考えを辞めるように笑う。

 遥がなぜ笑ったのか全く理解できない薫那は頭の上に大量のハテナが浮かべた。

 

 「いやぁ、すまんすまん。ちょっと昔のこと思い出してさ」

 「昔のこと?」

 「昔な、俺たち親無しって言われて学校のクラスのヤツらとよく喧嘩になってたんだ」

 

 薫那はあとはオーブンの中で料理ができるのを待つだけになり、遥の座る席の前に腰をかけコーヒーを出した。出されたコーヒーで遥は少し口を湿らし、話を再開する。

 

 「健司は昔から喧嘩は強くてな狙われなかったんだけど俺はよく狙われて殴れられたりしてたんだよ」

 「やり返さなかったの?」

 「やり返したよ。でも相手は数が多くて一人二人は殴り返せてもすぐに残りの何人かにやられるんだよ。そこにヒーローの如く健司が現れてそいつらをボコボコにしちまうんだ」

 

 かっこいい健司と惨めな自分を比べ情けなかった、と遥は笑う。

 ヴァサゴが復活し、多くの化け物と戦う強い姿の遥しか知らない薫那は驚きしかなかった。

 

 「もう悔しくってよ。だから筋トレとか格闘技見るとかガキが考えそうな強くなる方法をいっぱい試して健司に言ってやったんだよ。次あいつらが喧嘩ふっかけてきたら健司は絶対に手を出すなってな」

 「健司はなんて言ったのよ?」

 「なんて言ったと思う?」

 

 遥は意地悪げな笑みをニンマリと浮かべて薫那に問いかける。薫那な少し考えて探るような視線を向けて答えた。

 

 「お前一人に危ないことさせれっか、俺も一緒に戦う、とか?」

 「あー、それも言いそうだな。でも、違うんだよ。素っ気なく、頑張れよって言ったんだ」

 「それだけ?」

 「そう、それ以上は何も言わない。もう少しなんかあってもいいだろとはさすがに思ったけどな」

 

 笑う遥に対して薫那の表情は浮かないものへと変わっていった。

 

 「じゃあ健司はヒツギを助けない?」

 「そこで話が終わってたらな」

 

 薫那は首を傾げる。

 

 「運悪く俺が健司に宣言して案の定すぐに喧嘩をふっかけられたんだが問題はいつもと違って人数が倍近く居たんだよ」

 

 遥は大袈裟に手を広げる。

 

 「俺も頑張ったんだけど半分起き上がれなくした頃には俺はもうボロボロ、あとは俺が死ぬ手前までボコボコにされるだけ、そう思った時にだ」

 「まさか?」

 「そう、そのまさかだ。健司のやつが颯爽と現れて残りの奴らを倒したんだ」

 

 遥がそう言ったタイミングでピピピピ、と機械的な音ともに料理が完成したこと知らせてくる。

 薫那が料理が食卓に並ぶのを待ち、料理が並べられ二人で食事を始める。

 

 「それで? 颯爽と現れて遥を助けた健司はなんか言ってきたの?」

 「手を出すなって言っただろって言ったら、あいつはニヤって笑いながら頑張れと入ったが分かったとは言ってない、なんて言いやがったんだ」

 

 俺が負けるって確信があったんだろうな、と遥は料理を口に運びながら天井を見てしみじみとしている。

 

 「とりあえず健司はヒツギのことを助けるってわけね」

 「いや、健司がヒツギになんて言ったかにもよるが多分助けない」

 「え!? な、なんでよ!」

 

 思わず立ち上がった薫那を宥めながら座らせ遥はスープをすすり一息つく。

 無駄に引っ張る遥の言葉を薫那はひたすらに待った。健司がヒツギを助けないわけがないそう信じていた。

 

 「健司はヒツギを助けない。理由は簡単だ。健司の奴はヒツギがドラスに負けるなんて微塵も思ってないからだよ」

第67話を読んでいただきありがとうございます。

第68話『魔導書回収任務』は6月22日に投稿するのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ