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第60話『完璧な技術』


 健司はコートを翻し、ドラスとの距離を縮めていく。それに応えるようにドラスは杖に隠された刃を引き抜いた。

 

 「仕込み杖か……それにただの仕込み杖って訳じゃなさそうだ。魔法器か? だったなんでお前が持ってる?」

 「人間の持つ魔法器の技術を開発したのは私だからな。そしてその技術は魔神器を生み出す技術へと進化した。たった一つの魔神器を研究し続け、ついに魔神器を作り出すことだできた。それがこれだ」

 

 この言葉に健司に疑問が生まれた。

 

 「なんでその魔法器の技術を教えたアンタが協力者じゃないんだ?」

  「魔法器の技術を人に教えたのはボクなんだよ。ドラスから研究データを盗んでね」

 

 答えたのはドラスではなくヒツギだった。

 ヒツギが言うには魔法器の技術はドラスがヒツギの前から消えた数年後に持ち出して人に教えたらしく、それからさらに数年後に魔神器の技術をドラスが作り上げたようだった。

 

 「ヴァサゴを倒すために協力するとボスと楓華との約束したから」

 「しかし、ヒツギの知る魔法器の技術は未完成のもの。いわば欠陥品だ、魔神器の技術は私の頭の中にのみある」

 

 魔法器の技術が完璧でないことはもちろんヒツギは知っていたがそれでも大きな戦力増加には繋がると思っていた。

 

 「自動修復、火力増加、切れ味増加、ごく稀に使用者の筋力や運動能力の上昇、ただの武器に比べれば優秀な武器になるだろう」

 

 しかし、とドラスは続ける。

 

 「まだまだ足りない。稀にじゃダメだ、一〇〇パーセント出なければ。それにあと一つ特性が魔神器にはある」

 「もう一つのの特性だと?」

 

 健司は眉間にシワを寄せる。

 ドラスはニヤリを笑みを浮かべる。

 

 「ああ、そうだ」

 

 ドラスの姿がパっと消える。と思えば健司の目の前に現れる。

 

 「なに?!」

 

 ギリギリでガードし鍔迫り合い状態になる。力は互角だが咄嗟にガードした健司は体制が悪く力が入りにくく徐々に押され始める。

 

 「もう一つは魔法だ」

 「健司!」

 

 ヒツギは速攻魔法で三本の光の矢を放ち健司をサポートする。

 健司はドラスが矢を避け、少し体制が崩れたところを一気に押し返した。

 健司が押し返すと同時にドラスは健司と距離を縮めた時のようにパっと消え、距離を取った。

 

 「瞬間移動?」

 「まぁ、そんなところだ」

 

 互いに睨み合う健司とドラス。

 

 ヒツギもサポートするべく詠唱を開始し、周囲と足元に魔法陣が複数展開される。

 それを見たドラスはパチンと指を鳴らすと帯状の魔法陣が現れヒツギを縛り上げた。

 

 「ヒツギ!」

 「少しヒツギにはじっとしていてもらう。この男を倒すまでな」

 

 周囲にあった魔法陣はヒツギが拘束された途端に消滅した。魔術の効果によって魔術が使えなくなったのだ。

 

 「そ、そんな馬鹿な!」

 

 ヒツギが驚きの声を上げる。

 

 「《滅魔拘束(イレーズバインド)》は詠唱や魔術名もなしで唱えられような魔術じゃないはずだ! それに魔術名なしで一部の魔法が使えるのはボクだけのはず……」

 「お前が主軸となり作り上げた魔術は基本的に詠唱や魔術名が欠かせない。もし両方、もしくは詠唱がいらないなら魔術は魔法を超える」

 

 ドラスは細い刀身を地面に突き刺す。

 

 「この空間は私がそれを実現できるようにこの魔神器によって作りだしたんだ」

 「じゃあ、お前がさっき言ってた魔法器の能力って言うのは」

 「ああ、この空間を作ることだ」

 

 考えなくても分かる圧倒的すぎる武器の性能差。実力でもドラスより劣っている現状で武器ですらドラスの方が上ともなると勝利の可能性が限りなく低くなる。

 

 「しかし、相手がどんな手を使おうとも俺は前に出て戦うしかないんだ」

 「ダメだ! ボクのサポート無しでこの空間でドラスに勝つことは無理だ!」

 

 《滅魔拘束(イレーズバインド)》により身動きが取れなくなったヒツギはその場から必死に叫ぶ。しかし、そんなヒツギの声を健司は無視して刀を構える。

 

 「量産することのみを目的とし、魔法器としての力はせいぜい壊れず手入れが要らないくらい。その程度の力しかないような魔法器を手にしたところで無駄だ」

 「健司! ボクのことはもういいからここから逃げて!」

 

 ヒツギとドラスの言葉に健司は面倒くさそうに大きくため息をつく。

 

 「逃げれたらヒツギ担いでさっさと逃げてるっつーの。それに家族を大切にしないやつは許せねぇ」

 

 ドラスは地面に刺したレイピアのように細い刀身を持つ剣を刺した地面から引き抜いた。

 

 「聖絶(アナテマ)!」

 

 健司の両足に赤黒い模様を浮かべ、その模様は刀にも浮かび上がり、左目を紅く光らせる。

 

 「ヒツギの魔法か、その魔法を使いこなせる人間がいるとは……と言っても半分は悪魔みたいなものか」

 「お前の自慢の魔術を俺が持ってる量産型で叩き切ってやるよ」

 

 健司は地面を思いっきり蹴るように走り出し、ドラスとの距離を一気に詰める。

 

 ぶつかり合う刃に飛び散る火花。

 

 刃がぶつかり合う度に健司の持つ魔法器が刃こぼれを起こす。それを聖絶(アナテマ)で魔法器に備わっている自動修復能力を強力し、高速で修復されなんとか刃が砕け散るのを防いだ。

 

 「どうした? 叩ききるんじゃなかったか? 叩き切るどころか刃こぼれと修復を繰り返しているだけだな」

 

 健司がドラスの握る魔法器にだけ集中をしているこのタイミングでドラスは健司の背後に一つの魔方陣を作り上げた。

 

 ドラスの口角が上がる。

 

 「健司! 危ない!」

 

 ヒツギの声でようやく後ろを向いた健司は爆発するように心拍数が上がった。

 放たれる直前の魔術が目の前に、健司はギリギリでなんとか回避に成功した。

 

 「今のを避けることが出来るとは」

 「はぁ……はぁ……ヒツギ、助かった」

 

 健司は荒れる息を整える。

 

 「この戦いでお前はあとどれだけ耐えることが出来るだろうな」

 「お前を倒すまでだよ」

 

 それでもドラスの余裕そうな表情は消えない。そして、健司は未だにドラスを倒す方法が思い浮かばなかった。

 

第60話を読んでいただきありがとうございます。

第61話『精霊は勝者に微笑む』は5月11日に投稿するのでよろしくお願いします。

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