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第06話『復讐の覚悟』


 健司は夢を見ていた。

 

 子どたちやシスター、そして遥と食卓を囲み楽しく会話をしている懐かし記憶。

 楽しく笑っていた子どもの笑顔は狂気的な笑顔に変り、目や口から赤いドロっとしたものが流れ出ている。

 

 「けんにぃ、助けてよ……」

 「痛いのは嫌だよ……けんにぃ……」

 

 笑顔に反して悲痛な声が聞こえてくる。

 健司は笑顔で悲痛な声を漏らす子どもたちから一歩二歩と距離を取ってしまった。

 

 「けんにぃ、見捨てるの?」

 「けんにぃだけ助かるの?」

 

 助けを求めるように子どたちは手を伸ばすが健司はその手を掴んでやることが出来なかった。

 

 「違う……俺は……」

 

 健司が何かを言おうとした時、伸ばされた腕の肉が腐りその場にちぎれ落ちる。

 

 「痛い……痛いイタイいたいイタい痛いイタイいたいイタい痛いイタイいたいイタい痛い!」

 

 次々と子どもたちが叫び出す。腕が落ち、足が肉が崩れ地面に叩きつけられた顔から目玉がこぼれる。

 

 「あ……あ……あぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 そこで目が覚める。

 息が荒れ、嫌な汗をじっとりとかいている。

 

 病室のような部屋、健司はゆっくりと深呼吸をして呼吸を整える。

 

 「起きてたんだな」

 

 飲み物を持った遥が部屋に入ってきた。

 

 「ここはいったい?」

 「俺もよく分からない。お前が起きたら説明するって言われたからな」

 

 健司は遥からペットポトルを受け取り中に入った水をかわいた喉に流し込む。

 

 流れる沈黙。

 

 その沈黙を破ったのは遥だった。

 

 「ガキどもを殺しておいて俺はのうのうと生きてるなんてな。最低だな……」

 「いや、俺のせいだよ。俺が感染していたのにすぐに出ていかなかったから」

 

 無駄とわかったているのにしてしまう責任の背負い合い。二人とも責任を押し付けられた方が楽だと強く思った。

 

 「残念ながらどちらのせいでもないぞ?」

 

 部屋に響く男の声。

 

 声を発したのは扉の近くに立っている艶のない白髪にメガネをかけたインテリな感じの男だった。

 

 「私はこの施設の管理をしている者だ」

 「病院かなにかですか?」

 「残念ながら違う」

 

 遥の質問を完全に否定する。

 

 「ついて来い、見せた方が早い」

 

 連れられて見せられたのは半壊した都会の街とその街から隔離するように立てられたシェルターのような五十メートルちかい壁だった。

 

 「あの壁の向こうには無数のアンデッドがはびこる滅んだ世界がある」

 「アンデッド?」

 

 聞きなれない言葉に遥が眉をひそめる。

 

 「ウイルスに感染し完全に化け物になってしまった連中の総称だ」

 「壁の向こうはそんなことに……それにこんな壁があったなんて」

 

 健司達が眠っている間に建てれるような建造物でないのは一目見ればわかる。しかし、これほどの施設を今まで知らなかったことが驚きだった。

 

 「あの壁は地下に埋められていたんだ。世界の各地にあれと同じ壁がいくつかあってな、生存者はそこで暮らしている」

 「生存者が暮らしてる……そうだ! 千寿はどこにいるんだ? 無事なんだろうな?」

 

 健司の脈拍が上がる。

 

 まさか気絶した後にヴァサゴに殺された、そんな最悪の結末が脳裏によぎる。

 

 「一緒にいた子だな。大丈夫だ、あの子は一般市民が暮らしている施設で私の信頼のおける家庭で預かってもらっている」

 「そっか……」

 

 健司は安心の息を漏らす。

 

 「一般市民がってことはここは一般市民が立ち入る場所じゃないってことですか?」

 

 遥の質問に男は少し驚いた顔をした。

 

 「飲み込みが早いな。ここは戦闘員や工作員や科学者が生活する施設だ。一般市民はここの地下に市民街に住んでいる」

 

 なぜそんな所に自分たちがいるのかと疑問を持ったがその疑問は聞く前に答えられた。

 

 「お前達にはヴァサゴを倒してもらわないといけないからな。と言うよりお前達以外今のところヴァサゴを倒せる奴がいない」

 

 ヴァサゴを倒す、あの圧倒的力を見せつけていた最強と最恐を具現化したような存在を。

 

 できるはずがない。

 

 考えなくてもそんなことくらい分かるはず、それなのに男の顔は冗談を言っているようでもない。

 

 「そんな、ただの人間に……それも軍人ですらないのに倒せるはずが――」

 

 健司はそこまで言って遥と自分が感染したのに生きている事実を思い出した。

 そして今生きているということはヴァサゴの言っていた適合者になっているということを意味している。

 

 「俺達は人間じゃないってことですか?」

 「それってどういうことだよ」

 「そうか、もう知っているのか」

 

 健司はヴァサゴに言われたことを全て説明したが説明していくうちに辻褄が合わないことに気づいた。

 

 「遥は第一フェーズで、俺は第二フェーズで不適合者になったはずじゃ」

 「お前らはヴァサゴ以外の悪魔にも出会ったんじゃないのか?」

 

 健司は手首に描かれた魔法陣に目をやる「渡すものは渡したから」という楓樺の言葉を思い出す。

 

 「渡すものは渡したからってどういう意味なんですか? それにこの模様は一体」

 「楓樺が他の悪魔から預かっていた力をお前らに渡した証拠だ。ヴァサゴに力を与えられ楓樺に技を与えられたんだ」

 

 ヴァサゴの力で生み出されたウイルスの力で悪魔の遺伝子に書き換えられ、楓樺は半分以上悪魔になった健司と遥に悪魔の技を渡すことが出来たという。

 

 遥は第一フェーズの症状が進行しながら第二フェーズの症状も進行していたため悪魔の技を渡し、無理やり第一フェーズの症状を押さえ込み適合者になったらしい。

 健司が適合者になれた理由はいまいち分かってないと言われた。

 

 「自己紹介が遅れた。私はディランだ、ここではボスと呼ばれているからそう呼んでくれ。そして、お前らに戦いの技術を教える教官でもある」

 

 ボスはいたってにこやかな表情のままだ。

 

 「いやいや、俺たち戦うなんて一言も言ってないし……なぁ? 健司」

 

 遥は健司に同意を求める。

 健司は何も言えずに黙ってしまう。

 

 「お前達の妹や弟を殺したヴァサゴに復讐したくはないのか?」


 その言葉に健司と遥は目の色が変わる。

 二人が復讐したくないわけが無い、殺せるものなら今すぐにでも殺したいと思っている。

 

 「それに、お前達が戦わないならヴァサゴに人類はただ皆殺しにされるのを待つだけなんだがな」

 

 世界を救うなんて大きなスケールじゃ戦う気になんて健司も遥もなれなかったが大切な家族の復讐なら戦う理由としては十分すぎた。

 

 二人はうなずきボスの顔を見る。

 

 「決意を固めてくれて助かるよ」

第6話読んでいただきありがとうございます。

これからもどんどん続きを出していくのでよろしかお願いします。

第7話も24時から25時までに投稿しますのでまたよろしくお願いします。

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