表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/105

第52話『契約と願い』


 楓華と蒼太は街の屈強な男や生き残った王国兵と共に住民を国にあるありったけの馬車を使い離れた遺跡へと避難させる。

 

 「楓華さんでしたよね? 戦闘に戻らなくても大丈夫なんですか?」

 「正直言って今の私が戻ったところで戦闘には直接的影響は与えれない。場合によっては参加するけどそうならないことを願うわ」

 

 蒼太は楓華の言ってる意味がよくわからず首を傾げるが意味をしっかり聞く前に遺跡についてしまい急いで住民を中へと誘導する。

 

 「馬車八十台使ってギリギリ運べたか……助けれて良かった」

 

 蒼太は一安心してその場に座り込む。しかし、安心したのもつかの間、遺跡の中に巨大な魔法陣があらわれた。

 蒼太と楓華は身構えるがその魔法陣にはある映像が映し出された。

 

 その映像はヴァサゴと吹雪鬼達が戦っているものだった。

 

 「私はとりあえずあそこに戻るわ」

 

 楓華はそう言って遺跡の外へ出た。

 

 現状はどう見ても吹雪鬼達が有利とは言えない状況だった。

 

 「俺も一緒に戦えたら……もっと俺に力があったら……!」

 

 大切な人が危険な場所に身を置いているのに自分は安全な場所で見守ることしか出来ないことが悔しかった。

 

 『守れる力が必要ですか?』

 「……え?」

 

 突如聞こえた声に蒼太は周囲を見渡すが誰も蒼太に話しかけた様子はなく、声が聞こえた様子もない。

 

 『守れる力が必要ですか?』

 「だ、誰だ……?」

 『こちらへ来てください、こちらへ来ればあなたの望むものが手に入ります』

 

 遺跡の奥へ繋がる道を見る。この声はこの奥へ進めと言っているのだろうと蒼太は思った。

 それと同時にこの声を信じていいのかという不安があった。

 

 『早くしないと間に合いません』

 

 蒼太は意を決して声のする方へ向かう遺跡の奥の暗い道を進み続けると行き止まりになっていた。

 

 「どういうことだよ」 

 

 驚きを隠せない蒼太。

 

 『血を示してください。あなたが本物であれば道は開かれます』

 「血を示す?」

 

 血を示すと言われても何をすればいいのか分からず蒼太は少し考え、持っていた刀で少し掌を切り壁に血を付けてみた。

 すると壁が崩れ扉が現れた。

 

 扉を開け中に入るとそこはとてつもなく広い空間。さらにどういう原理なのか窓もないのにとても明るい。蒼太は辺りを見渡しながらどんどん進んで行く。

 

 「お待ちしてました」

 

 その広い部屋の中央に一人の真っ白い少女が突如現れ、金色の瞳を蒼太に向けた。しかし、蒼太はそのことに驚く前に何故こんな少女がこんな場所にいるのか疑問に思った。

 

 「君は?」

 「魔導書エイボンです。以後エイボンとお呼びください」

 

 真っ白い少女ぺこりと頭を下げた。

 

 「魔導書……エイボン……?」

 「知りませんか?」

 

 魔導書エイボンを名乗る真っ白い少女は可愛らしく首を傾げる。しかし、表情は無表情のままであった。

 

 「名前くらいしか知らない。と言うかおとぎ話の世界のものだと思ってたから」

 「お父様から何も聞いてませんか?」

 「父さんから?」

 

 蒼太の父親は十五年前に十二人の英雄と呼ばれた人智を超えた力を持つ者の一人だった。

 

 「魔導書はこの世に元々十二冊ありました。そしてヴァサゴに敗れ私以外の魔導書は力を失いただの本になってしまいました」

 「ちょっと待ってくれ、父さんはヴァサゴに殺されたって今言ったのか? 羅刹じゃなくて」

 「はい、羅刹様はむしろ助けに来てくれたのです。しかし、一足遅く誰一人助けることが出来なかったのです」

 

 エイボンの言葉に蒼太は頭を抱えてその場に座り込んでしまった。

 蒼太は父親の死体のそばに立っていた羅刹が父親を殺したと思っていたがそれは間違いであった。

 

 「はは……最低だ。十二年間も勘違いしてたなんて……」

 「どうしたんですか?」

 

 エイボンは顔色を変えず心配する。

 

 「大丈夫だ。続けてくれ」

 「……分かりました」

 

 エイボンは再び無表情のまま淡々と話しを続ける。その話は魔導書とはなんなのかという話だった。

 

 「私は、私達はヴァサゴと戦うために多くの悪魔によって作られました」

 「ヴァサゴを倒すために悪魔に作られた? ヴァサゴも同じ悪魔なのに殺すのか?」

 「ヴァサゴは自分が楽しめる戦いをするために生きています。強い相手と戦いそして殺す、それは相手が悪魔であろうと人であろうと」

 

 エイボンは表情こそ変わらないが話し方はとても暗いものだった。

 

 「私は戦場から離脱し、あなたに力を貸すよう命令され今にいたります」

 「命令されたからって、もし俺がここに来なかったら……」

 「その心配はなかったので」

 

 エイボンがなぜそこまで自信たっぷりに言いきれるのか蒼太は理解出来なかった。

 

 「私は私が一番必要とされる時に必ず出会うことができるよう設計されていますので」

 「随分便利だな」

 

 「そんなことより」とエイボンはパンッと手を叩き話を戻す。

 

 「あなたのお父様に代わり私の新たな主として契約していただけますか?」

 「ヴァサゴと戦える力がお前と契約すれば手に入るのか?」

 「今よりは確実に強い力、人を超えた力が手に入ります」

 

 エイボンの言葉に蒼太は迷う素振りを見せない。答えはとっくに決まっていた。

 

 「魔導書エイボン、俺と契約しろ」

 「契約を開始します」

 

 エイボンは少女の姿から一冊の本の姿へと変貌した。蒼太は目の前で起こったことが壮大すぎて言葉も出なかった。

 

 本は独りでに開き素早くページがめくられていき、そしてエイボンの声が聞こえる。

 

 『魔力情報、肉体情報、取得』

 

 蒼太とエイボンを取り囲むように五つの魔方陣が二人を取り囲む。

 

 「情報登録完了。最後にここに血判を押してください」

 

 魔導書があるページが開かれた。

 蒼太はその真っ白いページに血判を押した。

 

 「それではこれからよろしくお願いします。マスター」

 「あ、ああ。早く吹雪鬼のところへ行こう、時間が無い」

 

 蒼太は急ごうと走り出そうとした時、自分の体が驚くほど軽いことに気がついた。

 

 「す、すげぇ。体が軽い」

 「それはマスターの体は私と契約したことで魔力の操作しやすくなったからでしょう」

 「これなら……」

 

 再び走り出そうとする蒼太をエイボンは慌てて止めた。蒼太は止められたことに不服そうな顔をする。

 

 「まさかヴァサゴの元まで走っていくつもりですか?」

 「そうだが?」

 

 人の姿に戻ったエイボンは呆れ混じりに少しため息をついた。

 

 「空間移動魔法を使えば一瞬でヴァサゴの所へ着きますよ?」

 「そんなことが出来るのか?」

 「魔導書ですから」

 

 そう言ってエイボンは魔法陣を展開して準備完了と言わんばかりの目を蒼太に向ける。

 

 「じゃあ、ヴァサゴのところまで頼んだ」

 「はい、マスター」

 

 蒼太の展開した魔法陣に蒼太とエイボンは魔法陣に吸い込まれていった。

第52話を読んでいただきありがとうございます。

第53話『タイムリミット』は4月1日に投稿するのでよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ