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第05話『全てをかけて』


 楓樺は壁にもたれかけさせた健司と遥の手首を握りブツブツと何かを唱え始める。すると、手首に魔法陣が浮かび上がりその魔法陣はパソコンのデータをダウンロードする時のように少しづつ黒く色がついていく。

 

 「これは……?」

 「詳しいことはいずれ教えられるわ。今言えるのはあたな達はこれでほかの人みたいにはならない」

 

 楓樺の言うように腐り始めていた遥の傷口は傷は塞がりはしないものの治っていき、目も元の白い色に戻っていく。

 

 「遥は大丈夫なのか? それに千寿は?」

 「大丈夫よ。運が良かったのかこの子は予防注射をしなかったんじゃない? 感染はしていないわ」

 

 そう言う楓樺は額に嫌な汗をかき、息が荒れ始めてきていた。

 もう少しで魔法陣が完成しようとしたその時にドアが破壊され、誰かが部屋の中へ入ってきた。

 

 こんな状況でドアを壊し入ってくるような奴は一人しか予想できない。そしてその予想は最悪にも的中する。

 

 「みぃーつけた」

 

 ヴァサゴが笑顔で現れた。

 楓樺は舌打ちをするも健司と遥の手を握ったまま、魔法陣が完成するのを待ち続ける。

 そしてようやく、魔法陣が完成した時にヴァサゴは素手で背後から楓樺の心臓を貫く。

 

 楓樺の口から大量の血がこぼれる。

 

 「渡すものは、渡したから……あとは、頼んだわ……」

 

 楓樺のその言葉を最後に健司の意思はプツリと途切れてしまった。

 

 楓樺は貫通しているヴァサゴの手を握り、黒い靄で自分ごと包み込み別の所へ移動させる。

 移動した場所はグロウスの研究施設だ。

 

 「なんの悪あがきだ?」

 「悪あがきじゃないわ、あの二人に全て託した時点で私の任務は終わったのよ」

 

 楓樺の口からまた血が溢れ出る。

 

 「強いて言うならあとはこれを壊すだけよ」

 「なにぃ?」

 

 楓樺は靄の中から水晶玉のようなものを取り出しそれを拳銃で撃ち抜き破壊した。

 

 「あーあ、最悪だ」

 

 ヴァサゴは呟いた。

 

 広いとは言えな研究室を凄まじい光が包み込み、その光が消えた時には楓樺の姿は消え、壁や床、天井には魔法陣が描かれていた。

 

 「まさか自分の肉体を犠牲にしてまで俺をここに閉じ込めるとはな。悪知恵ばっかりよく働くやつだ」

 

 ヴァサゴは面倒くさそうに近くにあった椅子へ腰をかけ、居眠りを始めた。

 

 「ヴァサゴ様、お戻りになられていたのですね。お休みのところ申し訳ないのですが報告をさせていただきます」

 

 数時間後にグロウスが帰ってきた。そして、報告書を読み上げる。

 

 「現在、予防注射を装いウイルスを散布し人類の半分は不適合者となり、感染していない人類は四割か三割ほどです。そして、適合者であろう人物が二名ほどいたのですが私が回収する前に何者かに連れていかれました」

 

 半寝で聞いてたヴァサゴがその言葉でムクリと体を起こし興味を示すように前のめりになった。

 

 「ほう、その適合者の名前は?」

 「はい、咲宮 健司と咲宮 遥と言う現在高校三年生の二名。いずれもヴァサゴ様のお知り合いです」

 「遥がなることは分かっていたが健司は何故あの場で死ななかったのか、力というのは恐ろしいものだ」

 

 報告を終えたグロウスは壁を見渡し、首をかしげる。そこには身に覚えのない模様が描かれている。

 

 「ヴァサゴ様、この模様は一体なんでしょう? ヴァサゴ様が描かれたのですか?」

 「いや、敵対する悪魔にやられた。この場所に俺を閉じ込める魔法だ」

 

 そう言うとヴァサゴは立ち上がりドアに触れようとするとドアノブを手がするりとすり抜けた。

 次に壁に触れようとすると磁石の同じ極を向けている時のように反発して触れることが出来ない。

 

 「私が魔法陣ごとこの壁を破壊してしまえばいいのではないでしょうか?」

 「無駄だ。どっちにしろ俺は出れない」

 

 慌てるわけでもなく、悔しがるでもなく、ただ面倒臭そうな態度のまま再び椅子に腰をかける。

 

 「いったいどれくらいの間ここから出ることが出来ないのでしょうか?」

 「まぁ、三年から四年くらいじゃないか?」

 「そ、そんなに!?」

 

 そんなに長い時間ここにいなければならないというのにヴァサゴが全く動じていないことにもグロウスは驚いた。

 

 「そんなに驚くことか?」

 

 悪魔の寿命は長い。

 それにずっと封印されていたヴァサゴにとって三年程度なんてことない。

 

 「グロウスに頼みがある」

 「はい、なんでしょうか?」

 「この男に協力するよう言ってくれ」

 

 ヴァサゴから写真を受け取る。その男はまさに紳士といえるような見た目の男だった。

 

 「この男は?」

 「そいつは俺が昔に不老の力を与えた男でな。こいつが仲間に加われば数年くらい俺が戦場に立つ必要は無い」

 「それほど強いのですか?」

 

 半信半疑といった様子で聞くグロウスを見てヴァサゴはニヤリと笑ってオーバーアクションで話す。

 

 「そりゃあ、強いってもんじゃない。今この世界であいつに勝てるやつなんて俺を抜けばいないな」

 「そんなにもですか」

 「ああ、だからそいつを探し出してくれ」

 「分かりました」

 

 そう言ってグロウスは部屋を出ていった。

 

 「さてさて、これから暇だなぁ」

第5話読んでいただきありがとうございます。

1度投稿が遅れてしまったので今度は遅れないように投稿したいと思います。

第6話は12時から13時までに投稿したいと思います。

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