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第49話『戦争の合図』


 カーテンの隙間から入る太陽の光と小鳥の鳴き声。そしてなりより大通を行き交う人々の声に目を覚ます。

 カーテンを開け、体いっぱいに心地よい太陽の光を全身に浴びる。

 

 「私、本当に優勝したんだ」

 

 吹雪鬼は小さくつぶやく。

 

 英雄決定戦を勝ち抜き、昨日はディランや楓華と共に打ち上げをしていた。蒼太も誘おうとしたが出会うことが出来ず、吹雪鬼は打ち上げ開始から数十分はその事で項垂れていた。

 

 闘技場へ向かう人々。今日は王様から直々に英雄決定戦の優勝者への国の軍人としての証であるメダリオンを歴代の優勝者の前で渡される。

 この時は武力を見せつけるためか歴代優勝者はもちろん国の軍人は全ていつでも戦える装備をしている。

 

 吹雪鬼はいつもどうり闘技場へ向かおうと支度を済ませて宿を出ると馬車が一台とめられており、それを囲むように人だかりができていた。

 

 「こ、これは一体……」

 「ま、初の女性優勝者だからね」

 「十人目の優勝者が決まったってことはヴァサゴと戦う日が近いってのにおちゃらけたもんだよな」

 

 状況を呆れたように眺めるディランと楓華がいつもの様に唐突に現れた。

 ディランが現れたことで人々はさらに盛り上がる。それもそのはず今回の決勝は歴代にはない特殊な力が使われたのだから。

 

 「あ、おはようございます」

 

 そんな騒がしい人々を無視して吹雪鬼は挨拶を軽くすませた。

 

 「おはよう吹雪鬼。昨日はちゃんと眠れた? ディランと戦うのはさすがに骨が折れたでしょ」

 「そうですね。ディランさんはかなり強かったですから」

 

 いつもの様に三人で話しながら闘技場へ向かおうとすると馬車の近くにたっていた使用人のような人がオロオロしながら話しかけてきた。

 

 「あ、あのぉ……優勝者の吹雪鬼様にはこちらの馬車に乗って送迎するように国王から言わてますので」

 「えっと……この二人も一緒に乗っても大丈夫ですか?」

 「はい、もちろんでございます。吹雪鬼様のご友人でさらに準優勝者のディラン様となればこちらと断る理由はございません」

 

 そう言われ開けられた馬車の中へと入り闘技場へと向かった。

 

 「そう言えばディランは私が戦いの最後で何をしたか分かりましたか?」

 「いや、楓華も分からなかったから完全にお手上げだな」

 

 両手を上げてるリアクションを見せる。

 

 「じゃあ、教えてあげるので私の質問に正直に答えてもらってもいいですか?」

 「まぁ、答えるくらい構わないが」

 

 吹雪鬼はディランの目をじっと見る。

 

 「それじゃあ聞きますね。ディランさんは私の戦いを本気で戦いましたか?」

 「なんだ、その質問は? 俺が予想外に弱かったて言いたいのか?」

 

 ディランは笑いながら聞き返してくる。

 

 「そういう訳ではないんです。確かに殺し合いではないあの戦いで全力ではないのはわかりますが……」

 

 吹雪鬼がそこまで言った瞬間に楓華が堪えきれなくなったようにプッと吹き出した。

 

 「バレてるんだからシラを切るのもやめなよディラン」

 「うるせぇな、楽しんでいい戦いだってあってもいいだろ。それに楽しんでる中で全力だったんだからいいだろ」

 「やっぱりかぁ、なんかおかしいって思ってたんですよ。これじゃあ私が優勝者でいいか怪しくなりますね」

 

 吹雪鬼は笑いながも少し残念そうにする。

 

 「いや、負けは負けだ。優勝は吹雪鬼でなんの問題もないだろ」

 「そんなカッコつけたこと言ってるけど最後の方は本気だったよね?」

 「お前ほんとうるさい」

 

 バツが悪そうにディランが顔を逸らすと吹雪鬼と楓華か堪えきれず大笑いする。

 

 「それで最後のあれはなんだったんだ? 左右から同時に俺の武器が飛んできたんだが物体を操る魔法か?」

 「いえいえ、もっと簡単ですよ」

 

 吹雪鬼の言葉に楓華とディランは難しい顔をして悩む。その姿を見て吹雪鬼はプッと吹き出した。

 

 「ったく、勿体ぶらないで教えろよ」

 「あれはですねこの剣の力でして」

 「あの、到着致しました」

 

 吹雪鬼が説明しようとしたタイミングで馬車は目的地についてしまった。

 

 「あー、式が終わったら話しますね」

 

 吹雪鬼はそう言ってディランと楓華と別れ王様と歴代優勝者の元へ向かった。

 

 「や、やぁ、吹雪鬼」

 「そ、そうくん……! 試合の後からずっと会えなかったからもう帰ったのかと思ってたよ……」

 

 途中で蒼太と出会い吹雪鬼は嬉しそうに蒼太の元へ駆け寄った。

 

 「…………」

 「…………」

 

 二人の間に妙な空気が流れる。二人とも目を合わせることが出来ず右へ左へと目を泳がせている。

 

 「決勝は見たよ。優勝おめでとう、やっぱ僕じゃ吹雪鬼に勝てなくて当然だったみたいだ」

 

 蒼太が沈黙を破る。

 

 「そ、それは……」

 

 吹雪鬼は確かに蒼太との試合では鬼の力をほとんど使わなかった。その事が蒼太を傷つけたと思い吹雪鬼は言いどもってしまった。

 

 「私は化け物だから……」

 「人間にしては化け物くらい強い自身は多少あったんだけどな」

 

 蒼太はポリポリと頬を掻きながら笑みを作る。十年ぶりくらいに見た蒼太の笑顔に吹雪鬼の心臓は飛び跳ねるように脈を打つ。

 

 「わ、私そろそろ行かないとダメだから! も、もう行くね!」

 

 顔を赤くした吹雪鬼はそれを見られまいと足早にその場を去ろうとする。

 

 「吹雪鬼!」

 

 蒼太に呼び止められ振り返る。

 

 「全部終わったら僕からきちんと全部言わせてもらうから」

 

 蒼太の顔は赤くなっていた。

 

 「うん! 待ってるから」

 

 吹雪鬼は眩しいほどの笑顔でそう言って王様の元へ走って向かった。

 

 「英雄決定戦、優勝おめでとう。私からはこのメダリオンを贈呈する」

 「ありがとうございます」

 

 吹雪鬼はメダリオンを受け取り、頭を下げてから歴代の優勝者の並ぶ列の中へ加わる。

 

 「人類が悪魔から宣戦布告を受け十年の月日が経った。ここにそろう十人は誰もが認める強者であり、英雄となる者達である」

 

 王様は声高らかに演説を始める。

 

 「人類の力の凄さを! 人類の真の強さを! 私はこの目に焼き付けたい!」

 

 観客席から歓声が上がる。

 

 「さぁ! 準備は整った」

 

 王様の挙動がおかしくなり、唸り声を上げ、頭を抱えて屈み込んだ。

 周りにたっていた兵士と何人かの歴代優勝者が王様の元へ駆け寄ろうとする。

 

 「そいつに近づいちゃダメ!」

 

 叫んだのは楓華だった。

 横にいたディランは少し驚いた顔をしたがすぐさま理由を察知して立ち上がる。

 

 「早くここから逃げろ!」

 

 かがみこんだ王様の背中が蝶のサナギがかえる時のように割れる。

 噴水のように血が飛び散り、駆け寄ろうとしていた兵士や優勝者の足を止めさせる。

 

 避けた所から化け物じみた腕が飛び出し、体を引き裂き、体内からその禍々しい姿を現す。

 真っ二つに裂かれた王様の体は自らの血の海に落ち、べチョリと嫌な音を立てる。

 

 「十年ぶりだなぁ」

 

 限りなく人間に近いが所々禍々しい形をした体に血を滴らせる。

 十年前と同じように魔法陣で世界中に今の映像を見えるようにする。

 世界の人のいる場所全てにその魔法陣は現れ、それにより世界中の人は戦争が始まったことを理解した。

 

 「おまえら人間がこの世界を守りたいのなら、自分たちを守りたいなら俺を殺してみろ」

 

 四つの魔方陣が自動で動きだし今から始められる戦闘をよく見えるように映し出す。

 

 「まずはこの街を破壊するか?」

 

 ヴァサゴは街の方に掌を向ける。

 そして展開される緑色の魔法陣。

 

 「吹き飛べ」

 

 圧縮された空気の塊が放たれる。

 客席の一部を破壊し、その後ろに広がる街が破壊された客席と同じ幅だけ民家も店も何もかも崩れ、瓦礫の山となった。

 

 今の一撃で一〇〇人ほどの人が死んだ。ほんの一瞬ではあったが人が風に切り裂かれ鮮血をまき散らし瓦礫に潰された。

 

 「戦争開始だ」

第49話を読んでいただきありがとうございます。

第50話『鬼神解放』は3月21日に投稿するのでよろしくお願いします。

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