表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/105

第46話『人を超えた領域』


 吹雪鬼に敵意を向ける青年は闘技場へ行ったかと思えば数十秒後にはもう帰ってきていた。

 

 その後もテンポよく進められていく闘技場での戦いはディランと吹雪鬼と青年以外の対戦は基本的には白熱し、観客も大いに盛り上がっていた。

 今回の大会は出場選手が多く例年通りなら二日間で終わっていた大会も今回は三日間に分けられた。

 一日目は四戦で終わり、二日目は三戦が終わったのだが、この二日間で吹雪鬼たちは数十秒で終わるため、一切疲れていないのだが既に満身創痍の人もいた。

 

 「準決勝手前で残る選手のうち三人が満身創痍か。なんか申し訳なくなりますね」

 「なんで申し訳なるんだよ。ここで満身創痍の時点で優勝したところで死ぬだろ」

 

 手厳しいことを言うディランだがその通りだ。人相手に満身創痍になる程度の強さではヴァサゴと戦えば数秒ともたないだろう。

 

 「満身創痍の奴らはいいとして俺の対戦相手は只者じゃなさそうだよな」

 「そうですね……」

 

 ディランの対戦相手はこれまでの対戦相手を再起不能にするような男だった。

 この男は吹雪鬼やディランやあの青年とは違う意味で観客を静かにさせる。

 

 「ま、行ってくるわ」

 

 ディランの背中にはさっきまでの試合では装備されていなかった大剣と斧が装備されていた。

 

 「いや、デカ……」

 

 心の声を漏らした吹雪鬼にニヤッと笑みを浮かべ、ディランは闘技場へと向かった。

 

 闘技場では男は既に準備をしていた。

 

 「よぉ、悪いが死んでも文句言うなよ?」

 「そのままそっくり言い返そう」

 

 美しい鎧に身を包んだ男の両手には巨大な盾と両刃の片手剣が握られている。

 

 「それにしても騎士王様がこんな野蛮な大会に出場するとは思いもよらなかった」

 「私もこんな所でかつての部下と相見えるとは思ってもいなかった」

 

 ディランが騎士王といったこの人物は戦場に立てば勝利をもたらす人類最強の男と言われている。

 

 ディランはこの騎士王の右腕として戦場にたっていた時期があったが戦争が嫌になったディランは騎士をやめたのだった。

 

 かつての仲間と出会い、多少の挨拶を交わし、少し微笑み、その微笑みが二人にとっての戦闘開始の合図となった。

 

 先に動いたのディラン。

 

 巨大な斧を手に取り思いっきり振り下ろす。甲高い金属音が闘技場全体に響きわたる。

 反響する甲高い金属音が消えてからようやく観客の歓声が上がる。

 

 「あんたほどの実力を持ってるならこんな大会でなくたってあの悪魔と戦うよう頼まれるだろ」

 「私はより強い相手と戦いたいのだよ。分かるだろ? 戦場に身を置き、手に入れた最強の称号、それじゃ物足りない」

 

 騎士王の瞳に曇りなど一切ない。その狂気じみた戦闘への執念が勝利への執念が最強への執念がこの騎士王を狂わせた。

 

 騎士王は盾を振り、ディランの斧を弾いて右手に握られた片手剣で高速の突きを六発放つ。

 全ての突きをギリギリで回避したディランだが頬から少し血が流れた。

 

 「あんた本当に変わったよ。昔は人のために戦っていたのに」

 「私が最強になればこの世から戦争をなくすこともあのヴァサゴなどという悪魔も倒すことも出来る」

 

 ディランは空いている左手で背中の大剣を手にとり、ゆっくりと騎士王と距離を詰めていく。

 

 観客は少しざわめきだした。それもそのはず、ディランの両手に持つ武器は両方とも片手で持つなど不可能な代物だ。

 

 「昔は状況に応じてその二つを使い分けていたのに今は同時に使うのか?」

 

 騎士王の言葉にディランは反応を示さない。

 

 ディランが突如移動速度を上げ一気に騎士王との距離を詰める。

 

 「くっ!」

 

 騎士王はギリギリで大盾を構えるがディランの両手に握られる超重量級の武器の高速の連撃を長時間受け止めることが出来るはずもなく横へ逃げる。

 騎士王の中で敵の攻撃は全て盾で受け、回避はしないという己の防御力への圧倒的自信が揺らぎ始めた。

 

 「ありえない、超重量級の武器を片手だけであれほどの速度の連撃を打てるはずが」

 「あんたは本当に強いよ。昔の俺じゃ絶対に勝てないくらいにはな」

 

 巨大な二つを武器を振り回し、息が上がらないはずもなくディランは肩を揺らしながら息をしている。

 実際、ディランはあと数回しか武器が振るえないほどに消耗していた。

 

 「だがな、あんたの強さは」

 

 ディランは残った力で持っていた斧を騎士王に向かって投げ飛ばす。

 騎士王はそれを盾で防ぐも武器の重量のせいで受け止めきれず盾が騎士王の手から離れる。

 

 「所詮人間止まりだ」

 

 盾を失った騎士王は為す術もなく、すでに騎士王の懐へと入っているディランの大剣による一撃をうける。

 大剣は鎧を砕き、騎士王を吹き飛ばした。そこから騎士王は立ち上がることはなく担架で運ばれた。

 

 ディランが闘技場から出ていくと出入口で吹雪鬼が待っていてくれていた。

 

 「大丈夫でしたか?」

 「正直、最後の攻撃で倒れてくれたからよかったけど倒れてなかったら悪魔の力を使わざるおえなくなってただろうな」

 

 悪魔の技とはなにか吹雪鬼は気になったが疲労が表情に出ているディランを休憩させようと聞かなかった。

 

 「吹雪鬼の相手はあの満身創痍のやつだよな? 殺さないようにしろよ」

 「それなんですが……」

 

 吹雪鬼は少し言いずらそうに目を逸らしながら口を開く。

 

 「その満身創痍の人達が全員試合を辞退してしまったんです」

 「は?」

 

 ディランはあたりをキョロキョロ見渡すと確かにこの場所にさっきまでいた選手がいなくなっている。いるのはディランと吹雪鬼とあの青年だけだった。

 

 「つまり、俺のさっきの戦いは準決勝になったってことか?」

 

 吹雪鬼は無言で頷く。

 

 「そしてお前はあの青年と試合か」

 「そうなんです」

 

 吹雪鬼はあまり乗り気ではなさそうな表情をする。それはあの青年が一体誰なのか未だに分かっていないからだろう。

 

 「と、とりあえず戦ってる最中にでも聞いてみます。今喋りかけるのはなんとなくハードル高いので」

 「お、おう……がんばれ」

 

 変な方向性でやる気を出している吹雪鬼になんと言っていいか分からなくなったディランは取りあけず返事だけをした。

第46話を読んでいただきありがとうございます。

第47話『想い思い出』は3月15日に投稿するのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ