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第42話『昔ばなし』


 市民街の方もようやく落ち着き始め、千寿は再びアウリトーレ夫婦に預かってもらうのを定期的に健司や遥が千寿に会いに来ることを約束してお願いした。

 そして、健司はボスにようやく山ほどある聞きたいことを聞くとができる日がきた。

 

 「すまないな、随分と待たせてしまって」

 

 ボスはそう言いながら健司たちを椅子へ座るよう促し、全員が席に着いたのを確認すると小さく息を吐いた。

 

 「全員ここで今から話す内容がなんの話なのかは健司から聞いているな?」

 

 遥や紫菀は無言で頷く。

 

 「何故あそこにあんなにも多量の魔宝石があるのかを」

 

 ボスは小さく息を吐き話し始める。

 

 「このヴァサゴとの戦いの理由やあの魔宝石のことを話すには少し昔話をする必要がある。鬼虎族と皐月族の誕生と悪魔の話だ」

 

 紫菀と遥には健司が父親と話したことは健司が鬼であることも含め全て話している。

 

 「今から数百年ほど前の話だ。二匹の化け物が強大な力を求め人間の世界へと入り込んだ。人を喰らい、肉体と魔力を強化した化け物を鬼と呼び、同族も人も殺すことで魔法と魔力を進化させた化け物を悪魔と呼んだ」

 

 人々から恐れられた鬼は羅刹と呼ばれるようになり、悪魔はヴァサゴと呼ばれるようになった。

 そして、長い月日をかけて強大な力を手に入れたヴァサゴと羅刹だったが存在はいつしかおとぎ話のようになった。それもそのはず、この悪魔と鬼を見た人間なんて一人としていないのだから。

 

 いつしか、羅刹とヴァサゴはこれ以上人間を喰らっても殺しても強くなれないことを悟る。

 それならばと両者は似たような考えを持つようになる。

 あいつを喰らえば、殺せば、今よりも確実に強くなることが出来る。そしてそうすれば自分が最強だと、これ以上力を求める必要はなくなると。

 

 互いに同じ考えを持つもの同士。遅かれ早かれ出会うことは決められており、吸い寄せられるように同じ場所へ行き、会話もすることなく戦闘は始まる。

 

 両者の攻撃がぶつかる度に大地が抉れ、その戦闘は陸から空へと代わり大地ではなく今度は海が割れた。

 何が起こっているのか、分からるはずもない人間は世界が終焉を迎えたのだと、人間は神の怒りに触れたと信じて疑わなかった。

 

 ヴァサゴは魔法による砲撃を放ち、それを羅刹は強靭な腕で薙ぎ払う。羅刹は強靭な肉体による単純な打撃だが異常なまでに強力な打撃を打ち込み、それをヴァサゴは障壁を作りだし防ぐ。

 技のヴァサゴに力の羅刹。真逆の戦い方をする両者だが力に差はなく少しづつだが確実にダメージが入る。

 

 羅刹とヴァサゴの戦闘から発せられる衝撃波や暴風は人々を恐れさせた。

 恐怖に狂う人、祈る人、愛する人と手を取り合う人、家族を守るために抱きしめる人、助かる道はあると努力する人、全てを放棄する人。

 そんな人間のこと無視して続けられる悪魔と鬼の戦いはどんどん激化する。

 

 そんな唐突に始まり世界を滅ぼしかねない戦闘はもう世界が終わるまで終わらないとも思われたが、始まりと同様に唐突に終わりを告げる。

 そしてその終りはこの後に数百年にわたって受け渡される戦争の始まりでもあった。

第42話を読んでいただきありがとうございます。

第43話の投稿は少し遅くなるのですが3月7日に投稿しますのでよろくしくお願いします。

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