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第04話『血の涙』

遅くなってしまってすみませんでした。

読んでいただければ嬉しい限りです。


 砂埃の中から出てきたヴァサゴは当然のように無傷だった。それを忌々しげに見る一人の女性。

 

 「まさかお前から出向いてくれるとはな。探す手間が省けて助かったよ。なぁ? 楓樺(ふうか)

 「私は会いたくなかったわ。でも、いずれはあんたを倒さないと話にならないんだから」

 

 右足の太ももにつけられたホルスターからハンドガンを引き抜きながら残念そうに答える。

 

 「俺を倒す?」

 

 楓樺の言葉にヴァサゴは顔をしかめ、少し考えから高笑いをあげる。その笑い声は相手を見下し馬鹿にした笑いだった。

 

 「お前が俺を倒す、だとぉ? 盛大に笑わせてくれるよ! あいつらが居ても封印程度が精一杯だったお前がたった一人でか?」

 「そうね、昔の私じゃ返り討ちになるのは目に見えてるわ。でも、それは昔の話よ」

 

 楓樺の手元に一つとヴァサゴの周りに複数の黒い(もや)が出現する。

 

 楓樺は突如出現した黒い靄にハンドガンを握った右腕を入れ込む。すると、ヴァサゴの周囲の靄の中から十六発の弾丸が放たれる。

 その弾丸はヴァサゴの背後や正面、右や左とヴァサゴを取り囲んだがヴァサゴは顔色一つ変えずに全て避けきる。

 避けられた弾丸は周囲の地面や壁に穴を開ける。

 

 「残念だったな。この魔術は俺を倒せるほどの決定打にはならないみたいだ」

 「そう見たいね」

 

 そう言って腕を靄の中から抜き出し、手に握っていたハンドガンのマガジンを入れ替える。

 左足のホルスターからもハンドガンを引き抜き、再び靄の中に両手を入れる。

 ヴァサゴの周りにも再び靄が現れるがさっきとは違い完全に閉じ込めるように現れる。

 

 「同じ手が通じるとでも思っているのか?」

 「まさか、そんなこと思ってないわよ」

 

 一発の弾丸がヴァサゴの背後から現れる。

 ヴァサゴは避けようとせずに弾丸を弾こうと手を軽く振ると弾丸の当たった掌に痛みを感じた。

 弾いたと思った弾丸はヴァサゴの手を貫通し、靄の中へ消えていった。

 

 再び現れる弾丸。今度は二発。

 

 ヴァサゴはそれを回避した時、弾丸に彫られている文字に気がついた。

 

 「これは……!?」

 「特注品よ」

 

 ヴァサゴが危険を感じた瞬間にはもう遅かった。さっきまでとは違い、弾丸の嵐がヴァサゴを取り囲む。

 発砲音はとうに消え、音速を超える無数の弾丸がヴァサゴの肉を抉り骨を砕く音が断末魔と共に聞こえる。

 

 「あんたの悪い癖よ。戦闘を楽しむそのスタイルで過去に私たちに負けたことを忘れたの?」

 

 ついには断末魔さえ聞えなくなり、楓樺はようやく靄を消すとそこには何千回と弾丸が貫通した穴だらけの体になったヴァサゴの姿と血の水溜りがある。

 

 「ふぅ……」

 

 安心したように息をつく。

 

 呆然とその光景を眺めていた千寿の元によると、千寿は再び涙を浮かべる。

 

 「けんにぃ、死んじゃったの?」

 

 楓樺の無言は幼い千寿にも何を意味するかくらいは理解できる。

 

 まだまだ幼い千寿に突きつけられた現実はあまりにも酷なものだった。

 物心着く前から一緒にいた、本当の兄のようにしたっていた人の死は千寿に異常な無気力感を与えた。

 

 「けんにぃ……けんにぃ……」 

 

 無駄とわかったいながら何度も何度も健司の体を揺すり続ける。

 

 「彼はもう──」

 「ガハッ!」

 

 楓樺が千寿を止めようとした時、健司の口から大量の血が吐き出された。

 

 「まだ……終わって、ない」

 「そう、終わってない。それに、強くなったのはお前らだけじゃないってことだ」 

 

 楓樺が振り返ると穴だらけの服を着た無傷のヴァサゴが立っている。

 

 楓樺へ向けられる笑顔は狂気的でまさに、悪魔と言うにふさわしい。

 

 「チッ!」

 

 楓樺は健司と千寿を抱え靄の中に入りその場から迅速に逃げ出す。

 

 「そうこなくっちゃな。それじゃあ始めようか? どちらか死ぬまで終わらないおいかけっこを」

 

 ヴァサゴから逃げ出し、着いた先は遥たちがいる教会の孤児院だった。しかし、そのにはいつもの笑って騒いでいる子どもとそれを見て笑っている遥の姿はなかった。

 

 「見ちゃダメ!」

 

 楓樺はすぐさま千寿の目を覆うが一瞬だけ見えた光景に千寿はその場に気絶してしまった。

 

 「これは……」

 

 あまりの光景に朦朧としていた健司でさえ目を見開き言葉を失ってしまう。

 

 血溜まりの真ん中に返り血と自分の血で体を汚し、包丁を握りしめている遥が立ち尽くしていた。

 

 「遥……お前何して……」

 「みんな、感染してたんだ……」

 

 振り向いた遥は血の滲んだ涙を流している。そして遥の目はシスターの時のように黒ずみ始めている。

 

 「健司、殺してくれ……」

 

 悲痛な声を出す遥の流す涙は血と混じり赤黒い血の涙になっていた。

 既に子どたちに噛まれたであろう無数の傷は腐り始めている。つまりヴァサゴの言う適合者の第一フェーズの症状が出ている。

 そして、部屋に流れるラジオの音声。その繰り返される内容はこの状況を産んだ原因を語っていた。

 

 『一部のインフルエンザの予防接種に感染者の体内から検出されたウイルスが混じっていたことが判明しました』

 

 外がだんだん騒がしくなってきた。

 子供の泣き叫ぶ声や逃げ出すためなのか車のエンジン音が響き渡る。

 楓樺は抱えていた千寿を健司に渡し、遥に近づいて、そっと遥に触れる。

 

 「大丈夫。あなた達二人ならきっと」

 

 楓樺が遥に触れると遥は気絶し楓樺にもたれかかるように倒れる。

 

 楓樺は遥を壁にもたれかけさせて、その横に座るよう健司に指示を出した。

読んでいただきありがとうございます。

急用ができてしまって投稿が予定していた時間より遅れてしまいました。すみません。

第5話は遅れずしっかりと投稿しますのでよろしくお願いします。

第5話は24時から25時までに投稿いたします

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