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第39話『破滅の刃』


 突如蘇る記憶を整理している健司は距離を詰めてくる健介に対して何の反応も示さない。

 

 健司は思い出した。

 

 健介は一方的に母親に暴力をふるっていたと思っていたがそれは間違いで健司を殺そうとした健介を止めた母親が殴られていたんだと。

 姉とのほんの少しの記憶。優しく健司に微笑んでくれていたこと、そして殺人衝動を抑え込めることが出来ず発狂したこと。

 

 健介からビキビキと皮膚から飛び出す骨は今までのように腕にまとわりつくのでは無く、鞘から刀を抜くように皮膚から抜ける。

 腕から抜けた剣はクエッションマークのように湾曲しており、骨から作られているとは思えないほど鋭利で滑らかな刃となっていた。

 

 ここでようやく健司は気づいた。鬼の力は人が使って良いものでは無いと、自分は生きていてはダメな存在だと。

 

 「鬼退治だ……!」

 「健司!」

 

 剣が振り下ろされ、健司の首が宙を舞う直前に体力筋力ともにダメダメのヒツギが驚くほどのロケットダッシュで突っ込みギリギリのところで回避する。

 

 健司はヒツギのタックルの勢いのままヒツギを抱えて五メートルほど転がり、ここで健司はハッとする。

 

 「お、俺は……」

 「ボクは君の過去を知らない。でも、相棒として君を信用している。だから!」

 

 ヒツギは健司の目をまっすぐ見つめる。

 

 「健司もボクを信じて鬼の力を使うんだ。証明してみせてよ、健司が死ななくていい、死んじゃいけない存在なんだって!」

 「ヒツギ……」

 

 ヒツギの真っ直ぐな瞳が、言葉が健司のグチャグチャになった心を落ち着かせた。

 

 「絶対に大丈夫さ。なんせ君はボクが選んだ最高の相棒なんだから、それにボクがついているさ」

 

 ヒツギはニカッと笑ってみせる。

 健司の体から力が抜ける。

 

 健司もヒツギに釣られて笑顔を見せる。そして抱きかかえていたヒツギを膝の上から下ろし立ち上がる。

 

 「最悪だ。ヒツギに励まされるとか」

 

 バツが悪そうに頭を掻きむしる。

 

 「チッ……大人しく切られておけば苦痛を味わうこともなかっただろうに」

 

 握られた骨の剣の形状が湾曲したものからレイピアのように細い長剣へと変化した。

 

 「それはあんたにも言えることだろ。あの時にグダグダ喋ってねぇで殺しとけば良かったな」

 

 健司は千寿が置いていった地面に突き刺さる魔神器を地面から引っこ抜く。

 

 「千寿いう使用者を失った魔神器は自己修復もしなければ魔神器としての機能もないぞ」

 

 健介は破壊されただの刀に成り下がった魔神器の使い心地を確かめるように軽く振り回す健司に呆れたように言う。

 

 「魔神器として使えなくても問題ないんだよ。ただの刀として機能していればあんたを殺すには十分だからな」

 

 健司の左目が紅く光る。

 

 健司の言葉を合図に両者が走り出しコンクリートの地面はえぐれ周りにはヒビが入った。

 健司は両足と利き腕、そして壊れた魔神器に聖絶(アナテマ)を発動する。

 

 両者の剣がぶつかるたびに盛大に火花を散らし、その高速の剣は周囲に風の流れをも作りだした。

 実力やパワーやスピードにおいて二人はほぼ互角。その二人の勝負に展開をもたらしたのは二人のもつ武器の性能の差だった。

 壊れているとは言っても魔神器。さらに聖絶(アナテマ)で強化されている状態の武器とまともに戦い続けれるはずもなく、ついに健介のもつ骨のレイピアは砕けた。

 健司はこのチャンスを逃すまいと力を込め振り下ろそうとするが健介は武器が壊れることを予測していたのか焦る様子を見せず体に刃が触れる直前で手の甲を蹴り飛ばし健司の手から刀を離させる。

 健司は蹴られた手の痛みに顔をゆがめる。

 

 そこで健介の攻撃は終わらず蹴りの勢いを殺さないまま後ろ回し蹴りへと転じる。

 健司はこれを後ろへ大きく飛び鼻先を踵に掠らせながら直撃だけは避けた。

 

 「やべ……鼻血出てきた」

 

 踵を掠めた鼻からトロリと赤い液体が垂れる。

 健司は血の出ている鼻の穴とは逆の方を指で抑え、思いっきり息を鼻から出す。すると勢いよく鼻血が飛び出した。

 

 「ここまで互角の実力だと長引きそうだな」

 「いや、次の一撃で終わらせてやるよ」

 「ふっ……さっきの戦意喪失状態とは打って変わって大きくでるようなったな」

 

 健介は嫌味な笑みを浮かべる。

 

 健司は魔力を右足に集中させる。

 大量の魔力と大量の血液を消費する健司の持つ一撃必殺の技聖絶の刃(セイント·アンガー)。しかし、足で聖絶の刃(セイント·アンガー)を使用するのはこれが初めてだ。

 ひと目でわかる普段との違い黒い皮膚に金色で模様は描かれ、それはズボン越しでも認識できるほど強く発光し、健司の全身から赤い(もや)のようなものがうっすら浮き出ている。

 

 「始まった……! 術式展開!」

 

 ヒツギの声とともに健司のうなじから直径一メートルほどの魔法陣があらわれそれが足もとへ移動する。

 

 「死人悪戯(しにんあそび)

 

 健介の周りに何十体ものクリーチャーが現れる。そしてそのクリーチャーはドロリと溶けだし、健介の右腕に吸収されていく。

 健介の右腕はアンバランスに肥大化し骨が突き出ている。

 

 「破滅の刃(ルイン·アンガー)

 

 金色に光っていた模様は更に強く靄を放出する。

 

 健司の姿が一瞬だけブレる。そして健司がいたはずの場所のコンクリートの地面はダイナマイトを埋めて爆発させたように原型をとどめていなかった。

 

 健司は既に健介との五メートルほどの距離をつめ健介の頭をほどの高さまで跳躍していた。そして力を込めた右脚を思いっきり振り下ろす。

 健介もそれに反応し肥大化した右腕を思いっきり振り上げる。

 

 脚と腕がぶつかり合い周囲には凄まじい轟音が鳴り響き、周囲の地面や空気が揺れる。

 あまりのエネルギーに鬼の力が暴走しないように押さえ込んでいるヒツギの顔に苦悶の表情が浮かぶ。

 

 「はぁぁぁぁあ!」

 「うぉぉぉぉお!」

 

 両者雄叫びを上げながら再度力を込める。

 そしてついに地面が耐えられなくなり大きなヒビが大量に入り崩れ落ちる。

 

 二人は崩れた地面とともに数十メートル落下した。あまりのことに健司は呆然とする。

 市民街にはさらに地下に避難所がありそこヘ落ちたのだと思った健司は思ったがそれは間違いだった。

 

 周囲には何も無い。

 ただ何も無い広い空間がそこにあった。ただ一つ大きく異質なものを省いて。

 

 「なんだよ……これ……」

 

 何も無いはずなのに明るい空間。

 その明かりは地面から発せられていた。

 先の見えない空間の地面は全て神々しく色とりどりに光を放つ魔宝石だった。

第39話を読んで頂きありがとうございます。

第40話『家族』二日後に投稿しますのでよろしくお願いします。

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