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第36話『意思表明』


 「あぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 千寿は叫び声を上げながら遥に再び斬りかかる。その攻撃はさっきまでよりも圧倒的に速く、強く、荒い。

 

 その斬撃を受け止める剣を握る手が痺れる。

 そしてついに力で押し負け遥の剣が上へと弾かれ、腹部ががら空きになる。

 

 「しまった……!」

 「我が身を喰らえ捕食者(プレデター)ヤールングレイプル!」

 

 ビリーが遥と千寿の間に割って入り血の色に赤く染った何かが蜘蛛の巣のように広がり、千寿の五つの斬撃を全て防いだ。

 千寿の攻撃を防いだのはビリーの腕から伸びる魔法器である包帯だった。

 千寿は何度か包帯で作られた盾に刀を振るうも断ち切ることは不可能と判断し後ろへ下がる。

 

 「遥にあの子が本当に助けられるのか?」

 「そ、それは……」

 「俺はお前達の隊長としてお前達を殺させる訳にはいかない。もう一度聞く、本当に助けられるのか?」

 

 ビリーは自動で包帯を元の巻き方に戻しながら遥の方を見ずに質問する。

 言ってはいないものの遥はビリーの言わんとすることが分かる。「お前が殺せないなら俺が殺す」そう言いたいのだ。

 

 「俺は千寿を助けたい」

 

 「助けられるのか?」という質問に「助けたい」と返した遥にビリーは呆れるでもなく、馬鹿にするでもなく、笑った。

 その時、ビリーが遥を守るために無視してきたクリーチャーがビリーに襲いかかった。

 

 「捕食者(プレデター)カラドボルグ」

 

 赤く染まり、腕に巻きついていた魔法器の包帯はほどけたかと思うと再び腕に巻き付き腕は巨大なブレードと化した。

 そのブレードでビリーはクリーチャーを真っ二つに切り分けた。

 

 「なら、まずはあの武器を破壊しないと取り押さえるのも難しそうだ」

 「あの武器をですか?」

 

 遥は手放した剣を拾い上げながら聞く。

 

 「あれは多分だが魔法器と似たようなものだろう。ならあの暴走はあの武器が原因だ」

 「じゃあ、千寿は俺みたいに悪魔の遺伝子を体に入れたんじゃないんですか?」

 「それは分からんが武器さえ無くなれば取り押さえ易いだろう」

 「分かりました。壊した後のことは壊した後にどうするか後で考えましょう」

 

 遥とビリーが構えた瞬間、さっきまで体格に似合わない大剣を振り回していた紫菀が吹き飛ばされ、遥を巻き込みながら民家へ衝突した。

 

 「いててて……遥、ごめん」

 「ああ、大丈夫だ」

 

 紫菀が飛んできた方向を見ると紫菀を吹き飛ばしたのはクリーチャーではなく偽健司だった。

 

 「どうした? 俺が参加した途端にピンチか?」

 

 ボスを真似たデトロイトスタイルのような構えに右腕に浮かび上がる紅い模様。それはまぎれもなく健司の魔法だった。しかし、左目は紅くなっていない。

 

 「ほら、早くかかってこいよ」

 

 余裕の表情を浮かべる背後に黒い影が躍り出る。薫那の影だ。

 

 至近距離での銃撃。

 

 二発三発と急所に銃口を向け引き金を引くが偽健司はそれを全てギリギリでずらし続ける。

 銃弾が髪をかすめ頬の横数ミリを通過することはあっても薫那が撃つ弾丸が肉を突き破ることは無い。

 そしてついにハンドガンの弾が切れる。

 

 「惜しかったな」

 

 偽健司は紅い模様の浮かぶ腕に薫那を殺すため力を込める。

 

 薫那はこの時を待っていたと言わんばかりに左手のハンドガンを投げ捨てポケットから一発の弾丸を取り出す。

 その弾丸を弾が切れ、ホールドオープンしたバレルに直接入れスライドストップを解除し、銃口を向け引き金を引く。

 

 「なっ!」

 

 放たれた弾丸をギリギリでかわし、崩れた体勢のまま無理やり薫那に拳をぶつけるもギリギリでガードされた。しかし、それでも薫那を吹き飛ばすには十分な威力だった。

 

 「きゃあ!」

 

 後方へ吹き飛ぶ薫那を紫菀を押しのけ走り出した遥が電柱に激突するギリギリで受止める。

 

 「大丈夫か!?」

 「ご、ごめん。ありがとう」

 「俺は大丈夫じゃねぇよ」

 

 突き飛ばされた紫菀がボヤく。

 

 その頃、暴走した千寿はビリーに荒い連撃を続け、さらにそこに紫菀が加わる。五本の刃が休む間も与えずに二人の命を狩るために振るわれ続ける。

 

 「くっ!」

 

 巨大なブレードと化した右腕と巨大な大剣で全ての攻撃を受け止めてはいるが二対一にも関わらず若干押し負けている。

 

 「魔神器に体を乗っ取られそうだな」

 「なに?」

 

 遥と薫那の前に立つ偽健司は獣のように戦う千寿を見て呟いた。

 

 「人間が使える代物じゃないのは分かっていたがこうも簡単に壊れてしまうとは……」

 「ふざけんじゃねぇ!」

 

 遥は怒りを露わにして偽健司にコンクリートの地面を砕いて走り出し斬りかかる。

 かつてないほどのスピード。

 その攻撃を偽健司は右腕で受け止める。

 

 腕には紅い模様が浮かんでいたはずだったがそんな模様は無くなり皮膚を突き破り出てきている骨のような物に守られていた。

 偽健司はニヤリと不気味な笑みを浮かべ空いた左腕を右腕と同じように骨のような物で腕を覆う。しかしそれは右腕とは違い鋭利なものだった。

 遥はすぐさま後ろへ飛び、服を掠めながらもギリギリのところで回避することが出来た。

 

 「それの能力は……!」

 

 遥は驚きの声を漏らす。しかし、それは遥の渾身の一撃を受け止められたからでは無く、その受け止めた技が初めて健司と倒したクリーチャーの自らの骨を装甲へと変化させる能力だからだ。

第36話を読んで頂きありがとあございます。

第37話『寂しくて寂しくて寂しくて……』は今週金曜日に投稿されますのでよろしくお願いします。

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