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第35話『不安·後悔·暴走』


 ビリー達は千寿をヘリですぐさま本部へ連れて帰り、念の為精密検査を行った。

 見た目は多少変わっていたものの遥達は千寿が見つかって一段落つき少し休憩をした。

 

 「それにしても千寿が見つかってよかった。しかし、これから色々と大変な作業が待ってるな」

 「大変な作業? どういうことだ?」

 

 健司の疑問に対してそのうち分かるさ、と遥は言い残して部屋へと帰って行った。

 健司は首をかしげるも自分の目的を果たすための行動を開始する。

 

 「ここにヴァサゴが望むものがあるようだが……この姿でも見つけるのは苦労しそうだ」

 

 健司の姿で本部を散策すれば怪しまれることなく目的の物を見つけることが出来る。健介はそう考えていた。

 そこから二時間ほど探し回ったが見つけるどころか誰一人として健介の探している物のことを知らなかった。

 

 「けんにぃ!」

 

 精密検査を終わらせた千寿が飛びついた。

 そして耳元で囁く。

 

 「いつここの悪い人を倒せばいいの?」

 「もう少し待て」

 

 健介は千寿を引き剥がし、市民街へと足を運んだ。賑わう人だかりがあるはずの場所だが今日は少しおかしい、誰一人として外にいない。

 

 「これは一体……?」

 「さぁ、これはなんでしょう?」

 

 少し遠くから聞こえた声に反応し振り返るとそこには遥と紫菀とビリーとマシロがいた。

 

 「これはどうなってるんだよ」

 「みんな避難したんだよ」

 「避難? なんでだよ?」

 

 健介は平然を装う。

 

 「芝居したって無駄だぞ?」

 「なに?」

 

 紫菀の言葉に健介は眉間にシワを寄せる。

 

 この表情は見た目も声も話し方の癖も全てコピーしているはずなのに見破れたことへの怒りではなく疑問。

 健介にはなぜ見破れたのか検討もつかなかった。全て完璧であるはずだから。

 

 「千寿、アイツらが本物の遥を殺したんだ。だから二人でアイツらを殺すぞ」

 「うん、分かった」

 

 千寿が一歩前に出るとどこからともなく鳥のような機会が飛んでくる。

 

 「魔神器起動」

 

 それに合わせ遥達も戦闘態勢に入る。

 

 「マシロ、 滅龍大剣(ダインスレイブ)

 「うん!」

 

 マシロが武器へ変身するとそれは紫菀の身長や体格には全く似合わない禍々しい見た目をした大剣だった。

 

 「住民の避難は終わったわ」

 

 屋根を忍者のように飛び跳ねてきた薫那が地面に足をつき、一息つく。

 

 「ありがとな」

 「遥は私に感謝してる暇があったら早く戦闘準備をしなさい」

 

 薫那に手厳しいことを言われながら遥も剣を鞘から抜くがこれを千寿に向けるのは抵抗があった。

 

 「千寿、そんな物騒なもん捨てて帰って来い。そいつは健司じゃないんだ」

 

 千寿は返事を行動で返す。

 

 振り下ろされる五本の斬撃を四人係で受け止める。その姿をニヤニヤと眺める男が一人。

 千寿は攻撃を受け止められると直ぐにその男のそばへと戻る。

 

 「やっぱり普通の銃じゃ強度はたかがしてれてるわね。今のたった一撃で壊れるなんて」

 

 薫那は持っていたハンドガンをホルスターへと戻しながらボヤいた。

 

 「四対一はさすがにきついだろ」

 

 健司には似合わない気味の悪い笑顔。

 

 「死人悪戯(しにんあそび)

 

 健司の影が揺らめき形を変え、黒く気味の悪い固まりが現れる。

 その塊は大きくなり、五つになり、多種多様な形をつくり、色がつく。

 

 「見たことあるだろう? このクリーチャーたちを」

 

 現れた五体のクリーチャーを目にして遥と紫菀とビリーは呆気にとられた。

 そのクリーチャーは過去にこの三人のうちの誰かが殺したはずのクリチャーだった。その中でも最強クラスのクリーチャーばかり。

 

 「遥は千寿を止めろ。残りのクリーチャーは俺と隊長で何とかする」

 「私のことも忘れてんじゃないわよ」

 「薫那はさっき千寿の攻撃受けた時に銃を二丁とも壊したのに無理だろ紫菀の言うとうり俺たちに任せろ」

 

 すると薫那は小さくため息をつき両手に小さな紫色の魔法陣を展開する。魔法陣に手を突っ込むと中からハンドガンを二丁取り出した。

 

 「武器は十分あるわよ? それも魔法器がね」

 「かなちゃん、ひつぎちゃんに教えて貰った魔法もう覚えたの? すごーい!」

 

 マシロの言葉に気を良くしたのか「まあね」といってクルクルと銃を回す。

 

 「それじゃあ、千寿救出作戦開始!」

 「「「了解!」」」

 

 ビリーの合図と同時に全員がそれぞれの目標と戦闘を開始する。

 

 遥は千寿をどう救おうか考えながら千寿の攻撃を防ぎ続ける。

 五本の刃は縦横無尽に振るわれる。

 攻撃もできずただただ防御し続けるも少しずつ外傷が増えるだけ、そして遥は苦肉の策として千寿の説得を試みた。

 

 「千寿! 目を覚ませ!」

 「目は覚めてるよ、居眠りなんてしてない。ニセモノはちゃんと倒さないとダメってけんにぃが言ってたか」

 

 昔の千寿からは考えられない落ち着いた声に遥は少し動揺してしまう。

 

 あんなにも天真爛漫だった千寿が顔色一つ変えずに自分に向かって剣を振るう事実が遥にはたまらなく辛かった。しかし、それよりも辛いことが遥にはあった。

 

 「本物の健司は千寿に人を殺せなんて言わねぇだろうが!」

 

 遥の怒鳴り声にピクリと一瞬だけ、千寿の動きが止まる。

 

 千寿の中で健司との思い出がめぐる。

 不愉快な頭痛が千寿を襲う。

 

 あんなにも健司のことが好きだった千寿がいくら声も顔も一緒だからって偽物を信じた事実が辛かった。

 

 「健司なら意地でもお前に戦場へ立たせるようなことはしないはずだ!」

 「うるさい! はるにぃのニセモノのくせに偉そうにけんにぃのこと言うなァ!」

 

 さっきまで落ち着いていた千寿はこの言葉に冷静さを失った。

 フラフラと二三歩後ろへ下がり、握っていた刀が手から離れる

 

 「あぁ……あ……あぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 千寿は突然頭を抱え叫び出す。

 右目の黒ずみはさらに濃くなり、白髪の部分が多くなり、魔神器から(おぞ)ましい魔力が発せられる。

 遥の言葉に精神が不安定になった。否、健司と戦い殺したと認識したあたりから不安定になっていた。

 そしてそれが最悪の結果を招いた。

 

 魔神器が暴走し始めた。

第35話を読んで頂きありがとうございます。

第36話『意思表明』は二日後に投稿されるのでよろしくお願いします。

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