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第29話『魔闘士部隊』


 暗い部屋をコンピュータの青白い光が照らす、なんとも不気味な空間。

 コピーしている間も七人の緊張感は無くならない。

 

 「それにしても、何で誰もいないんだ?」

 「隊長が戦闘しているってことは隊長相手に全員がかりで相手しているんじゃないか?」

 

 ビリーの強さはこの部隊の中でもずば抜けている。それは、魔導士とも渡り合えるくらいの強さである。

 ビリーならこの研究所のクリーチャーやアンデットを全て相手していてもおかしくはない。

 

 「確かにビリーという人は強いですねぇ。私の作り上げたクリーチャーやアンデットを次々と殺してしまうんですから」

 

 突然の声に驚き、声のする方を見ると、白衣を着た長身で、皮と骨だけのような痩せた体の男が立っていた。

 

 「何者だ?」

 

 七人が一斉に銃口を男に向ける。

 

 「何者だ? とは、失礼ではありませんか。貴方がたが勝手に私の研究所に入ってきたんですから」

 

 つまり、この男が新型のクリーチャーやアンデットを作っている張本人ということになる。

 

 「しかし、自己紹介をしていないかった私にも不備がありますね」

 

 引きつったような、不気味な笑みを崩すことなく話を続ける。

 

 「私はヴァサゴ様に悪魔の力を与えていただいた、グロウスと申します。以後お見知りおきを」

 

 深々と頭を下げ、男にしては長い髪が顔にかかる。

 

 『馬鹿野郎! 何をしている! なぜ研究所から撤退していない!』

 

 突然、無線からビリーの怒鳴り声が聞こえてくる。

 

 「目的のデータを見つけました」

 『それは罠だ! 今すぐ逃げ─―』

 

 突如無線が切れた。

 

 「罠と言ってもデータは本物。疑似餌で釣れるのは馬鹿な魚……私は優秀な魚がいい」

 

 訳も分からず、何度かビリーを呼びかけるも一切返事がない。

 

 「私はですね、常に我慢しているんですよ。本当はもっと研究がしたい、もっと知りたい、もっともっと実験がしたい。もっともっともっと……! 解剖したい……! この探究心を満たしたい……!」

 

 狂気的な笑みを浮かべる。

 

 笑った口は耳まで届きそうなくらい引きっていて、見開かれた目は異質な恐怖を感じさせる。

 

 「魔闘士の肉体は武器使用時にどれだけの変化が現れるのだろうか。知りたい、知りたい、知りたい知りたい知りたい知りたい!」

 

 狂った様にぐしゃぐしゃと髪の毛を掻きむしる。

 

 七人の背筋が一気に凍った。

 

 グロウスが髪を掻きむしりながら、見開いた目を七人に向けた時、七人はいっせいに引き金を引いた。

 鳴り響く銃声は部屋の中で反響し続ける。放たれた弾丸はグロウスの細い体をどんどん穴だらけにしていく。

 

 「意外と呆気なく終わったな……」

 「あと十分ほどでデータのコピーも終わる」

 

 七人は銃を下ろし、コンピュータのモニターへ目をやる。

 パーセンテージが増えていくコンピュータを眺めていると、後ろから嫌な音が聞こえた。

 

 「いきなり一斉射撃とは、酷いものですねぇ」

 

 七人は息が止まりそうになった。

 死んだはずの敵が無傷で、何も無かったかのように立っている。

 

 「全員魔法器を構えろ!」

 

 各自で剣や銃といった様々な魔法器を取り出し構える。

 

 「それぞれから、色々な魔力を感じる。はぁ、今すぐ調べたい……!」

 

 グロウスの姿が一瞬で消えた。

 

 「──ッ!ゴハァッ!」

 「うーん、皮膚が硬質化している訳では無いのですね。反射速度も大して上がっていない……これは拍子抜けですね」

 

 一人の心臓を貫き、引きつった笑みを崩すことなく、引き抜いた手についている真っ赤な血を気にすることもなく、再び姿が消える。

 

 「クッ!」

 「今度の人は防ぎましたか、でも、それが貴方の限界ですねぇ」

 

 剣と交差する手は鋼のように固く、素手であるにも関わらず魔法器でも切ることが出来ない。

 そして何よりその力が、このガリガリの体のいったいどこらから生まれているのか見当もつかない。

 

 「──?」

 「どうですかぁ? 感覚もなく首を切り落とされるのは」

 

 首から下の体がドサッと倒れたあと、首が落ちて転がった。

 

 「あと、五人ですねぇ」

 

 品定めするような目で見た瞬間、姿が消え、今度は二人同時に心臓をひとつきで殺していた。

 

 「あと、三人。ギャハ、解剖出来る素材がこんなに沢山も……」

 

 笑みが更に化け物じみた笑みになる。ただただ、恐怖を(あお)る笑み。

 

 「仕方ない、切り札を使うぞ」

 「本気か? あれはまだ……」

 「そんな事も言ってられないだろ」

 「ボスは反対だったんだぞ」

 「どっちにしろ、使わなきゃ死ぬだろ」

 

 そう言って取り出したのは、一本の注射器、形状はアレルギー注射の様なペンタイプのものだ。

 それを自分の右腕に思いっきり突き刺した。

 

 「クッ!」

 

 ビキビキと右腕から徐々に全身の形状が変化していく、化け物のような爪を持った両腕に、硬く盛り上がった皮膚、運動能力が格段に上がっているのは見てすぐ分かる。

 

 「なんと! それは素晴らしい! その体、調べたい、研究したい、解剖したい!」

 

 三人とも注射器を使い、少し違うが全員が似たような肉体変化を遂げた。

 

 「それでは私もスピードと強度とパワーを更に加えてみましょうか」

 

 白衣の内側から出した注射器を首に刺し中の液体を体内へ注入する。

 

 「本日二本目ですが」

 

 中身の無くなった注射器を捨て、ニンマリと狂気的に笑う。

第29話を読んで頂きありがとうございます。

第30話も明後日に投稿されるので読んでいただけると嬉しい限りです

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