第28話『回収ミッション』
日が沈み、辺り一面が暗くなっているなかを八つの人影がある建物へと向かっている。
全員が同じ特殊部隊の様な黒で統一された格好をしている。
「ビリー隊長、あれが新型のクリーチャーを作り出している研究所です」
タブレット端末を持った一人が、八人のうちでたった一人だけ、武器をハンドガンを一丁とナイフ一本しか装備していないビリーという男に言う。
「そうか、ではこれから部隊を二つに編成する」
低く男らしい声の支持に従い、ビリーの元に二人と残りの五人という編成になった。
「俺達は正面から入る。お前達は裏側から回り込め」
「「了解!」」
五人は静かに、そして素早く研究所の裏へ回り込んだ。
「こちら第二小隊。配置につきました」
『こちら第一小隊。了解した。今から突入する』
「了解」
研究所内部に入っていき、新型のクリーチャーのデータを探す。
データを見つけ出し、盗んだ後は研究所を爆破するのが彼らのミッションだった。しかし、研究所の広さは異常であった。部屋の数も多く、いくら探してもキリがない。
「こんなに部屋数があったら、終わらないな」
「それもそうだが、あまりにも警備が手薄だとは思わないか? 俺達が侵入して三〇分は経つ、中を見た部屋は一〇〇部屋前後、そろそろクリーチャーやアンデッドが出て来てもおかしくない」
「なのに、一向に出てくる気配がないってことか?」
「そうだ」
五人の緊張感が一気に高まる。
『こちら第一小隊。今からそっちのタブレット端末に爆破ポイントを送信する。データより優先してくれ』
「第二部隊、了解」
一人が持っているタブレット端末に爆破ポイントが送信された。
「全部で四十箇所か」
「早く爆弾をセットしに行こう」
「ああ」
五人は移動のペースをあげ、指定された場所に爆弾をセットしていく。
研究所の地下から上の階にかけて一箇所につき十個ずつ爆弾をセットしていくが目的のデータのある部屋は一向に見つからない。
「クソ、どうなってるんだ?部屋はほとんどまわったぞ」
「この研究所はハズレだったってことか」
五人が落胆していると無線からビリーの声がした。
『こちらビリー。今俺といた二人をそっちに向かわせた』
「了解。しかし、隊長。未だにデータの在処が分かりません」
『分かった、とりあえず俺はここにいるアンデッドやクリーチャーを一掃する。お前らは先に撤退しろ』
「起爆はどうするんですか?」
『起爆装置は俺も持っている』
「了解。それでは我々は撤退します」
ビリーとの無線が切れると前から二人走ってきた。
「隊長からの撤退命令がでた。隊長は今から交戦するため、我々だけ先に撤退し、起爆は隊長に任せる」
「「了解」」
七人体制の陣形を組み直し、来た道を戻ろうとした時、一人の銃が壁にぶつかった。
「す、すいません」
コーン、という軽く、響く音が壁の奥に響いた。
「今、音の響き方おかしくなかったか?」
「え?」
歩きながら銃で壁を叩いていくと一部だけ音がおかしかった。
「やっぱり、ここだけ音が違う。どこかにボタンみたいなのはないか」
音がおかしい壁付近を調べると下の方に小さなパスコードパネルが出てきた。
「開けれるか?」
「試してみる」
パスコードパネルのUSBケーブルを差し込みタブレット端末を操作する。
難解なものらしく、かなりの時間タブレット端末と睨み合っている。
「どうだ?」
「かなり難しいが、何とかなりそうだ」
そう言って、また数分タブレット端末と睨み合う。
数分後タブレット端末から指を離し、よし、と呟くとタブレット端末の画面に緑の文字で解除と浮かび上がり、壁が横へ動き道が出てきた。
「よくやった。じゃあ、進むぞ」
「おい待て。隊長からは撤退命令がでてる。これ以上行けば命令違反になるんじゃないのか?」
先行しようとした隊員を止める。
「そうも言ってられないだろ。これからの戦いでどれだけこの情報が役に立つかお前も分かるだろ」
「確かにそうだが……」
続く真っ暗な通路に恐怖を感じないわけが無い。しかし、先行しようとしている男の目は決意に満ち溢れている。
「俺はこの命が朽ち果てるとしても、せめて役に立ってから死のうと思っている。お前らもそうじゃないのか?」
「はぁ、分かったよ」
信頼しあっている仲間にだけ見せる笑みを浮かべ七人は顔を見合わせ、暗い道へ入って行く。
「さっきから敵が一切出てきていないが、ここからも油断は絶対にするなよ」
「「了解」」
陣形を崩すことなく、スムーズに奥へ入って行く。
何も無いただの暗い一本道。
何も無い恐怖が七人を包んでいく、背中には嫌な汗をかき、銃を握る手にも汗が滲む。
そして、奥にはたった一部屋だけあった。
「ここか」
「中に入って人がいれば迷わず撃て、分かったな」
全員が無言で頷く。
「行くぞ……」
自動扉を開け、一気に中へ突入する。しかし、その広々とした部屋には大きなコンピュータに大きモニターがあるだけで中には誰もいなかった。
「データがあるか調べろ」
七人は部屋にあるコンピュータを調べだした。
部屋には全部で三つのコンピュータがあり、三つ全てに有力なデータが入っていた。
「これだ。この中にお望みのデータがある。それにここにある情報はかなり有力なものだ」
パソコンをハックし、片っ端からファイルを開けていた一人が呟く。
「よし、ここにあるデータは全て本部に持ち帰る。データをコピーしろ」
「分かった。しかし、三十分から四十分ほどかかるぞ?」
「構わない、始めろ」
「了解」
USBを差し込みデータをコピーしていく。
近づいてくる影にも気づかず。
第28話を読んでいただきありがとうございます。
第29話も明後日には投稿されるのでよろしくお願いします。




