表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/105

第24話『悪魔の優しさ』


 健司はレイジングブルをホルスターから抜き、扉をそっと少しだけ開ける。

 

 これまでにこれほど重い扉があっただろうかと思うほどの扉。

 ヒツギと顔を見合わせ小さく頷き少し開いた扉を勢い良く開け中へ飛び込み中にいる男に銃を向ける。男は入っきた健司とヒツギに見向きもしない。

 

 「私は今ワインを楽しんでいるんだ。邪魔しないでもらえるかい?」

 

 男は黒の紳士服に白いスカーフ、手にはワイングラスとワインを持っている。

 その男からはさっきまでの重く息苦しい強い魔力は感じられなかった。

 

 「エチケットが部分的に剥がれいつのものかも分からないシャトー……それを飲むなんて楽しみだと思わないかい?」

 

 男は健司に聞いてくる。少し持っているワインを見せてくるところからして、男が持っているワインの名前だろう。

 

 「生憎だが俺はまだ未成年でな。ワインの良さなんて知らねぇんだ」

 「そうかい」

 

 健司が答えると男は残念そうにワインをグラスに注いだ。

 光を通さない暗く綺麗な赤色の液体がグラスに注がれていく。

 男はワインを片手に健司とヒツギに客人へ話しかけるように話を始めた。

 

 「それにしても人と会話するのはいつぶりだろうか、共に飲むことが出来ないのが残念だが君たちの力や戦う理由の話は面白そうだ」

 

 男が淡々と話していると付近にある階段から女と複数のクリーチャーが降りてきた。

 

 「そのような事は困ります」

 

 降りてきた女は男の会話を中断させる。

 

 これでこの洋館がヴァサゴの配下にあるともという大きな証拠になった。

 

 女の姿は貴族のような格好でこの時代に不似合いでこの洋館にお似合いの姿だった。ただ一つ、歪な形の木から作られた杖がなければ。

 

 「獅郎様、ここにいる者達は侵入者です。今すぐ抹殺のご命令を」

 

 女は男の事を獅郎(しろう)と呼び片膝をつき命令を求めた。

 

 「はぁ……つまらないものだ。八〇〇年以上ぶりの客人だと言うのに」

 「お言葉ですがお客人ではございません」

 「好きにしろ」

 

 会話を途中で止められたのが少し不服なのだったのだろうか、少し投げやりな様子で命令を出す。

 

 命令を受けた女は健司とヒツギを睨み杖を構える。その姿はまさに魔法使い。

 

 「我が主に害なす者を主の視界から消し去りたまえ」


 その見た目どおり詠唱を始める。

 

 健司はひどく驚いているがヒツギはへぇ、と少し感心したように女を見る。

 ヒツギの様子を見たところ不味い魔術ではないと健司は判断する。

 

 「《空間移動(テレポート)》」

 

 女が詠唱を終えると同時に健司とヒツギは強い光に包まれ光が消えるとさっきと場所が変わっており、洋館の外に出ていた。

 

 「これはまた凄い魔術だな」

 

 感心している健司の袖をヒツギが引っ張る。


 「健司、あの女はボクがやるよ。健司はあの雑魚たちの相手を頼んだ」


 そう言ってヒツギは健司にナイフを返した。


 「大丈夫なのか? あの女も結構な魔力量だぞ」

 「心配してくれてるのかい? でも、大丈夫だよ。ボクは魔術研究の第一人者はだから、魔術をかじった程度のやつに負けるわけないさ」

 

 ヒツギは自信満々に健司に笑いかけた。

 

 それもそうだな、と健司はクリーチャーの方を見据える。五体のクリーチャーも健司のみを狙う。

 

 クリーチャーが走り出したのが合図となり戦闘が開始される。健司は聖絶(アナテマ)を両脚に発動し五体のクリーチャーの攻撃を見事に回避する。

 

 「天に轟く雷鳴よ、眩い閃光と共に裁きの鉄槌を」

 

 女の詠唱により黄色い光を放つ魔法陣が複数ヒツギの周りに発動した。

 

 「なるほど、雷系の上位魔術か……」

 

 だったら、とヒツギも詠唱を始める。

 

 「我を主とし下僕となる吸血鬼、我に向けられる全ての魔力を喰らい尽くせ」

 

 ヒツギは詠唱を唱えるが魔法陣は出現しない。

 女は躊躇することなく魔術を発動する。

 

 「《雷豪呀(ニョルニル)》!」

 

 ヒツギの周囲の魔法陣が強く光る。

 

 「《暴食(ノインテーター)》」

 

 ヒツギが魔法名を唱えた時には魔法陣から放たれた雷撃はヒツギに襲いかかる。しかし、次の瞬間ヒツギの影から九体の口が大きく裂けた人の影が現れた。

 

 影は女が発動した魔法陣や雷撃を(むさぼ)るように喰らっていく。

 

 「なんだあの気味の悪い魔術は……」 

 

 健司はクリーチャーの首を締めながらヒツギの魔術を見る。

 

 今までヒツギが健司に見せてきた魔術とは全く違うものだった。

 黒い影は魔法陣を喰い尽くすと霧のように消滅した。

 

 「ば、馬鹿な! その魔術は上位魔術をかき消すことは出来ないはず!」

 

 自分の魔術を喰われた事に驚きを隠せない様子だった。しかし、ヒツギは当たり前といった実に楽しそうな表情をしている。

 

 「確かに《暴食(ノインテーター)》では消せない魔術はある。と言うかほとんど消せない」

 

 笑みが消えないヒツギは、だけどね、と続ける。

 

 「お前の魔術なら何でも消せるよ?」

 「そ、そんな事がある訳が……」

 「そんなに驚く事かい?」

 

 動揺を隠せない女の姿にヒツギはとても楽しそうにする。そして女は楽しそうにするヒツギに女は苛立ちを隠せない。

 

 怒りに任せ女は何度も魔術を発動するもあっけなくヒツギに消される。

 

 「なんで! なんでなんでなんで! 私はヴァサゴ様に力を授かり、ようやく獅郎様にお使えすることが出来たのに!」

 

 女は叫ぶ。

 

 怒りを顕にしながらヒツギを睨みつける。

 憎しみと嫉妬のような感情が入り混じった悲痛な叫びでもあった。

 

 「魔術は魔法と違って授かるものじゃない。それにボクは魔術を作った張本人だよ?」

 

 ヒツギの言葉に女は固まってた。

 

 女はヒツギの言葉を理解したのかその場に崩れ落ちポロポロと涙を流し始めた。

 

 「私は……私はただ獅郎様のそば居たかった。それだけの為に必死で魔術を覚えた、なのに私は結局……」

 「学び直せば良いんじゃないの?」

 「え?」

 

 ヒツギの言葉に女は目を丸くする。

 

 「獅郎って奴のそばに居たいなら、その為に強さがいるなら学び直せば良い。基礎からしっかりとね」

 

 ヒツギは優しく笑いかける。

 

 「……はい」

 

 女は小さく、しかし確かに頷き、涙を拭い、うっすら笑みを浮かべる。

 女はヒツギの言葉で今まで重く付きまとっていた枷が外れたように感じた。

 

 相手を傷つけることなく戦いを終わらせたヒツギは健司に加勢しようとしたが健司も既に終わりかけだった。

第24話を読んでいただきありがとうございます。

第25話からは2日に一回のペースで投稿していきたいと思いますのでよろしくお願いします。投稿する時間は変わりません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ