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第18話『魔術』


 悪魔はさらりと出した答えに健司の小さな希望は簡単に打ち砕かれた。

 

健司はすぐさま悪魔を走ったまま肩から下ろした。

 投げ捨てられるような状態で地面に着地した悪魔は尻餅をつく。

 

 「イッタタ……ったく! 君は女の子の扱い方も知らないのか!」

 「悪魔担いで逃げる義理はねぇ!」

 「なっ! ほんとになんて男だ……悪魔が嫌いなのか? それにしても酷いしうちだ」

 

 健司が振り返りながら怒鳴り返すと、悪魔はブツブツ文句を垂れながら尻に付いた土を払いながら五体のクリーチャーの方を向き何かを呟き出した。

 

 「我が身を守りし光の鎧。神撃をも拒絶せん」

 

 クリーチャーの銃口は全て悪魔に集中し、引き金が引かれ弾丸は悪魔の目の前まで来ていた。

 

 「《守護壁(ガーディアン)》」

 

 悪魔の声とともに神々しく光る直径三メートルほどの魔法陣が悪魔の目の前に出現し、全ての弾丸を弾いていく。

 

 「これが……魔術……?」

 

 健司の口から言葉が漏れる。

 

 魔法陣を破ろうとずっと撃ち続けていたミニガンもついに弾が切れた。

 悪魔はクリーチャーがミニガンを捨てほかの武器を装備しようとしている中さらに次の詠唱を始める。

 

 「万物を飲み込む無の存在よ。我に危害を加える者を消滅せよ」

 

 五体のクリーチャーの足元に大きな紫の魔法陣が展開された。

 

 「《暗黒柱(ダークマター)》」

 

 魔法陣からドス黒い霧のようなものがすごい勢いで柱状に放出される。

 霧は数秒で瞬く間に消え放出された所は草木すら残っていなかった。

 

 健司は走る足を止めて息を飲んだ。

 

 ヴァサゴの時に感じた危機感ほどではないが健司の背中は嫌な汗が吹き出ている。

 

 これから先で強敵になる可能性を消すために健司は腰についている日本刀に手を伸ばす。

 

 「……あれ?」

 

 いつもつけている位置に日本刀がない。

 健司の顔がみるみる青ざめていく。

 

 「もしかして川に落ちた時に落としたか!? クソ! こうなったらナイフで!」

 

 前を向いた瞬間、悪魔とばっちり目が合った。

 

 健司は構えたナイフを元の位置へ静かに戻し、全速力で猛ダッシュ。

 

 「あ! コラ! 待て!」

 

 悪魔の声が聞こえる。

 

 走って追いかけてこないあたり運動は得意でないと健司は推測し森の中を駆け抜ける。

 

 「くそ……マジで、最悪……」

 

 走り続けた健司はいつの間にか街中に出ていた。

 

 壁が壊れたビルや無理に生えた植物で割れたコンクリートの道路、爆弾の跡や銃弾の跡がある事から過去に人がアンデットと交戦したのが分かる。

 

 結果は街の人気の無さから容易に想像出来る。

 健司は適当な建物に入り、その場にズルズルと座り込む。

 

 「あたりが暗くなり始めたな……」

 

 健司は野宿を考え森の中へ戻り、兎と鳥を捕まえた。

 今じゃ世界の人口の七割はアンデッドかクリーチャーとなり、あの日から一年近くたった今ではかなり野生の動物が増えている。

 

 「ほんとに標的は人間だけなんだな。それでも植物の成長速度が異常だな」

 

 捕まえた兎と鳥やコンクリートを突き破って生えている植物を見て健司は呟く。

 

 不幸中の幸いと言うべきか運よく健司の入った建物は水とガスがまだ繋がっていた。

 

 「今日一日不幸な俺への神様のちょっとした気遣いか? 救援とかもう少し泣いて喜べるものが欲しかったよ」

 

 ボヤきながら健司は拾った鍋を火にかけ煮沸消毒をした後に再び火にかける。

 

 「せめて美味いものでも食うか」


 鍋に建物内にあった見た目の悪い若干乾燥した野菜を入れ、炒めた後に水を入る。

 

 「これで、七〇〇ミリリットル位か」

 

 水を、唯一持っている調味料の塩を入れ混ぜる。

 沸騰したら捌いて水で軽く血を洗い流し、別のコンロで表面を焼いた鳥の肉と関節でバラバラにした骨を何本かボトボトと鍋に入れる。

 

 煮込み、だしを取る。

 

 香辛料や調味料となるものをいくつか見つけ加えたあと、骨をスープから出して塩で味を整え完成した。

 

 「人が住んでたのか色々料理に使えるものがあって良かったがなんか物足りないな。煮込みが足りないか?」

 

 健司は弱火くらいの火に鍋をかけたままにし、持っているものの確認を始める。

 GPS付き通信機、サバイバルナイフ、レイジングブルと弾六発、あと塩。

 

 「通信機は逃げる時に弾丸が当たって破損、破損部分から水が侵入。これじゃあGPS機能も壊れてるだろうな」

 

 通信機を少しいじった後にその場に捨てた。

 

 「レイジングブルは六発のみ」

 

 残っていた弾丸をシリンダーにつめ、レイジングブルをホルスターしまった。

 

 「どう助けを呼ぼうか……」

 

 通信機以外の全てのものを元の位置へ戻し鍋の様子を確認しようと顔を見上げると、

 

 「うん、うまい!」

 「い、イギャアアァア!」

 

 目の前で人が健司のスープをすすっていた。それもスープをすすっているのはあの悪魔だった

 

 「お前! いつからそこに! てか、それ俺の飯!」

 

 悪魔が居ること驚いた後、晩飯を取られた怒りの方をぶつけ、目にも留まらぬ速さでスプーンを取り上げた。

 

 「あぁ! ボクの晩ご飯!」

 「お前のじゃねぇよ!」

 

 目の前にいるのが悪魔というのをすっかり忘れて怒鳴り返す。

 

 ただでさえ疲れているのにここでさらに健司はどっと疲れを感じる羽目になった。

第18話を読んでいただきありがとうございます。

第19話も約24時間後に投稿しますので読んで頂けたら幸いです。

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