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第15話『厄日の始まり』


 健司と遥はクリーチャー討伐後色々な身体検査が終わった後ボスの部屋に呼ばれた。

 

 「まずは、任務ご苦労だった。初任務にも関わらずこんな危険な任務を任せてすまなかった」

 「そんな、気にしないでくださいよ。なぁ? 遥」

 「そうですよ。ちゃんと生きて帰って来れたので問題ありません」

 

 遥と健司はすぐさまフォローする。しかし、ボスは神妙な顔のまま言葉を繋ぐ。

 

 「健司、体に異変はないか?」

 「え? ああ、はい。貧血気味以外は特に問題はありません」

 

 ボスの表情は少し暗くなった。

 何かがつっかえた様に、とても喋りにくそうにしている。

 

 「救出ヘリで救出できるタイミングを見計らってた時に健司から異常なまでの魔力量を感知されたんだ」

 「俺や遥の元々魔力量は高いんじゃ」

 「そうではなく、一度に使用できる魔力量の事だ。今まで測定したことの無いような数値が出ていた」

 

 魔力を一度に使用することが出来る量。

 遥の場合一度に使用できる量の魔力を長時間に渡り魔力を練り続け高密度にしたものであり、ボスに知らせられた健司の数値は明らかに測定ミスと取れる数値だったらしい。

 

 「なぁ、健司。ボスが言ってるのってあの技の事じゃ無いのか?」

 「ああ、あれか」

 

 遥が健司とボスの会話から可能性の高い答えを出してきた。

 

 「聖絶の刃(セイント・アンガー)って言う魔法と言うか技と言うか」

 「セイントアンガー?」

 

 ボスは唐突に出てきた名前に少し戸惑っている。

 

 「名前が頭に浮かんだんで多分魔法だと思うんですが、聖絶(アナテマ)の強化版みたいな」

 「なるほど。その時なにか体に起きなかったか?」

 「なにか? あの時はほとんど気絶しかけであまり記憶が確かじゃないんです」

 「そうか……」

 

 ボスは深く考えるように小さく呟き顎に手を当て小さくうなりだした。

 何か腑に落ちない様子なのが見て取れる。

 

 「よし、分かった。お前らもう部屋に戻っていいぞ」

 

 突然ボスが帰っていいと言い出したことに少し顔を見合わせ二人は部屋を出ていった。

 

 「感知したあの魔力は人間のものでも悪魔のものでも無かったが……まさかな」

 

 ボスは自分の考えを否定するように小さく笑みを浮かべて背もたれに大きくもたれた。

 

 それから二ヶ月ほど同じようにクリーチャーの討伐任務を繰り返したが、あの時のようなクリーチャーは現れず、健司と遥は難なく任務をこなし続けた。

 

 「お前達の服かなりボロボロになってきたな」

 

 ボスは任務から帰ってきた二人の任務で傷ついた服を眺める。

 健司と遥の服は所々引っかかれ破れていたり、どうしても取れない泥の汚れでかなり見栄えの悪い服となっていた。

 

 「ほんとだ。遥は引っかかれて破れてるところが多いな」

「そういう健司も避けて転がった時の泥とか全然取れなくなってんだろ」

 「そりゃ軍人が着てる服って言っても普通の布だからな」

 

 健司は自分の泥で汚れた服の上着をいじりながら呟く。

 遥もその姿につられ、確かに、と呟き破れた服をいじる。

 

 「だからお前らに服を支給するよう言っておいたぞ。そこの大きいアタッシュケースを見てみろ」

 

二人は自分の名前がローマ字で書かれた銀色のアタッシュケースを開けた。

 丈夫な迷彩服などが入っていると思っていた健司と遥だったが予想とは真逆の服が入っている。

 

「これは、普通の服……だよな?」

 

 遥が分かりやすく戸惑いを見せる。

 アタッシュケースに入っているのは丈夫な迷彩服でも無ければ、軍服でもなく遥と健司それぞれに普通のズボン三枚とシャツ三枚が入っていた。

 

 健司と遥が戸惑っているとボスは自慢げに服の説明をしだした。

 

 「その服の素材は特殊なもので自動修復機能を持っているんだ。これは私たちが長きに渡りようやく開発できた魔法器の一つなんだ」

 

 魔法器と呼ばれる服。

 

 シャツとズボンをどけると、健司のには黒のロングコートが入っており、遥のアタッシュケースには暗いワインレッドのライダースジャケットが入っている。

 遥と健司はアタッシュケースに入っているコートだけを着てみるがやはり普通の服だ。


 「うむ、サイズもあっているしいいんじゃないか?」

 「そういえばこのロングコートとか魔法器って言ってましたよね? その、魔法器って何ですか?」

 

 健司は着ているロングコートをあちこち見ながら聞く。

 

「魔法器とはな、私達で開発した武器や道具のことだ」

 

 つまり、とボスは更に続ける。

 

 「魔宝石という魔力の結晶を使った武器や道具のことを言う。そしてその服は自動修復するように作られた服だ。そして元々魔法器はお前達とは違い魔法が使えない人間でも戦えるようにするために作ったんだ」

 

 健司と遥のように人間と悪魔の両方の魔力を持つ者などそういる訳もなく、少量しか魔力の無い人間も戦わなければならないほどジリ貧という事実。

 

 魔法器は少量の魔力でもアンデット程度なら問題なく倒せる武器ということらしく、その応用で作られたのが健司と遥の服の自動修復機能らしい。

 

 「そして私達は魔法器を使用する者を魔闘士と呼び、お前達のことは魔導師と呼んでいる。お前らの使っている武器も魔法器の一つだぞ」

 

 魔闘士の中には強力な魔法器を使用する者もいる。しかし、それを使用するのはリスクが高すぎるため、そのような強力な魔法器の使用者は少ない。

 

 「この服が修復される度に俺達の魔力は持っていかれるって事ですか?」

 「その通りだ。しかし蚊に刺された程度の魔力しか持っていかれないぞ」

 

 遥の疑問に何の問題もないとボスは太鼓判を押した。

 

 「失礼致します!」

 

 突然軍服の二十代くらいの青年が入って来て敬礼をした。

 

 「どうした?」

 「先程、偵察班から特殊なクリーチャーを見かけたとの情報が入りました!」

 

 特殊なクリーチャーという言葉に健司、遥、ボスは過剰に反応した。

 

 「どんなクリーチャーだ?」

 「はい、それも二種類いまして。まずは銃を所持するクリーチャー、数は目視の確認で五十体、銃はアサルトライフルとショットガンが確認されています。次に言語の理解は出来ませんでしたがなにか言葉でアンデットや銃持ちのクリーチャーに指示を出しているクリーチャーが一体です」

 

 ファイルに挟まれた、研究者による映像分析結果をスラスラとさらに続ける。

 

 「指示を出すクリーチャーを司令塔とするように二〇〇体ほどのアンデットと武器を所持するクリーチャーが軍人のように規則正しく行動しています。戦力は今までとは比べ物にならないくらい強大かと思われます……」

 

 最後の言葉は少し言いずらそうに言った。

 それもそのはず、統率された軍隊がどれほど強力かなどここにいる人間が知らないはずがない。

 

 二〇〇越えのアンデッドに五十体のクリーチャー。今までに無い状況の雲行きが怪しくなる。

 

 「二〇〇体か……」

 

 さすがのボスも口ごもる。


 「どうしますか? 俺と健司でもその数を相手にするにしても勝率は高くはないですよ」

 

 遥は判断をボスに委ねる。

 

 「かと言ってこっちに向かってくるのを無視はできないですよ。ここには一般人もいますし」

 

 健司の言うとうりでもあった。

 

 一般人が多く住むここに大量のアンデッドが押し掛け、一体でも撃ち漏らしでもすれば大変なことになる。

 人対人であっても普通は一対三を超えれば話にならない。

 いくら健司と遥が強くなったと言っても二対二〇〇など簡単に相手することは出来ない。

 

 「分かった。お前は下がっていいぞ」

 

 青年はボスに敬礼をして部屋から出て行き、扉が閉じられるとボスは、さて、と話を続けた。

 

 「この軍団はここで潰しておきたいんだが……お前達、行けるか?」

 

 健司と遥は目を合わせる。

 

 「断るわけにはいかない、よな?」

 「そうだな。遥の魔法なら広範囲にも攻撃できますし、なんとかなると思います」

 

 勝算がない訳では無いため、二人にとってこの任務を断る理由はない。

 

 「それでは頼んだぞ」

 「「了解!」」

 

 二人はあの青年のように敬礼をした。

第15話を読んでいただきありがとうございます。

第16話から一日1話ずつ投稿していこうと思いますので16話は明日の12時すぎに投稿しますのでよろしくお願いします

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