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第14話『聖絶の刃』


 既に健司よりもパワーは上回っているクリーチャーが更に進化するなど、規格外にも程がある。

 さらに、スピードまで上昇しており、

 

 「ッ! 速いっ!」

 

 スピードにはそれなりに自信があった健司だったが、あまりの速さに追いつけず真正面からアッパーカットを食らう。

 なんとかガードしたものの吹き飛ばされ、何台か車をなぎ倒し、大きなトラックの荷台にぶち当たりようやく停止した。

 

 「ガハッ!」

 

 荷台に当たった衝撃で肺の中の空気がすべて押し出された。

 

 なんとかしてあの骨の鎧を砕こうと考えていた健司だったがクリーチャーはそんな健司の状況など完全無視で連撃を繰り返す。

 

 「これは、やばいな……」

 

 健司はその場から逃げようとするがそれよりもクリーチャーの攻撃の方が速い。

 

 「バカ野郎! 早くその場から離れろ!」

 

 遥の声は健司には届かない。仮に届いていたとしても止まることの無い連打から逃げ切ることが出来ない。

 

 健司と遥を救出するためのワイアットが操縦するヘリが来るのはまだ先だろう。仮に今来たとしても健司と遥をこのクリーチャーが逃がすはずがない。

 

 健司はクリーチャーの攻撃を受け続ける。

 

 健司は左腕のみで受け流し攻撃力を最小限に抑えながらギリギリだが急所をカバーする。

 右腕は飛ばされた時に肩の骨が抜け、肩をはめる間も無くクリーチャーの攻撃が始まってしまったのだ。

 

 クリーチャーの攻撃を防ぐ度に抜けた肩に激痛が走る。

 

 逃げることが出来ず防御し続ける健司を助けるため遥は急いで魔力を溜め続ける。ここで中断して助けに行けば健司の努力が無駄になることを遥は理解し、堪えた。

 

 トラックの荷台に背中をあずけるようにして攻撃を喰らい続ける。

 健司のスピードなら避けることぐらいは出来たのかもしれない。しかし、健司はそれが出来なかった。


 それは既に健司がほとんど気を失っていたからだ。今体がかろうじて攻撃を防いでいるのは血の滲む訓練で体が覚えた動き。

 完全に意識が切れかけたその時、自分を受け入れてくれた家族の顔が思い浮かぶ。

 

 「まだ、死ねない……!」

 

 健司の途切れかかっていた意識が戻る。そして自分がまだ死ねないことを、自分には果たすべき目的があることを思い出す。

 クリーチャーの大ぶりの横殴りをなんとか防ぎ、吹き飛ばされる。コンクリートの地面に数回体を打ち付けようやく止まる。

 

 「終わってないんだよ……」

 

 ボタボタと口から血を流しながら立ち上がる。

 

 「交わした約束も、復讐も、何一つ終わってねぇんだよ!」

 

 次の瞬間に健司の抜けた右腕が勝手にはまり、それと同時に大量の魔力が右腕に注がれる。

 その魔力はただ注がれるのではなく、圧縮され、より高密度となる。

 

 腕に浮かぶ模様は今まで不規則なバラバラの模様だったが複数の線が交わる模様へと変わり聖絶(アナテマ)の時の赤黒い血のような色ではなく銀色で浮かび上がり皮膚は黒く染った。

 

 健司が驚きた瞬間、クリーチャーが今までの攻撃の中で一番力を込めた攻撃が放たれた。

 

 健司の頭に魔法の名前が浮かぶ、聖絶(アナテマ)から派生した技の名が。

 

 健司は黒く染まった右手を固く握り叫ぶ。

 

 「聖絶の刃(セイント・アンガー)!」

 

 健司の拳とクリーチャーの拳がぶつかり合う。クリーチャーの腕にヒビが入り、そこから砕け、腕は吹き飛ばされる。

 健司の攻撃はそこでは終わらず、健司の拳はクリーチャーの心臓部分を打ち抜きアーマーを破壊。

 衝撃が貫通し背中のアーマーまでもが崩れ落ち、周囲の大気をも揺らす。

 

 「スゲェ……」

 

 健司の凄まじい攻撃に遥は呆然と立ち尽くしてしまっていた。

 

 「遥! まだ終わってねぇぞ!」

 

 健司の声で遥は我に返り、身体の修復をしようとするクリーチャーのむき出しの背中に魔力を体力に込めた右腕から一気に高出力の魔力を放出した。

 

 「はぁぁっ!」

 

 放たれた炎は火炎放射を通り越して広範囲型のレーザー光線の様になり、周囲に凄まじい熱と光を撒き散らした。

 

 「うお!」

 

 あまりのエネルギー量に横へ大きく逃げた健司までも軽く吹き飛ばされた。

 

 クリーチャーはむき出しになった皮膚から跡形もなく焼却されその場にアーマーと成っていた骨の一部分だけが残っていた。しかし、その骨から再生されることも無くその骨は砂のように崩れた。

 

 「お前のその威力どうなっ……て……」

 

 健司は遥の攻撃の感想をいう前に気絶した。

 

 「お、おい! 健司!?」

 

 驚いた遥が健司に近づくと見計らったようにヘリがすぐ側へ着陸した。

 

 「早く乗り込め!」

 

 遥は健司を担ぎヘリに乗り込んだ。

 ヘリはすぐさま離陸し、本部へ向かって進み出した。

 

 「ここまで健司がやられるとはなぁ。今回の任務はハズレだったな」

 「うっせぇ、やられてねぇよ」

 

 遥の呟きに目を瞑りながら答える。

 

 「起きてたのか。どうだ、体は?」

 「最悪。そこらじゅう痛てぇよ」

 

 若干笑いながら答える。

 

 「そりゃそうだろうな。何であそこで逃げずに受け続けたんだよ?」

 

 遥は健司が話すのも辛い状態なのは分かっていたが、聞かずにはいられなかった。

 

 「ああ、アレな。意識ほとんど飛んでたから分かんねぇ、意識がはっきりしたのはあいつの装甲を壊す手前だったから」

 「そうなのか?」

 「ああ、今回は本当に運が良かった。結果的に相手の必殺技を封じこめたからな」

 

 健司はため息混じりに答える。

 

 「必殺技?」

 「走った勢いに加えてフルパワーで腕振りおろしてくるアレ。あれだけは避けたかったから」

 

 遥が思い出してみると確かにあのクリーチャーのした攻撃の中で一番威力があったのはその振り下ろしの攻撃だった。

 

 「健司は戦闘になると普段の二倍くらい頭良くなるのかもな。敵の分析とか早いし」

 「なんてな、今話したことは全部今思い返してみればそう思っただけだ」

 「なんだそりゃ」

 

 遥はそんな事を言いながら健司の傷に応急処置をしようとする。

 

 「あれ? 傷が塞ががってる? おい、健司の傷が塞がってないか?」

 「スー……スー……」

 

 遥が健司の方を見た時には寝息を立てて眠っていた。

 

 健司の軽い傷は完璧にふさがり、殴られた時の打撲も徐々に薄れている。

 

 「そういやあの時の攻撃も異常な攻撃力だったな……」

 

 眠る健司の顔を見て遥は少し考えたが流石の遥でも一度見ただけで何かを理解できるはずもなく。

 

 「んー、こればっかりは分からんな。魔力使いすぎて頭が働かないや」

 

 遥は考えても無駄と理解し、壁に背中を持たれかかる。

 

 「初任務完了……化け物になったからと言っても元人間を殺して何も感じないとはな」

 

 遥はようやく装備していた武器を外した。

 

 「殺しによる罪悪感とかそういう感情も悪魔の遺伝子は消してしまうのかもしれないな」

第14話を読んでいただきありがとうございます

第15話は24時から25時までに投稿しますのでよろしくお願いします。

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