第11話『魔宝石』
ボスに自分たちがどういう存在なのかを教えられてからもいつも通り訓練を続けた四ヶ月間。
訓練の内容はどんどん追加され銃や剣も扱うようになり始めた。
最初は銃を撃っても二メートル先の的にも弾丸を当てれなかったり、剣をボスに当てようと振り回しても避けられ剣を奪われたりと散々だった。
剣の訓練も体術と同様にボスに攻撃を当てようと追いかけ回す。さすがに本物は使っていないがこの頃からただ追いかけるだけではなくボスからも反撃が来るようになった。
射撃訓練をして、次に素手でボスを追いかけ回すも拳でボコボコにされ、次は模造刀を持って追いかけ回すも再びボコボコにされる。
射撃訓練以外では魔法を使用しているがこれも覚えるのに二人はかなり苦労した。
健司も遥もあの時使えたのは本当に奇跡にも近い偶然だったらしく二ヶ月かけてようやく使えるようになった。
魔法は使えるようになった時に自然とその魔法の名が頭に浮かび、その名を口し、魔力を消費することで魔法が発動する。最終的には名前を言わなくても使えるらしいが口に出した方が確実で早い。
健司の魔法は聖絶。
魔力の他に自分の血を消費することで自身の身体能力を強化することができる。血の量と魔力を多くすればするほど強くなる。
遥の魔法は火焔。
自分の魔力で作った炎を自在に操り、相手の魔法で作り出された炎以外の炎に干渉することが出来る。
この四ヶ月間の健司と遥は身体中がアザまみれになる毎日だった。しかし、そんな傷も今の二人であれば二日程度で完治しまう。
訓練所で健司と遥がボスを待ちながら組手をしているとボスが二つの大きなアタッシュケースを運んできた。
「なんですか? それ」
「健司は食いつくのが早いな。これはお前らに支給される魔宝石を使った武器だ」
「魔宝石?」
聞いたことの無い言葉に遥は眉をひそめる。
「魔宝石ってのはだな、書いて字のごとく魔力を結晶化させた石だ。魔宝石を使えば折れない剣や戦車をも貫く弾丸を放つ拳銃を作れたりする」
ボスは二つのアタッシュケースを健司と遥に押し付けて自分の部屋へ戻ってから開けるように指示した。
「そしてだ、魔法が使えるようになった事だし、お前達にそろそろ任務に出てもらう」
「任務……?」
「それって本気ですか? 俺と遥が? ボスにまだまともに攻撃を当てれていないのに?」
いきなりのことに二人は驚きを隠せない。
「私に当てれてから動いたのでは滅び人間は確実に絶滅するからな、人間は今かなりジリ貧なんだ。それに悪魔の遺伝子は命のやり取りの場でこそ成長する」
「じゃあ元々俺と健司がクリーンヒットをボスに当てれるなんて……」
「思ってない」
サラッとボスは答えたがその言葉に遥と健司はその場に膝をついてうなだれる。
「えっと……任務の話していいか?」
「もう好きにしてください、俺も遥もちゃんと聞いてますから」
半分投げやりに答える。
ボスは咳払いを一つして説明に入る。
「この施設周辺にアンデッドとは比べ物にならない程のウイルス量のアンデッドが現れた。私達はそいつらを、クリーチャーと呼んでいる。そして任務はそのクリーチャーの討伐だ」
「ウイルス量が多いと他のアンデッドとどう違うんですか?」
ようやくうなだれていた二人は顔を上げ、遥が質問をなげかけた。
「アンデッドより体が巨大でパワーやスピードは桁違い、そしてなりよりクリーチャーからは魔力が検知された」
「それって誰かが生物兵器的な実験をどこかでしていることになりませんか」
健司の言葉にボスは頷く。
「これが今回の作戦の資料だ。しっかり目を通しておけとは言わないが多少は読んでおいてくれ」
資料にはクリーチャーの絵や周囲のアンデッドの数、その他にも立地や色々な情報が詳しく書かれている。
「おっかねぇな」
「そんなことも言ってられないだろ。いつか戦わないといけない日は来るんだから」
健司は遥の肩を叩きながら笑って見せた。
不安がない訳では無い、しかし、健司は自分の力を試したくて仕方がなかったのだ。
「初陣の死亡率はとても高い。私はお前達をみすみす見殺しにするつもりは無い。しかし、人類が生き残るためにお前達には無理をしてもらわなければならない」
ボスが自分たちを戦力として認めてくれていることが分かり二人は嬉しく思った。
「期待に応えてみせます」
健司と遥の考えていることは同じだった。
「任務は明日、今日はもう帰って休め」
「「了解」」
二人は珍しくきっちりとした敬礼をして訓練所をあとにした。
「どんな武器が支給されたのか」
健司はウキウキとアタッシュケースを開け、中にある武器を目にしてにんまりと笑う。きっと遥も今の自分と同じ状態だろうと思いながら。
次の日の朝
二人は出動ヘリに乗り込んだ。
健司は日本刀を腰に付け、右足のレッグホルスターにレイジングブルを装備。
遥も腰に西洋直剣を付け、ショルダーホルスターにデザートイーグルを装備。
二人は出撃ヘリを前にして嫌な汗をかく。
これから本当に命を懸けたやりとりが始まると思い、慣れない感覚から緊張で口が乾く。
「緊張してたら死んじまうぞ」
突然後ろから声をかけられ驚いて後ろを見ると軍人だった。
このヘリの操縦士らしい。
「俺の名前はワイアット·ザウエルだ、よろしく」
長髪に黒く焼けた肌、少し太っていて、サングラスが良く似合う男だった。
「安心しろ。死にそうになったらすぐヘリで拾ってやるから」
そう言って大きな笑い声を上げながら健司と遥の頭をワシワシと雑に撫でながらヘリに乗り込んで行った。
「だってよ遥。そんなダセェ事にならないようにしないとな」
「ああ、任務はしっかりとこなしてこそだからな」
第11話読んでいただきありがとうございます。
第12話は13時に予約掲載しますので良ければ読んでください。




