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第101話『勝算』


 健司が転送魔術によって別の場所へ移動させられた。ヴァサゴが弱体化したとは言っても三人でようやく倒せる考えだったため紫菀たちの表情に少なからず焦りが見える。

 

 「シルヴィアはボクとユニゾンして、紫菀と遥は僕が作った薬を飲んで魔力回復を、薫那は魔力サポートをお願い」

 

 シルヴィアとユニゾンしたヒツギは右目がシルヴィアと同じ金色に変わり、髪は青みがかった白髪に変わる。

 紫菀と遥は魔力を回復し、紫菀は再びマシロと魔力を合わせる。遥は体の調子を確かめるように手の上に火の玉を作り出す。するとそこに小さな光の玉が混じる。

 

 「これは……」

 

 もしやと思った遥は試しに魔法を発動させる。すると今度は光の玉がはっきりと作り出された。

 

 「遥、それって」

 「ボスの置き土産みたいだ」

 

 ヴァサゴに乗っ取られた時に混じったボスの魔力により遥はボスの魔法が使えるようになっていた。

 

 「それじゃあ、始めようか?」

 

 ヴァサゴは魔宝石の地面に突き刺した歪んだ剣を引き抜き一気に距離を詰める。しかし、ヴァサゴの司会は一瞬で爆炎に包まれる。

  剣を振るい爆炎をかき消すと足に刃の着いたワイヤーが絡みついている。そのまま宙に引っ張られ地面に叩きつけられる。

 地面に直撃するギリギリで魔術を放ち威力を殺す。しかし、直ぐに無数の光線がヴァサゴに襲いかかる。

 ヴァサゴは急いで体を起こし剣で防ぎながら光線を回避する。回避した先で四色の魔法陣に囲まれ、放たれる砲撃。これを魔術で防ぐが無傷という訳にはいかなかった。

 

 「同じ戦法が何度も通用すると思うなよ」

 

 ヴァサゴは右手を何かを掴むように勢いよく伸ばす。するとその手は遥の首を掴んでいた。

 

 「ぐっ……」

 「掴まえた」

 

 首を掴まれた遥が振り払うために反撃しようとするとヴァサゴは遥を全力で投げる。遥は投げられ姿が消えていた紫菀をぶつかり紫菀の姿も見えるようになった。

 背中に何かを防ぐように剣を当てると凄まじい金属音がなる。

 

 「ヒツギみっけ」

 

 何も無い空間に歪な剣を振るうと凄まじい金属音と火花が飛び散る。

 修羅刀でヴァサゴの一撃を防いだヒツギだったが威力は殺しきれず後方へ吹き飛ぶ。

 

 「くぅ……ねぇシルヴィア、修羅刀をボクでも使えるようにしたりすることってできる?」

 『すみません。さすがにそれは……』

 「だよねぇ」

 

 健司が使わない修羅刀は普通の刀と変わらないため、ヒツギにとってはよくキレる重い刀くらいにしか感じない。

 

 「ホントないよりは良いって感じだね」

 

 ヒツギは起き上がりヴァサゴと戦闘を繰り広げている紫菀と遥に参加する。ヒツギが戦闘に再び参加すると同時に三人の動きが変わる。

 元々決めていたかのように流れるような隙のないコンビネーションを見せつける。攻撃と防御を互いの隙を埋めるその姿をヴァサゴは見たことがあった。

 

 「魔力リンクか」

 

 吹雪鬼達がヴァサゴに立ち向かうために使った互いの魔力の流れを合わせることで互いの動きに寸分の狂いもない連携が取れるという高等技術。

 

 「しかし、何か違うな」

 

 ヴァサゴの中で生まれた違和感。吹雪鬼達と戦った時の魔力リンクとは何かが違う。

 

 「ああ、なるほどな」

 

 ヴァサゴはニヤリと笑うと三人の攻撃を防いだ後に何も無い空間へ走り出した。その瞬間、三人の表情に焦りが見えた。

 

 ヴァサゴが振るう剣を遥が防ぐ。

 そこへ紫菀とヒツギの追撃。

 ヴァサゴは遥を蹴り飛ばし二人の攻撃を避ける。

 

 「一人が全員の魔力サポートをすることで簡易的に魔力リンクに近いことをしてるって訳だな」

 「仮にそれな正解だとして、種がわかったところで対策が取れるわけじゃないだろ」

 「確かにそれはそうだ」

 

 紫菀の言葉をあっけなく認めるヴァサゴだったが雰囲気から余裕が消えない。その雰囲気に警戒しているとヴァサゴが先に動き出す。

 その動きに瞬時に対応する三人だが驚くことにヴァサゴの攻撃に押し負け始めた。

 繰り返される連撃の中、 ほんの僅かな一瞬の隙を突かれ遥と紫菀が吹き飛ばされた。

 

 「しまった!」 

 「一ついいことを教えてやろう、お前らの予測と違って残念だが俺は大して弱体化してない」

 「──ッ!」

 

 焦りながら修羅刀を振るうヒツギの一撃を受け止めながらヴァサゴはヒツギに聞こえるくらいの声で告げる。

 

 「遥の体を奪った時点でお前たちが遥を助けようとするのは目に見えていた。だったらもしもの時の対策をしておくのが普通だろ?」

 「そんな?!」

 「遥の体から離れても一定量の魔力はキープできるようにした。ただディランの魔力を持っていかれたのは想定外だったがな。つまり遥も俺もほぼプラマイゼロだ」

 

 告げられた真実により、ヒツギの表情に一気に絶望の色が見え始める。ヒツギにとってこの戦いの勝算はヴァサゴが遥の体から出ることで肉体を失い、新たに肉体を作るために魔力を大幅に消費する所にあった。

 

 「さて、計算が狂ったみたいだがどうする? 作戦を練り直す時間でもやろうか?」

 

 ヒツギの中で様々な思考が巡る。しかし、焦りながらの思考ではまともな答えにたどり着けるはずもなく、ぐるぐると頭の中を回るだけだった。

 

 『ヒツギさん! 動きを止めてはダメです!』

 

 シルヴィアが叫ぶがヒツギにその声は届かず、思考を優先したヒツギは動けずにいる。

 

 「まぁいい、最初の脱落者はヒツギで決定だ」

 

 ヴァサゴは件を振り上げる。

 

 「させるかよ!」

 

 遥の一撃でヴァサゴの体勢が崩れる。しかし、既にヴァサゴの視界に遥は居ない。そこかさらに後ろから、横から、上から、縦横無尽に攻撃が加えられる。

 ヴァサゴは当たる直前ギリギリで攻撃を受け止めるが遥の姿はすぐに消える。ガードはできているが徐々にダメージが蓄積されていく。

 

 「さすがに鬱陶しいな……」

 

 ヴァサゴの肩甲骨付近の皮膚が裂け、中からまさに悪魔のような翼が生え、ヴァサゴは宙へと羽ばたく。

 それを追尾する遥。

 

 「やはり炎をブースターのように背中付近から噴出し飛行するように高速移動してたのか」

 「空中戦もできるのかよ……」

 

 遥はヴァサゴの翼を鬱陶しそうに見る。

 遥の炎がヴァサゴとの戦いの軌跡を描くように火花の炎が宙に舞う。

 鍔迫り合いからヴァサゴが後ろに下がったところを追いかけようとした時、ヴァサゴは持っていた剣を遥に投げつけた。

 遥は焦りながらも的確にその剣を弾き返したがそれによりヴァサゴを見失った。

 周囲を見渡すがヴァサゴの姿は見えない。

 

 「クソ! どこだ!」

 「下だ」

 

 遥の足元から飛び上がり、遥の目の前に現れる。そして振り上げられた腕は翼と同様にまさに悪魔と言わんばかりの形状に変化していた。

 

 「クッ!」

 

 防ぐ遥だったがヴァサゴが振るう拳の威力は防ぎきれるレベルを遥かに凌駕していた。その一撃で遥は魔宝石の地面に叩きつけられ、その勢いで魔宝石がクレーターのように砕けた。

 

 「お前ら、ホント背後取ると好きだな」

 

 背後からの紫菀の一撃を変化した腕で受け止める。そこから紫菀は尻尾の先端に着いた刃をヴァサゴに突き立てるがそれもギリギリで止められる。

 紫菀は待っていたとばかりに両手が塞がったヴァサゴに砕けた魔宝石を操作しライフル弾より早い速度で撃ち込む。

 ヴァサゴはそれを体を捻り避けようとするが遥に与えられたダメージによる痛みで体の反応が遅れた。それにより一つの魔宝石がヴァサゴの右目をえぐる。

 流石のヴァサゴもこの攻撃には怯んでしまう。

 

 さらに追撃を加えようとする紫菀。

 

 「チャンスと思ったらすぐに飛び込むのがお前たちの悪い癖だな」

 

 右目を抑えながらヴァサゴは不敵に笑う。

 紫菀がその笑みに恐怖を感じた時には既に遅かった。紫菀の目の前に魔法陣が作られその中からガラスで作られたような五体の悪魔の上半身が飛び出す。その悪魔は全員色が違い、赤、青、緑、黄、黒の五体だった。

 

 「エレメント・ブレス」

 

 悪魔は口を大きく開き、そこから砲撃が放たれる。黒を中心に四色の光が螺旋を描きながら紫菀を飲み込む。

 砲撃はそう長くは続かなかったが砲撃が終わると同時に紫菀は地面に向かい落下する。地面にぶつかり、砲撃の威力によりマシロの変身まで解かれ元の姿に戻っている。

 

 「さぁ、後はヒツギと薫那だけだ」

 

 既に右目の血は止まっているが視力は完全に失われたようだった。

 

 『ヒツギさん!』

 

 ヒツギは身体強化魔術をギリギリまで使い、ヴァサゴに斬り掛かる。最初は身体強化魔術によりヴァサゴと互角以上に戦えた。しかし、元々戦闘向きではないヒツギの体には負荷が大きすぎた。

 

 「うっ……!」

 

 突如、全身から力が抜け膝を着く、体が限界を迎えてしまった。魔力はあるが体を動かすことが全くできない。

 

 「残念だったな。ほんの少しは希望が見える戦いぶりだったがな」

 「待ちなさい!」

 

 ヴァサゴの背後から姿を消していた薫那が姿を現す。

 

 「おいおい、お前はこの中で一番戦えないやつだろ? 無駄死にでもしに来たのか?」

 「いいえ、あんたの目的はこれでしょ」

 

 薫那は魔導書を見せる。

 

 「これを渡すから、もうみんなを苦しめないで」

 「薫那! ダメだよ!」

 

 ヴァサゴは嘲笑うような笑みを浮かべながら魔導書を薫那から受け取る。

 ヴァサゴが受け取った瞬間、魔導書から拘束魔術が発動しヴァサゴの動きを封じ込める。

 そしてヒツギが落とした修羅刀を使いヴァサゴを切り裂く、しかし、ヴァサゴはあっけなく拘束魔術を破壊し薫那の一撃を受け止めた。

 

 「本物の魔導書はどこだ?」

 「教えないわ」

 「そうか」

 

 ヴァサゴは薫那に魔力を電気に変換し体内へと流し込んだ。

 

 「薫那!」

 

 電流を流された薫那からは肉体が焼ける焦げ臭い嫌な匂いがした。

 

 「薫那……! 薫那……!」

 

 ヒツギは動かない体を引きずるように薫那の元へと近づく、幸いまだ死んではいなかった。

 

 「魔導書はまた後で見つけるとして、どうやらお前たちを救えるかもしれないナイトが参上するようだ」

 

 ヴァサゴは嬉しそうに地上と繋がる穴の方を眺めた。

 

第101話『勝算』を読んでいただきありがとうございます。

第102話は8月23日に投稿予定なのでよろしくお願いいたします。

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