始まり
よく異世界モノってあるけれど、あの人達は恵まれているよね。チート能力があったり、可愛い女の子に囲まれたり控えめに言って羨ましすぎて爆発してほしい。自分もあの人達と同じように異世界に行けたらきっと楽しい人生が送れると、そう思っていたんだ。
俺がこの世界に来たのは、5日前の出来事だった。俺はいつも通りの朝、いつも通りの道、いつも通りの会社、いつも通りの残業という、いつも通りの一日を過ごしていた。
そして、いつも通りの帰り道。何で俺はこんなことをしているんだ。もっと良い会社に俺なら入れたはずだ、何で俺だけ不幸なんだ。といつも通り考えながら、帰っていた。
その途中いつもはない何かが道にある。何か嫌な予感がしたのだが、自然とそこに目がいった。犬が一匹見るも無惨に死んでいた。あぁ、車に轢かれて死んだんだろうな。と直感的に思った。心の中で安らかに眠れ。来世では車なんかない、自由な世界で生きられるといいな。と祈りながら通りすぎて行った。
家に着くまで、自分とあの犬を重ねていた。あの犬は車という圧倒的な力に抵抗することができず、そのまま死んでいった。自分も会社という逆らうことができないものに押し潰されてそのうち死んでいくのだろうか。そうやって考えていくうちに段々焦りが心のなかで沸き上がってきた。そうゆう運命だったのだろうか。あの犬は車に轢かれるために生きてきたのだろうか?
自分も今まで不幸な人生を送ってきた。自分も不幸な運命からは逃れられないのだろうか?そんなの嫌だ。だけど、今までの人生はずっと良いことなんてなかった。俺はどうすれば幸せになれるのだろうか。そんなことを考えながら歩いていると、目の前にあるバナナの皮に気付けなかった。
バナナの皮。あれは実際よく滑る。まだ友だちが多かった小学生の頃ふざけて滑ってみたら、頭を強打した。バナナの皮は踏むとその跡がとても汚くなる。頭の痛みを耐えながら、先生にこんなに汚くしてどうするのかと叱られていた記憶が甦る。何で俺の心配をしないで床の心配をするのかと、子どもながらに思ったものだ。