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4話:剣戟、その終わり

 ドッゴオオオオオオオオオオオオ!


「何!?」


 さっき聞こえた白竜の叫びと同じレベルの轟音に思わず視線を向ける。


 細かい状況は分からないけれど、とりあえず白竜が翼も使わず上空20メートル位まで飛んでいることは理解できた。


 そして勿論、白騎士は私が目を逸らした瞬間を狙って鋭い突きを撃ってくるが、それは私の仕掛けた罠。

 その突きをギリギリまで引きつけて上半身だけで回避。

 白騎士はそのまま肩から当て身を狙ってくるが、踏み込みと同じ歩幅だけ下がりながら切り下がる。


「よし、やっぱり動き読めてきたかな」


 さっきまでの冷静になれと言い聞かせていた自分が間抜けに思えるほど、気持ちも体も軽やかに動く。

 ジェーノが教えてくれた白騎士のもう一つの弱点が私の戦いの流れを大きく変えてくれた。


「カウンターへの、カウンター」


 教えてくれた白騎士のもう一つの弱点はその一言だけ。

 けれどそれがどれだけ単純でどんなに難しいことかはさっきの白騎士との斬り合いで十分に理解させられてしまった。

 カウンタータイプの相手が狙う刹那の中に、剣を突き立てることの難しさを。


「だからこそ<ヘヴィソード>の反動」


 このスキルによる反動を使えば、相手に攻撃を弾かれた瞬間から私のカウンターは攻撃にまで移行し、白騎士はそこから切り返す分、一瞬遅れる。

 そしてきっとジェーノが私にあれだけしか言わなかったのは、私の体に実感として剣戟の理解を染み込ませるため。


「ま、それが買いかぶりすぎだったとしても、今このバトルが楽しいなら私は――」


 白騎士の胴薙ぎを受け止め、反動を利用した高速反転。

 くらえ意趣返し返し!


「万々歳だけどね!」


「!」


 本家としてさっき白騎士に盗られた得意技をお返し。

 斬り返した刃が白騎士の胴を裂くと、無視できないダメージだったのか大きく距離を取る。

  

 リズムを崩す白竜がいない分、今の私ならとことん切り結ぶことができる。


「やっぱり仲間が居るって、いいな」


 このまま流れに乗って勝負を決めようか。


 しかしそう考えた瞬間、突然白騎士が右手を地面へと突き立て、そこから白く光る紋章が広がっていく。


「っ!これは<仰ぐ光臨>!?」


 この光が一定まで強くなると発動し、強い光属性ダメージと大きなノックバックを起こす上級誓約スキル。


「ヤバイってヤバイってヤバイってえええええ!」


 このレベルの誓約スキルの実物は見たことないけど、ネットの情報でえげつない範囲攻撃だということだけ知っているので、白騎士に背を向けてなりふり構わず走り出す。


 そして地面に浮かんだ紋章の端を踏み切り、頭から紋章の外側へ飛び込む。


「どっせーい!」


 女らしくない声が出た気もしたけれど、範囲外に出れたからよしとしよう。


 目を瞑ってもわずかに怯むほどの閃光をやり過ごし、顔に付いた土を払いながら起き上がって白騎士を振り返る。

 視界に入った白騎士は両手を組んで祈りのポーズをしており、周りには回復系誓約スキル特有の黄色い光が浮かんでいた。


「あれは……回復スキル?」


 範囲スキルを使ってプレイヤーに距離を取らせてから安全に回復をするという連携だろうか。


「何にせよ、やらせないけどね!」


 詠唱を止めさせるために両手を振って走り出す。


「……ん?」


 両手?


 振っていた右手、そして右手と交代で出てきた左手を見る。


「剣どこおおおおおおお!?」


 思わず叫ぶが、恐らく逃げる際に捨ててしまったであろうスペアの剣は白騎士の<仰ぐ光臨>によってどこかへ飛ばされたのか、近くにはない。


「エーティス!そのまま走れ!」


 声に顔を向けると、最初に白騎士に弾き飛ばされていた私のメインの剣をジェーノが振り上げていた。

 そして私が白騎士を間合いに捉えたタイミングでその剣をこちらへ投げてくる。


「ほらよ!」


「ナイッスロー!」


 右手でキャッチした剣に左手を添えて魔法剣スキルを発動する。


「<ソード・ノクタナル>!」


 宵闇の力を剣に宿して白騎士へ切りかかる。


「はあああああああああ!」


 横一文字に切りつけ、<ソード・ノクタナル>の効果で信仰を霧散させることによって詠唱を中断させる。


「コレで!」


 そのまま剣を振り上げ、渾身の力を剣を握る手に集める。


「終わり!」


 そしてその剣を白騎士に突き立てる。


「!」


 そこでやっと白騎士は祈りの姿勢を崩し、ジェーノの方、いやジェーノに降り注ぐ光の雨となった白竜へ手を伸ばすようにして倒れる。


 力尽きた白騎士が光となって消えた後、その場に水色の宝箱と赤い宝箱が現れる。


「クエスト……」


「クリアだよ、お疲れさん。エーティス」


 頭上にクエストクリアの文字が浮かび上がる。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【tips:魔法剣スキル】


『ソード・ノクタナル』

剣に宵闇の力を宿す魔法剣スキル。剣による攻撃に闇属性のダメージが付与されます。

又、誓約スキルを発動中の相手に対して詠唱を中断させる効果があります。(ただし詠唱中断は<ソード・ノクタナル>の発動1回につき、1度のみの効果です)

やっと戦闘終了です。

会話より戦闘の方が書くスピード早いので、ピンチといえばピンチ。


2018 4/23

【tips】を追加しました。

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