閑話:見守る者たち
「アダムとも今日でお別れか」
背もたれに体を預けて体を伸ばすと、少し温くなってしまったコーヒーで喉を潤す。
「イヴの方もじゃない?」
独り言のつもりだったが、いつの間にか隣に同僚が来ていたらしい。
「あー、そうだっけか。じゃあこの二人が揃ってユーザー初の永久凍結になるわけだ」
この<マリッジ・エッジ>において、一度もパートナーをつくらず、冒険とバトルのみに打ち込んでいた男性ユーザーがアダムだ。
彼を発見したとき、俺がプライバシー保護と独自のセンスで勝手にアダムと呼称しながら手が空いたときに興味本位でモニタリングしていのだが、ある時に同僚の女<仁科>に見つかってしまい、そこから俺がアダムを見ているときには仁科も近寄ってくるようになった。
「あれ、お前って次のイベントの企画会議じゃなかったっけか?」
「終わったわよ。私の作ったヤツで決定」
仁科が資料をデスクに投げる。
ちらっと見た感じ、ポイント800くらいの婚活中級者のためのオフラインイベントらしい。
「そりゃあ御苦労さん。じゃあこっからは仕事外だから休憩札付けろよー」
「ん」
「ん?」
言われて休憩札を首から提げた仁科が俺の胸元を指さす。
「あんたも付けなさいよ」
「あー忘れてたわ。すまんすまん」
言われて胸ポケットに仕舞っていた<本郷>と書かれた休憩札を装備する。
「さて、じゃあアダムの最後の雄姿を見届けますかね」
スタッフ専用ツールから<ステルスドローン>を選択し、彼を探しに行く。
投稿にするにあたって増えた視点です。
2018 4/12
文章の修正を行いました。