8話:一時撤退そして再出撃
「女の子拾ってきてるじゃん!」
「もう聞いたよぉ。オーダー聞く前に、大音量で」
一大決心をしつつ、細心の注意を払ってターゲットであるジェーノにアタックを試みようと思ったが、なんとジェーノの隣には女ユーザーが居た。
とりあえずその場はバックヤードへと逃亡。そして私をけしかけた主犯へと詰め寄り、肩を掴んで前後に揺すっていた。
ちなみに取ってきたオーダーはバックヤードに入った時点で調理班に通してある。
「話が違うじゃん!約束された勝利の作戦じゃなかったじゃんかー!」
「あうあうあうあう……」
唆されたのは事実としてもそこに光明が見えた気がしたから乗った話なのに、ターゲットが同伴入店してくるなんて聞いていない。
「約束はしてないよぉ。あと違ったのは約束じゃなくて私の想定。そこは謝るよぉ。あうあう……」
ガクガクと揺れながらエリーは答える。
謝罪に免じて肩は開放。
「うー……、アシカになるところだったぁ……。とりあえず詳しい状況を確認してみようよ。まだあの子が敵って決まった訳じゃないんだし」
「うぅ、もう大丈夫だよぉ。心折れたよぉ……」
思わずキッチン台に突っ伏す。
まったく想定していなかったイレギュラーの登場に、ギリギリで保っていた私の精一杯の虚勢は崩れてしまったのだ。
「もう。そんなこと言いながら器用に手だけで鮭白子の準備しないの。まったくもー……」
「えぐえぐ……」
下処理を終わらせた鮭白子にうつ伏せのまま小ねぎを散らしてポン酢を回しがけし終わったところで、私の肩を親友が優しく叩く。
「……んい?」
顔を上げると、そこにはいつもの笑顔を浮かべた親友。
「折れた心なら、丁度いいから薪にして火を点けるの。ほら、それ持ってあの子について根掘り葉掘り訊いた訊いたー」
友人はいつものおっとりボイスと笑顔で容赦なく私の背中を押す。
「……分かったよ。訊くだけ訊いてみる」
まぁ、確かにまだ諦めるには早すぎるかな。
「頑張れニアちゃんっ」
「もう頑張ってるのー!」
エリーはよく私をからかうし、面白がるし、恋愛経験がないことをイジってくる。
それを笑顔でしれっと言ってのけるんだから、タチが悪い。
けどエリーは間違ったことはあまり言わない。
難しいけど正しいことを、私に示してくれる。
それでもって本気で応援してくれるんだから、本当にどうしようもなく悪いヤツだ。
本来もう少しつなげて書こうと思っていたのですが、投稿ペースがひらいてしまいそうだったので短い区切りですが投稿いたしました。




