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7話:硝煙ガールズトークの包み焼き

 ローニアの叫びが響く30分前の厨房。


 そこに教官と訓練兵が居た。


「さて、ニアちゃん。覚悟は決まった?」


「お、おー……」


「よろしい」


 腕を組んで構えるエリー。そしてその正面に立たされている及び腰のローニア。


 先ほどの自分の『終わっちゃう』発言によってその後のローニアに変化を確認したエリーは、ローニアに最後の決断を迫っていた。


「えほんえほんっ。あー」


 エリーがわざとらしい咳払いをするとその軍隊式問答は始まった。

 

「お前の歴代パートナー数は何人だぁー」


「ぜ、0人です……」


 少数派とはいえ、ジェーノやエーティスの他にもパートナーを作らないユーザーは存在する。

 けれどそのユーザー全員が永久凍結をされるかと言えば、そうではない。

 婚活をしているかどうかの指標、<婚活ポイント>で凍結の基準が決められているのだ。


 その凍結ラインは100ポイントであり、パートナーがいるだけで80ポイントが加算されている状態になる。

 逆に言えばパートナーがいなくても婚活とみなされる行動や、運営の企画したイベントに参加すればポイントは入っていくのでローニアのように凍結を回避することは出来る。


 ちなみに本来であれば婚活ポイントは凍結基準などではなく、オフラインでの恋愛進展のためのイベント優待や施設利用優待として運営がユーザーへ提供する際の指標となるものだが、婚活に対して本腰を入れてない彼女たちのようなユーザーにとってはこのような認識だった。


「恥ずかしくないのかぁー」


「ま、まぁそこは個人の自由かなーって……」


 お互いに声に気合は入ってないが、エリーの軍隊式問答は続く。


「現実での歴代恋人は何人だぁー」


「流石にリアルでのことはプライベート的にちょっとアレかなーって……」


「リアルと大して変わらないキャラメイクしてるくせに文句を言うなぁ―」


 この二人はこの世界で意気投合してからオフラインでも何度か顔合わせをしているので、お互いのどちらの顔も知っている。

 ちなみにローニアはキャラメイク時に理想と現実のバランスに3日と半日悩んだ結果、結局現実寄りを選択していた。


「……リアルと違うキャラメイクしてるエリーは――」


「何か言ったかクソ雑魚恋愛弱者ぁー」


「何も言ってません、マム!現実でも0人です、マム!」


「よろしい。けどもうこの話し方、飽きたから戻すね」


「飽きたのか……まぁ、そっちのが私も楽だけど」


 安堵の息を吐くローニア。


「けど、本当に恋愛は全スルーでいいの?」


 教官モードに飽きたエリーだったが、ローニアへの質問自体は辞めてはいなかった。


「うーん……息抜きと料理のためにこのゲームを始めただけだから、別に恋愛とか婚活を頑張ってまでする気はないかなぁ」


 実際のお金と場所を使わずに、現実にかなり近い再現度で料理が出来る。それは<趣味:料理>と答えるローニアのような人種にとってこのゲームをプレイする大きな理由になる。


「なら、チャンスがあったらしてもいいんじゃないの?」


「うーん、チャンスというか、理想の出会いがあればかな?」


 少しだけ困った顔でローニアは言う。


「ジェーノじゃダメなの?」


 爆弾投下。


「躊躇無く個人名出すかな普通……」


 少しだけ困った顔からすごく困った顔になり、ローニアは苦笑する。

 

「ジェーノは話しやすいし、ちょっとバトルジャンキーなとこあるけどイイ奴だとは思う……。けどまだ恋愛に憧れを抱いてたいっていうか……もうちょっと乙女チックな幻想に浸ってたいかなって」


 漫画やアニメのように恋愛はキラキラしたものであってほしいという願いと、現実はそうじゃないと知ってしまっている自分とが反発して、ローニアは踏み出せないでいる。


「理想を現実にしちゃう気持ちの整理が出来てないだけで、付き合う相手としてジェーノは問題は無いんだ?」


「……ん?」


 エリーが首を傾げ、後からローニアも顎に指を当てて首を傾げる。


「……あ。あー!違う違う、いや違くないけど!そうじゃなくて!」


 自分の発言を思い返し終わったローニアが頬を染めながら慌てて弁明する。


「ジェーノが相手としてどうとかは、置い・とい・て!」


 大きなジェスチャーで三回に分けて置いておかれるジェーノ。


「とりあえずまだ踏ん切りつかないってこと!小心者なの、私は!」


「でも一生独り身で居たいわけじゃないでしょ?」


「そりゃあいつかは人並みに恋愛も結婚もしたいけど……」


「なら、今でもいいんじゃないの?……ううん、今なんじゃない?ジェーノのこと悪く思ってないなら」


 エリーの真面目な顔に「うっ……」とローニアがたじろぐ。


「だとしても、まずジェーノに、こ、告白するとこからでしょ?ムリムリムリムリ!」


 2、3歩後ずさって顔の前で両手を振るローニアは気づかない。

 親友の口角が()()()()()()()()()ことに。


「ニアちゃん、それこそ今がチャンスだよ!


 エリーは突き出されていたローニアの両手を握る。


「な、なんで……?」


 急に勢いのついた親友にローニアは困惑する。


「告白が怖いなら大丈夫だよ。成功したら万々歳だし、もし失敗してもジェーノはそのまま永久凍結になっちゃう。だからもしダメだったとしても……」


「後から顔は合わせないで済むから……ダメージはその時だけ……?」


「そういうこと。やっぱり今しかないよニアちゃん!」


 ローニアは後に気づく。


「私も頑張ってアシストするから!」


 自分が()()()()()()のではく、()()()()()()()こと。

 踏み切れない理由を親友にすべて引き出されて、そしてそれを一つ残らず丸め込まれたことに。


会話だけってやっぱりキツイです……。

次の戦闘ターンまではまだかかりそうです……。

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