今度は牢から引きずり出され
買い物済ませて牢屋に戻った。とーぜんの如く、だーれも気がついてない。
ボクは魔法を解くと、硬いベッド代わりのむしろの上に横たわった。
「起きろ」
どうやら朝。看守らしい人が、ボクを見下ろしてる。
「食え」
渡されたのは硬いパンのみ。……仮にも勇者だろ? 普通の食事くらいは出ないわけ?
「これだけ?」
……おーい。看守はこっちを無視して行っちゃったよ。……ラッキー。こっそりと物置の中のご飯を食べよ。こんなか、時間が動かないから、いつでも出来立て食べれるしね。とはいえ、あんまり匂いがするのもまずいだろうから、菓子パンもどきくらいだけにしておくけど。
ー菓子パンもどき。普通のパンを焼くとき、生地にジャムやはちみつを練り込んだものです。ドライフルーツとかを入れた普通の菓子パンもあるけど、なんか買取屋の主さんがこのパンが好みらしく、渡された。なぜかこれは菓子パンもどきと呼ばれていた。理由は不明。
まあ、とにかく。腹ごしらえも終えて、ぼーっとしてると、看守がまた来た。あ、硬いパンは物置に仕舞ったよ。
「…………」
なんだ? と思ってる間に扉が開けられ、無理やり腕を引っ張られた。
「ちょっとなに⁉ 痛い!」
「いいから来い」
おい! 出るなら出ろって言えばちゃんと動くよ、ボクは!
そうして、看守に引きづられつつ、兵士の訓練室? みたいなところに連れて行かれた。ボクになにしろと?
「ここで能力を見せてもらう」
「能力?」
「そうだ。これで私を打ってみるがいい」
渡されたのは、刃渡り1.3mほどの大剣。いや、持てなくはないけどね、ボクの体格にこれはないんじゃ?
「由緒正しい勇者の剣だ。それで私と模擬戦を行う」
要するに、実力検査ってことか。といってもなー。
ーーーー
……うん。やっぱりアッサリと負けました。当然だけどね。
「この程度のことも出来ないんですの? 本当にこの子供は勇者なのかしら?」
「……勇者の剣が手に取ることを許しておりますので、おそらくは……」
「役立たずはいりませんわ。明日、実戦で確認しましょう。この子供が使えるのかどうかを」
「……は」
そして再び牢屋へ。ふーん、実戦ね。これ、利用できるかも。