知ってしまった国の裏事情
買取屋にとーちゃく。かなりおっきな建物だね。地上四階、地下4階。後ろにおっきな倉庫もあって、宮殿よりもおっきいかも?
……とりあえずは中に入ってみる。入ってすぐは受付になってて、そこでまずは手続きをする必要があるみたい。ボクは窓口の一つに向かった。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」
「あ、買い取りをお願いしたいんですけど」
「お品物の種類は、どのようなものでしょうか?」
「宝魔石です」
「では、こちらのカードの指示に従って、あちらにお進みください」
宝石から造られたから、宝魔石。魔物から出てくるのが使い捨ての通常の魔石です。
もちろん、魔力を込めれば再利用ができる宝石のほうが価値は高いわけですね。
ボクはカードを持って、指示された方に向かう。と、カードが行き先の方向に十センチくらいの小さな矢印を放っているよ。へー、面白いものだね。
その矢印に従って進んでいくんだけど……なんか、どんどん奥に行っちゃってるような……。
十五分ほど歩いた先。みょうに立派な扉があった。その横には護衛役らしい人たちもいるし。
「主がお待ちです。お入りください」
「…………はい」
なんかみょうに丁寧に接客されてるんだけど、なんで?
ま、まあ、中で話聞けばわかるよね? ちょっとおそるおそる部屋に入ってみた。
「お待ちしておりました、異世界の勇者たる方」
おい。ボクの素性知ってるよ?
「えっと……」
「ああ、戸惑われるのも無理はございません。順に説明させていただいます」
「よ、よろしく……」
「はい」
そして、説明された。
うん。この世界の貴族って、要するに単なるお飾りなんだわな。各国の貴族や王族が戦争をしてんのもそのせい。
もともと、彼らの行いから、人心はとっくにはなれていて、かと言ってクーデターとかすると、余計に多くの人が命を失いかねない。というわけで、買取屋ってのは国の代わりとしてできたシステムだったりするわけだ。
行政とかのことはすべて買取屋とその系列の人たちが行い、税金という名のお小遣いを王族貴族にわたす。
王族貴族はそのお金で好き勝手する。そのかわり、平民に関わろうとはしない。
戦争っていうのも、行うのは貴族から選ばれた司令官に、犯罪者たちの兵士。
兵士は相応の魔道具で制限されてるから、反逆とかはできない。ああ、ボクの首に嵌っているこの隷属の首輪も同じものだね。
もちろん、王族貴族の中には、まともな人間もいる。そういう人たちは、こっちから接触したり、自分で気がついて身分を捨てたりしてるらしい。
連中のしていることは、買取屋でもつねに監視してるそうで、ボクのことも知ってたそうだ。ただ、簡単に抜け出してここに来るとは思っていなかったみたいだけど。
最初にもらったカードが、どうやら情報を読み取る魔道具らしい。いや、かなり進んでますね。防犯系の進み具合は、もとの世界以上の気がするよ?
ま、世界中全部そういうことになっていたそうだ。……大雑把な情報はともかく、このことを民間の人たちは知らないし、平和に暮らせてるからってボクの情報には入ってなかったみたい。
まあ、とりあえず、ボクの目の前にいる人が、買取屋の主で実は王様より権力を持っている人のようだってことはわかったよ。