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捨て勇者、魔王のもとへ  作者: 海影
わざと捨てられた勇者は、帰るために魔王のもとへ向かう
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あとしまつ

 ボクが壁にした氷の始末。ガイが魔石の摘出。シルファが血や肉の焼却、と手分けして終えた頃。町から数人のおそらく買取屋専属の傭兵、つまりガイやシルファの同職の人たちが到着した。

 あ、例の狐は気絶してるし、ボクの結界の内なので逃げられません。


「……ガイ、シルファ?」

「はーい」

「久しぶり。まあ、予定より会うのは早いけどね」


 本来、二人が魔王領に次に向かうのは、半年はあとだったそうだしね。やっぱり、お知り合いでした。


「……町に陸ガメが迫ってきているのが見えたのだが、これがそうか?」


 うん。疑問に思うのも無理はない。そこにあるのは甲羅と拳大の魔石。それに伸びてる狐だけだからね。


「そうよ。陸ガメは彼が瞬殺したし、死体も素材抜かして全部燃やしちゃったもの。残ってるのは甲羅と魔石と、……陸ガメ暴走の原因だけ」

「……その狐か?」

「狐の獣人、だよ。言葉を話していたからね。最初はおれたちの乗っている竜車によってきてね。それをキリの結界で避けたら、今度は町の方に走り出したんだよ」

「犯罪者になる方がマシだと考えたのか……。こんな真似をすれば、最下級の兵として送られる。さっさと命を落とすことになることは変わらないだろうにな」


 結局そうなるね。


「で、こっちの嬢ちゃんが、例の勇者か?」

「はい、キリです」

「お嬢ちゃんじゃないわよ」

「いや、そこは不明になってるだろう? キリ自身はっきりと言ってはいないし」

「というか、男と言っても女と言っても、自分の思っている方だと決めつけてくれるので、不明にしておいてるんです。あ、ちなみにボク個人の事情から、他人に肌を見せるのは遠慮させてもらっているので」

「……なら、こっちもキリと呼ばせてもらうぞ」

「どうぞ」


「で。こいつをどうするかだな」

「移動なら、ボクが持っていけますよ。そういう能力を持っているので」

「ああ、収納系があるのか」

「です」


 とりあえず、これは物置にしまっておいて、問題はこっち。


「それで、この狐はどうしますか?」

「まあ、連れて行くしかないな。詳しいことはあっちで尋問する。移送はこっちでするから、お前さんたちは気にせずに町にいっていいぞ。ああ、あとでまた状況説明はしてもらうことにはなるだろうが」

「分かりました」

「町についたら買取屋に報告もあるし。ついでに説明もしておくわよ」

「そのかわり、あとのことは任せたからな」

「おう」


 豪快に笑いながら請け負った傭兵さんたちに挨拶をして、ボクたちは先に町に向かうことになった。


 あ、ちなみにボクたちと話していた人以外のメンバーは、ボクの性別について話し合い、というか賭けをしているようです。

 というわけで、ちょっと小突いてから出発しました。

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