召喚されたよ
それが起こったのは、学校からの帰り道だった。
友人とダベりながら、のんびりと田舎道を歩いてたら、足元に魔方陣が浮かんだんだ。で、光の柱に飲み込まれて、気がついたらおっきな城の謁見の間、だったわけだ。
……そして、周りの変化に戸惑ってる間に、いきなりマフラーを剥がされて、首輪を付けられた。
マフラー取られた時は、本当に焦ったよ。なにしろ、これが元の世界だったら、大火傷になってたはずだしね。
だけど、取られてもなにも起きず、はめられた首輪から妙な感じを受けて……。
「ナニコレ?」
ってか、アレ?
「痛くない?」
思わず呟いたんだけど、どうやら声が小さくて、周りには聞こえなかったよう。
「名を名乗れ」
えっと、なんか妙に偉そうな連中だな、っと思いつつ、とりあえず名乗る。
「ボクは、ユウギリ……」
「お父様、これが勇者なのですか?」
……いや、これって……。
まあ、ここの人たちと比べて、ちみっこいのはわかるよ? でも、これはないよね。
あ、ちなみにボクの身長は168cm 。周りの連中は、低くて(女性でも)180cm 以上のよう。どうやら、全体的に身長が高い人ばっかの場所なのね。ってか、ほんと、ここどこよ?
「……」
声を出して質問しようとしたとこで、首輪からまた妙な違和感を感じた。そっちを意識すると、首輪の情報を思い出す。ついでにさっきの疑問、この場所についても、思い出した。
どうやら、ボクは召喚とやらがされたらしい。その際にありとあらゆるモノ、国などについての情報も、自動インストールされたようだ。
んで、肝心のこの首輪。これはどうやら『隷属の首輪』というらしい。名前の通り、着けたモノは、首輪に設定された相手に従うことしか出来なくなる。自力で外しても、自動修復がかかるから意味がない。外せるのは、設定された相手もしくは、死んだときだけ。設定されてない相手に外された場合は、その時点で命を落とすという呪いが掛かっている。
ボクにはどうやら効いてないけど、首輪が相手の言葉に反応してるのは分かる。つまり、首輪の効果が効いてる振りが簡単に出来たりする。
……状況もよくわかんないし、とりあえずは従っておいた方がいっかな?
「こんな子供が、勇者様だとは、どう考えても思えませんわ。おそらくは術が失敗したのではありませんこと?」
術ーー今回の場合は召喚の儀式魔術。転移用の魔方陣を改良して造られたもので、今回はどうやらお試しも混じってたみたい。そのためにおっきな魔石まで使ってるみたいなんだけどね。
あ、魔石ってのは、宝石に魔力持ちが魔力を込めたもの。宝石に込めるには、かなりの魔力と技術が必要なようで。
これで使いきったのに、改めて魔力を込めるとなると、一月は掛かるかな?
「……一応は確認すべきであろう。ヴォルト、これに武具一式を用意しろ。ユリアナ、レティシア、お前たちはこれの能力の確認だ。役に立ちそうになければ、棄ててこい」
おーい。ボクは犬猫じゃないぞ。
「わかりましたわ。それではそのように」
どのようにだよ! もう、突っ込みどころしかないよ。
「とりあえず、これは牢に放り込んでおけ」
「……は」
そうして、したっぱの衛兵? さん達に連れられ、牢屋に入ったのだった……。