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捨て勇者、魔王のもとへ  作者: 海影
わざと捨てられた勇者は、帰るために魔王のもとへ向かう
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ドラゴン売却、旅支度

 うーん。なんか朝からのんびりしすぎたような。まあ、いいか。昨日が昨日だし。

 なにしろ、王女さまに捨てられて、この町にきて、買取屋いったら、魔物が襲ってきて、魔物とドラゴン退治したからね。


 ガイとシルファと三人で、のんびりとこの町の特産品と陶芸について話しながら買取屋に向かう。


「……だから、キリに持っておいてもらえば、壊れやすい食器も問題ないでしょう?」

「キリに負担をかける必要なないよ。野営で使うのは、銅で十分」


 一般的に、旅で利用する食器や調理器具のたぐいは、銅が多いらしい。柔らかくてすぐにへこむけど、直すのが簡単だかららしい。


「食器は別になんでもいいよ。鍋とか、必要なものはもう持ってるから、あとは二人の分の食器くらいだし」

「そういうキリの食器って? やっぱり銅?」

「いや、普通の家庭用の食器。テーブルと椅子もしっかりと準備してあるから」

「やっぱり、陶器でいいじゃない!」

「まあ、好きにしていいよ。容量はかなりあるから。多分、あとドラゴンなら百匹くらい入るかな」

「……問題、ないね」

「ないわね」


 うん。呆れる気持ちも一応はわかるけど、事実だから仕方がない。


「さて、それで買取屋についたわけだけど」

「店主が待ってるわ。すぐに行くわよ」

「なんでわかるの?」

「……昨日、帰り際に旅支度は準備しておくって言っていたからね。時間はともかく、おれたちを待っているのは間違いない。この時間なら、訪ねてもおかしくはないから」


 現在、十時頃。朝の料理と、その他の雑談で、のんびりしすぎたかも。


「それじゃ行こうか」


 と、中に入ってあっという間に店主さんの部屋だった。


「お待ちしておりました」

「えっと……」

「旅の支度はできています。町の入り口にある厩舎に、竜車をとめてあります。それをご使用ください。竜は賢いので、御者は必要ありません。ガイ、シルファ、しっかりとキリ様を送り届けるのですよ」

「はぁ……」

「なんか、準備良すぎな気が……」


 二人とも、なんかぼうっとしちゃった。


「ああ、そうでした。魔王領に突然聖者が現れたそうです。キリ様のお知り合いの可能性が高いかと」

「ほんと!」

「はい」

「よし、すぐに出発しよう!」

「ちょっとちょっと!」

「ドラゴンはどうするんだい⁉」

「あ」


 忘れてた。


「ドラゴン、と言うと昨日の?」

「そうです。倒してそのままボクが持ったままでした。これ、売りたいんですけど」

「分かりました。それでは買い取り場に預けていただけますか? 欲しい部位とかがなければ、こちらで査定したうえで、買取金はキリ様のカードに入れさせて頂きますが?」


 ようするに、銀行に預けるのと同じってことかな。


「ではそれで。ボクにはドラゴンの使いみちはないですから」

「はい。ではそのようにいたします。またのご利用をお待ちしております」


 というわけで、買い取り場にドラゴンを預けました。うん。だいぶいい状態なもので、かなりの金額になるそう。いや、大金持ちになっちゃった。

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