勇者死す?
連載、はじめます。
目の前に迫っているのは、最下級の魔物であるゴブリン1匹。相対するのは、全身黒ずくめ、重そうな鎧、大剣をもった、小柄な人物。一切肌が出てない、暑そうな格好のまま、大振りに剣を振り下ろすも、軽々と避けられる。
「や、やっぱり、むりですよ! ボクにこんなのー!」
避けたゴブリンは逆にあっさりと近づいて、鎧に傷をつけていく。もっとも防御を突破はできないし、弱いところを狙うといった頭もないが。
「こんな下級の相手でも、勝てないとは……。やはり、術は失敗だったのですわね」
「そのようですね、姉様。それではやはり……」
「そうですわね」
端で見ていた姉妹らしき二人が、何らかの結論を出したらしい。
「炎よ」
姉の方が杖をかざして一言唱えると、ゴブリンは炎に包まれた。
「うわあー!」
ゴブリンの前にいたため、一緒に炎に炙られかけて慌てて飛び退くと、そのまま尻餅をついて、荒い息をする。
それを見て、姉妹はやれやれと首を振った。
「どうやら、貴方は勇者様ではないようです。ですから、同行はここまでにさせていただきますわ」
「そういう訳ですので、お貸しした剣と鎧を返して頂きます。ヴォルト」
「……はい」
姉妹から下がった所にいた、騎士鎧に身を包んだ男が近づく。
「……すまない……(ここから北に半日ほどで町に出る。なんとか生き延びてほしい)」
鎧を剥ぎ剣を取りながら、彼は小さく呟いて小袋を黒服のポケットにこっそりと入れた。姉妹に仕える彼としては、それができる精一杯だったのだろう。
「それでは、ごきげんよう」
ぼーっとただ見ているだけしかできないのを確認して、姉は杖を振るう。
「帰還」
そして、三人の姿が消えた。
しばらく後、目の前に現れたのは下級の魔物、アースウルフ。地属性の狼は、目の前の獲物の首筋に食いついた。
ブチッ!
そして、ちぎれて落ちた……。




