君の、夏のような
あまりにも投稿して無さすぎたので途中まで書いていたものを急遽完成させました。
拙いところもあると思いますがごゆるりとお楽しみください。
昔、友人にこう評されたことがある。
「お前ってなんて言うか、澄んでるよな」
評価というより唯の会話の一部だったのかもしれないが、この言葉は心によく残ったのは確かだ。
その言葉に自分は何故だ?と返した。
「さあ?なんとなく思っただけさ」
なんてぬかす友人を見て笑い転げた記憶が懐かしい。
よくそんな事堂々と言えるなー、とかそんな事を言った覚えがあるが、鮮明に思い出せないのが自分の記憶力の忌むべき所である。
澄んでいる、か。
それは夏の日差しのようなものなのだろうか。
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暦は8月を示していた。
皮膚が焼け爛れるような暑さが、脳裏に浮かぶ。
浮かぶ、というのも今は自室にいて勉学に励んでいるからなのだが。
ともかく目の前にあるソレを早い内に済ませてしまわないと後々の予定に狂いが生じる。
勿論、此処で云うソレは夏季休暇の悪魔、課題だ。
1日のノルマをこなし、アイスティーで一服。という所で奴がやって来た。
「いやっほーぅ」
やけに能天気な声と同時に床の軋む音。
いつの間にか背後に居たソイツはコチラの顔を伺うことも無く用件を繰り出した。
「英語がわからん。読み方を教えてくれたまえ。」
絶句。頭にはこの二文字しか浮かばなかった。
なんとか口に出せたのは
「お前は忍者か何かか!?」
という言葉だけだった。
「チミ、私は立ち幅飛びで3mという記録を打ち出す脚部マスターだぞ?隣の家のベランダに飛び移ることなど造作もない!」
やたらデカい胸部を突き出す阿呆。頭にきたので取り敢えず阿呆を抱えて外に捨てることにした。
2階、だいたい7mはあるだろうか。
まぁ、ここから落としたところで脚部マスターとやらの骨にはヒビすら入らんだろう。
「ちょ、タンマタンマ!」
言うが早いか、手と肩の間で暴れる巨乳阿呆女。
ゴン、と響く音と鈍痛。
しかも二つのボールが視界を遮るせいで視線はそのまま急降下。
二度目の鈍痛が部屋に響き渡り、執行猶予無しの一時間の失神という実刑判決が下った。
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痛む頭を抱えながら体を起こすと、目の前には思わぬ光景が
広がっていた。
…なんで人の部屋で寝ているんだ、この駄肉は。
しかもこいつは加害者だ。なのに何故呑気に寝ていられる?
やっぱりおかしい、主に頭が。
「起きろやぁぁぁぁぁぁ!」
これでもかという程声帯を震わせる。お隣さん(駄肉ではない方)に文句を言われるのは確実だろう。
「ふわあぁぁぁぁお」
大きな欠伸をし、自前の球体を揺らすモンスター。
これは危ない、倫理的な意味で。ちなみにモンスターの上半身にはタンクトップがお情けのように着られているだけだ。寧ろ収まるのが不思議である。
「あー、起きた?」
信じらんねえ。被害者にかける言葉がそれかよ。
少しは心配してくれよ…。とか思ってもこのモンスターには通用しないし、話が進まないのでこちらから質問をする。
「えーと、アンタ何しに来たんだっけ」
後頭部強打って怖い。ちょっと前に起きたこと忘れてしまうんだから。
「英語を教えてくれたまえ」
どう考えても教えてもらう人間の言葉じゃない。じゃないが……。
「仕方ねえなぁ」
なんて言いながら頼みを引き受ける。
昔からこの手の頼み事は断れない性分のせいだろう。
片手で座るように促し、レモンティーを作りに1階へ移動する。
アイツは昔から檸檬などの柑橘類を好んでいる。
なんでも「甘酸っぱいのがいい」らしい。
自分のものも含め2つのカップをトレーに載せ、階段を昇る。
部屋へ戻ると堕肉がどこから持ってきたのかわからないハンドライトでベッド下を照らしていた。
静かにトレーを置き、手頃な参考書を丸め、スパコンっ!
この間わずか0.8秒。コレにはさすがの肉も驚いたようで「ふにゃ!?」なんて(似合わない)声を上げていた。さらに叩きたい衝動に駆られたが人として駄目だと思ったのでやめた。少し勿体なかったか……。
「なーにしてんだ、アンタは」
倒置法を使いつつ問い詰める。まあ、大体予想は付くが。
「何ってエロ本に決まってるじゃん」
決まってるのか……。
「その為に来たなら帰ってもらってもいいか?」
この一言が意外に効いたのか、慌てながら
「ちょちょ、待って!英語分かんないのはホントだから!」
「だったらそこに座ってください」
さっきまで自分が座っていたクッションを指さす。
「……はい」
名残惜しそうにクッションに座ってレモンティーを一口。
「また腕を上げたようだね」
無い顎髭を擦りながら賞賛してくる。
「そりゃどーも、レモンティー作りの腕を上げたところで何かに役立つ気はしないけどな」
言いながらレモンティーを飲む。我ながらかなりよく出来たと思う。
「うちに来ればいいじゃん」
ぶっ。折角のレモンティーを吹き出しながら
「何言ってんだアンタは!」
言葉を返す。
「うちに来ればレモンティーだけじゃなくてコーヒー作りの腕も上がるのに」
コーヒーと聞いて、コイツの家が喫茶店をやっていることを思い出す。
……レモンティー出してるところはそうそう無いのでは?
「なんで俺がアンタのとこ行かなきゃいけないんだよ」
「うーん、私の役に立つため?」
なんて傲慢……。
「アンタさぁ、意味わかってて言ってる?」
「?」
キョトンとしながら頭に[はてなマーク]を立てている。
「アンタのためにアンタんとこの店に行くってことは婿って事なんじゃねえの?」
「そうだけど?」
「は?」
間髪を入れずに帰ってきた言葉に魂が抜けかける。
「え、逆に他の意味があった?」
「それはアレか、告白、なのか?」
「そうだぞー、寧ろ気付いてなかったのか」
今まで何回か言われていたがそういう事だったのか……。
「すまん、全く気付いてなかった」
誠心誠意謝罪する。
「まぁ、お姉さんは器が大きいので許してあげますけどぉ〜」
わざとらしく語尾を伸ばし、半目でこちらを見てくる。
「で、答えは?」
まぁ、そりゃそうだよな。告白されてる(されてた)ってわかった以上ちゃんと答えなきゃな。
「俺も……好きだ。これからもその……よろしく」
「うん。」
頬を赤らめ、こちらに笑いかけてくる。
ズルいなぁ、ホント。
「それじゃ、うちの親に挨拶しに行こうか!」
「へ!?」
突然のことに思考が停止する。
「ほら、結婚を前提にさ」
「早いってマジで!」
抵抗する俺の腕を思いっきり引っ張る彼女はこの世の何よりも、澄んだ笑顔でそしてとても綺麗だった。




