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狐幻丸、ここに!  作者: 赤き狐
第一幕【最強の忍】
51/68

決着……? 伍

「……………………」

 全員息を潜め、様子を伺う。

 が、このままではらちが開かない。

《……狙撃は?》

 やがて他の監視から通信が入る。

「無理だ今日はライフルが無い」

 今日の仕事は隠密精の高い仕事だ。

 屋外での発砲は認められていないし、その為の潜入だ。

《同じく》

《そうだったな……》

 聞いた本人もソレは知っていた筈だ。

 だが、グゥウェン達が失敗した事、そして『白い獣』を目の当たりのしたことで焦りが生まれたのであろう。


──こいつは此処で殺しておくべきだ──


 白い獣を目視した誰もがそう思った。

 が、グゥウェン達がやられた相手に銃も無しに勝てるとは思えない。

(作戦は完全に失敗だ……撤退するしかない)

 グゥウェン達の身が気がかりだが、仕方ない。

 上に報告し、指示を仰ぐべきだ。



「いるのだろう?」



「!?」

 不意に、白い獣が声を上げた。

《……しゃべった》

 そりゃあ喋るだろう、中は人間なのだから。

《若いな》

「ああ、やはり……」

 報告にあった『こげんまる』という少年で間違いは無いのかもしれない。

(間違いであってほしかったが……な)

 ヤンは独り、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。



「なあ、聞こえているのであろう?」



 再び白い獣が声を上げる。

《一体何を言って……》

 近くにいる誰かに話しかけているのかと思ったが、誰も出てくる気配は無い。

「……まさか」

 ヤンはハッとした。

「俺達か!?」

 白い獣が声をかけているのは屋敷の人間ではなく、監視をしているヤン達だった。


「早いとこ、こやつ等を連れていってほしいのでござるが?」


 どうやら白い獣はのびているグゥウェン達を連れていけと言っている。

《……どういうつもりだ!?》

 普通に警察にでも引き渡せば良いものを……ヤン達には白い獣の意図が読めない。

《罠……か?》

 グゥウェン達三人を始末した程の奴だ、監視の三人くらい何という事もないだろう……のこのこ出ていった所を一網打尽にしてしまおうという腹なのかもしれない。

(どうする?)

 ヤンは他の二人に相談しようと、無線機に口を近づけ────白い獣が動いた。

「………………ふむ」

 首だけ動かし、白い獣は何処か遠くを見た。

 ソレと同時に、無線が入る。

《………………眼が……合った》

「は!?」

 ソレは無いだろう? そう思ったヤンだったが、再び白い獣が首を巡らせると、

《お……俺も……だ》

 もう一人からも無線が入った。

 ヤンはギクリとした。

 言い様の無い悪寒が走る。

「……………………………………………………」

 恐る恐る、無線機から白い獣へと視線を戻すと、


「ファ!?」


 思わず情けない声が出てしまった。


 ヤンの視線を正面から捉えたのは金色の双眼。

(気づいてやがる)

 白い獣にはこちらの位置は全員バレている。

「…………俺が行く」

 意を決し、ヤンは出ていくことにした。

《おい!》

「俺が殺られたらすぐに撤退しろ」

 それだけ伝えると、ヤンは無線を切った。


(三人が無事だということは俺もまあ、殺されはしないだろう。最悪、警察に突き出されるかもしれんが……上から圧力をかけてもらえばすぐに出られるだろう)

 そこまで考えると、ヤンは白い獣の前に姿を現した。


「一人でござるか……まあ良い、とっとと回収してもらおうか」


 白い獣はのびているグゥウェン達を顎で指した。

「……何が……目的だ?」

 少しでも情報を得るべく、一か八かヤンは白い獣に話しかける事にした。

(……あいつらの慌てふためく様が目に見えるようだぜ……)

 己の無謀な行動に、ヤンは自嘲する。

「目的? いや、ただ其奴等を連れていってほしかっただけでござるが?」

 白い獣は小首を傾げた。

 美少女がやればそれはそれは可愛らしい動作であったが、この化け物がやると獰猛な肉食獣が獲物の品定めをしているようにしか見えず、ヤンは思わず息を止めてしまう。

「そ、それだけの筈無いだろう! だったら警察にでも連れていけば済む筈だ!」

「三人も運ぶのは面倒故……」

「なら警察を呼べば……」

 (殺し屋が「警察を呼べ」と言うのもおかしな話ではあるのだが)そこまで言ってからヤンは言葉を詰まらせる。

 そもそもこの屋敷から連絡手段を奪ったのは自分達だ。

 「解除してやるから改めて警察を呼べ」等と間抜けな事を言える筈もない。

「……解った」

 とは言え、ヤン一人で三人も運べる筈がない。

 少しの逡巡の後、ヤンは他の二人を呼ぶことにした。


「「……………………」」

 ヤン同様、苦虫を噛み潰したような顔をしながら二人が姿を現した。

「……行こう」

 白い獣を警戒しつつも、触らぬ神に祟りなし──余計な事はせず、もうさっさとずらかろう……ヤン達はそう決めて、のびている三人を背負った。


「あ、そういえば」


「「「!!??」」」


 まさに去ろうとしていた矢先、それまで静観していた白い獣が突如口を開き、三人は目に見えて身体をビクッ! とさせた。

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