・少女と会長と学園と
時刻は午前10時、入学式が始まったのが7時半。
会長の言うとおり、その間の大半は理事長の会話が占めており、ようやく終わったときには全生徒くたくたの状態だ。
……勿論、当然のように私も。
固まった身体を伸ばし、大きな欠伸が自然とこぼれ、それを隣で見ていた羅刹が笑う。
「凄い眠そうだったもんね…うふふ。前に前に倒れないか隣で見てて冷や冷やものでした。」
「あははは…仕方ないよ、でもほんとに凄いね、理事長の話し。長すぎて最初の方しか頭に入ってないよ」
「それは、その時点でうとうとしていたからでしょう?」
笑いながら的確に羅刹はありのままを言い、同じ教室に入る。
「それはそうなんだけどさぁ~……あ!そうだ!!ねね、羅刹ちゃんはその……何か能力とかあるの?」
そう。この学園は異能者もそうでない者も通い、その異能の強さや影響力によってクラス配分されるのだ。
私が通うクラスは普通のクラス。
つまり、弱い異能であれば同じクラスになってもおかしくはない。
羅刹ちゃんは私の質問に少し戸惑いながらも首を縦に振り、口を開く
「あの…だからって警戒とか距離を置かないでくださいね? レナさんにそんな事されちゃいますとショックですので……」
羅刹ちゃんのその表情はとても寂しそうで、語尾は消え入りそうな声。
……まるで、今までがそうだったかのように、目には暗い色に変わっていくのを感じ、私は笑顔で首を横に振って見せ
「ううん!!そんな事はしないよ、ほら、理事長も唯月会長も言ってたでしょ?
『持つ、持たないなどは関係なく、ここにいる全員は同じ生徒であり、何より同じ人間です。差別やいじめなど決してしてはいけない。』ってね♪
私もね同じ意見なんだ~、だから羅刹ちゃんは私のこの学園での最初の友達だよ♪」
「レナさん……はい。これからもよろしくお願いしますね」
私の言葉に羅刹ちゃんは目元を潤ませ、にっこり微笑む。
「もちろんだよ!! おっと、授業始まるみたいだね、最初は学園探検だね……うぅ、迷路みたいに色々あるからがんばって覚えなくちゃ……」
さっきとまでとは正反対に落胆する私を隣席の羅刹ちゃんは目を丸くして
「そんなに感情をころころ変えてると疲れないのかな?」と意味の分からないことを小声で呟く
……そう、学園での生活はまだ始まったばかりで、今日という一日がとても長く感じ、ため息を吐きながらも廊下へと整列して迷路じみた学園内を探検しに行くのであった。