・少女と会長と学園と
「レナー遅刻するわよー?」
家の中に響くお母さんの声に続いてドタドタと階段を駆け下りる足音。
リビングからはウインナーを焼く音と香ばしい匂い。 テーブルには焼きあがったトーストにイチゴジャムという甘い香りが漂い、座ると同時に口にくわえながら答える。
「わはってふほ~…ん~やっぱりイチゴに限るよね~おいしっ♪」
「こらこら、口にくわえながら喋らないの。」
焼きあがったウインナーをフライパンから私の目の前のお皿へと移しながら優しく注意するお母さんに笑ってごまかし、出来たてのウインナーにかぶりつく。
「それが制服かー…うん、似合ってるわよ♪」
向かいの席に座るなり、じーっと見つめ満面の笑みで親指を突き出すお母さんに 「でしょでしょー♪」と言いながら立ち上がり、くるりと回ってみせる。
「それよりいいの?ゆっくりしてて…確か今日の入学式は普通より早めに登校しなきゃいけないんじゃなかったかしら?」
「……」
お母さんの言葉に頭が真っ白へと変わり今までの緩い気分が急速に冷や汗へと変わり
「………ん?」
そんな私に気付いたお母さんは首を傾げ、間違ったかしら?と呟きながら口元は笑っていた。
「あーーーーーーー!!わすれてた!!どうしよう!?間に合うかな?」
「今から走っていけばまだ間に合うわよ。行ってらっしゃい。レナ」
お母さんはくすくす笑いながら私に手を振り見送る。
「ありがとおわ!!っととっ…行ってきまーすっ♪」
段差に躓きそうになりながらドアを開けて飛び出す。