エピローグ
不良、それは現代社会において煙たく思われる存在である。
主に窃盗、暴力、好ましくない交際関係を送ったり、未熟な学生の唯一の武器である若さを悪用する者たちを指す名称である。いずれも動機は、小遣いの金欠や思春期特有の格好つけによるものだ。
この度2年生になりたての現役女子高校、唐沢雅もそのうちの一人だった。母が若くして亡くなり、安月給である研究員の父となんとか繋ぎ止めて生きているという状況であるため小遣いなど当然支給されない。おまけに学校はバイト禁止を徹底しているため、趣味に費やす金銭を稼ぐことはできないのだ。
そこで援助交際などに端から興味ない雅はカツアゲを決行した。空手有段者という実績を汚しながら、そこらの不良に声を掛けては倒し、私服やアクセサリーを買うための金を稼いだ。所詮相手も悪いことをしていそうな連中ばかりだったため、傷つけることに対し抵抗はなかった。むしろ世間は、底辺どうしが潰しあってくれて嬉しいのかもしれないなどと愚かな考えまでしまう。
そして今日も撒いた餌に噛み付いてきた獲物たちに鉄拳を加えてやる。
「くっそ、マジにしちゃってあんた頭おかしんじゃないの!」
「・・・・・・金」
「わかったよ! 払うからもう関わんなこのくそアマ!」
何を言われようが構わない。暴言なんて数え切れないほど浴びせられた。ただ金が貰えれば雅はそれでよかった。友達と笑い合いながら普通の女子高生として平凡に生きる、世間一般的にはそんな当たり前のことが自分にはできない。何故こんなにも私の人生はハードなのかと何度も考えた。そしてもし神様というものが実在して、世界を平等にまとめているつもりなら殴ってでも目を醒ましてやりたい。最近はずっとそんなくだらないことに思考回路を支配されてしまっている。それゆえに消えて楽になりたいとも何度も思ったことだろうか。
しかし数日後、幼少から恨み続けた神様にも縋りたくなる出来事が起こるとは思ってもいなかった。