グッマイラブ 第9話
統子も忘れていた。それは所属する音楽事務所にも絶対に言えない秘密であった。
トラウマとして統子の心の中には残っている。忙しさで忘れかけていたものが再び掘り返された。
あまりのショックに統子は、急病と称して全てのスケジュールをキャンセルした。
統子は俺に相談するしかなかった。統子はひと目を忍んで俺の所に相談に来た。
俺は怒りで煮えくり返った。やはりあの時に警察に言うべきだったのか。
しかしあの時は統子のことを考えて、奴等を黙らせ全てが終わったと思っていたのに。
その三人は調子に乗って多額の金を要求してきた。
俺はどうしたら、奴等を完全に黙らせられるか考えたが結論が出ない。
統子が有名人でなければ、闇から闇へ葬ることは出来るのだが。
あんなダニは一度金を払ったら最後、次から次と要求してくるに決まっている。
もともと俺はそのワルだった。あいつ等の考えている事は手に取るように分かる。
考えたあげく、統子に俺の案を説明した。その結果奴等を誘い出すことにした。
誘い出す為にはどうしても統子本人に来て貰うしかなかった。
勿論、要求された金は用意していない。奴等はまんまと指定された公園にやって来た。
統子は三人組の前で震えていた。『俺が付いているから』そうは聞かされていてもやはり不安だっただろう。
またあの悪夢が統子に蘇って来た。
もう高校生でもない立派な大人だが、普通の大人ではない超売れっ子の歌手である。
それが奴等の強請りで崩れ去ろうとしている。苦労した掴んだ夢が砕け散る恐怖が襲って来た。
俺は茂み隠れてビデオカメラで撮り続けた。恐喝の証拠を掴む為に飛び足すのを耐えていた。
震いながら統子もそれなりの演技をしている。
「分かっているな。警察に言ったらバラスからな。で、金は持って来たか?」
暗がりだが公園の防犯灯の薄明かりで、なんとか彼らの顔がビデオに写っている。
俺は証拠となるビデオを撮り終え、そのビデオをベンチの下に隠してから歩み寄って行く。
奴等が統子を取り囲み押さえつけようとした時だ。俺は奴等に声を掛けた。
「オイ!! てめえら、あれほど言ったのに忘れたのか」
「なっなんだ! おめぇはマネジャーか。俺達はちょっと口止め料が欲しいだけだ。別に取って喰おうって訳じゃないぜ。怪我しないうちに消えな」
「黙れ、この野郎! 俺を忘れたのか」
「なんだって? ……あっ、まさかあの時のおめぇか。だけどよ~もう時効だぜ。時効」
俺は完全に頭に血がのぼっていた。いきなり一人に襲い掛かった。
だが奴等も用意周到にナイフを隠し持っていた。俺は不用意にも突き出されたナイフで右脇腹のジャケットが破けた。
つづく




