断罪イベント365 ― 第4回「証拠写真がピンぼけ」
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
豪奢な大広間。壇上の王子は、いつものように胸を張った。
「本日この場をもって、彼女を断罪する!」
会場がざわつく中、王子は得意げに羊皮紙を掲げる。
そこに貼られているのは魔道具カメラで撮られた証拠写真。
「見よ! これが浮気の証だ!」
どよめき。観衆は身を乗り出す。だが次の瞬間――。
「……殿下、これ……人ですか?」
「白く光ってて顔が飛んでるぞ」
「いや、これ殿下が写り込んでません?」
会場はざわつくばかり。
――この写真を撮ったのは、黒幕令嬢が雇った探偵だった。
だがそいつはヘボ。張り込み中に居眠り、レンズに指紋ベタベタ。
魔道具カメラの説明書も読まず、ピント合わせは完全に無視。
ある夜、婚約者が男性と並んで歩く姿を見て――
「おっ、男と歩いてる!」
慌ててシャッターを切る。
結果は、ぶれぶれ・ピンぼけ・光飛び三重苦。
それでも「シルエットさえあれば大丈夫でしょう」
と黒幕に提出したのだった。
壇上の王子は必死に叫ぶ。
「と、とにかく! これは彼女の不貞の証なのだ!」
だが、婚約者は静かに口を開いた。
「殿下、ご確認いただければ分かるはずです。
――その隣を歩いているのは、わたくしの弟です」
「な……弟!?」
会場が大爆笑に包まれる。
「弟オチか!」
「殿下、節穴!」
「探偵ェェェ!」
その瞬間、会場の扉が開き、少年が一歩前に出た。
「姉上!」
場内はさらにどよめき、黒幕令嬢の顔はみるみる青ざめる。
「で、ですが! 写真には怪しい影が――」
「ただの指の跡だな」
「心霊写真よりひどい」
観衆の突っ込みが飛び交い、王子の威厳は地に落ちた。
そして探偵が小声でぽつり。
「ピントがずれてまして……」
その言葉が、最後の雨粒のように場内を笑いの渦に沈めた。
探偵費用 ケチるから・・・
総評:証拠はピントを合わせてから提出せよ。
追加:経費はケチるな。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m