表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/3

モード変更後

「……え?」

 今、なんて言った?


「ベル?」

 ラウル殿下が私に手を伸ばす。

「ーーっあ」

 ぐらぐらと視界が揺れる。

 目を開けていられないーー。


 ……プツン。


 まるで、前世でテレビの電源を落とした時みたいに。

 私の意識は、一瞬で消えた。


◇◇◇


「……ん」

 頭がとても重い。……というか、痛い?


「しっかりなさってください、ベルナンデ様!」

「!!!」


 名前を呼ばれて、急速に意識が覚醒する。

 目を開けると、鏡に純白のドレスに身を包んだ私が映っていた。


「……え?」

 さっきまで、貴族学園の卒業式だったはず。こんなドレスなんか着ていなかったわ。


 それにさっきのアナウンスは……。


「え? ではありませんよ! 本日は、ラウル殿下との結婚式ですのに」

 侍女のオリスが鏡越しに目を釣り上げた。

「……結婚式?」

 ラウル殿下の告白は断ったはず。

 それなのに、どうしてーー。


 もしかして、ラウル殿下のハッピーエンドルートに入ったってこと?


 ラウル殿下のエンドは、ラウル殿下とベルナンデの結婚式で終わる。


 私は乙女ゲーマーだったけれど、その他にも数多くのライトノベルも読んでいた。

 その中には、こうしてゲームの中に転生する話も数多くあり、その中には「強制力」と呼ばれる世界の理に抗えない、みたいな話もあった。


 つまり、告白を断ったにもかかわらず、その強制力とやからが働き、ラウル殿下とのハッピーエンドを迎える……という展開もありえなくはない。


 時間軸が学園卒業からいきなり飛んでいて、結婚式になっているのも、この世界がゲームの世界ならではかしら。


 ……でも、よかった。


 それなら、意識が途切れる前に聞いた、嫌われハードモードとかいう言葉は、ただの夢、よね。


 そもそも、この乙女ゲームにモードの選択なんてなかったはずだし。


 どうせ生きるなら、嫌われハードモードより、愛されイージーモードほうがいいに決まってる。


「いつまで惚けておいでですか?」


 私が考えに耽っていると、オリスが先ほどよりも厳しい瞳を私に向けた。


「ごめんなさい……?」


 たしかに、結婚式の準備中なのにぼんやりしているのは、悪かったけれど。


 オリスはいつもこんな態度だったかしら。

 意識を失う前のオリスはもっと……。


「では、私どもは失礼いたしますね」


 鼻を鳴らすとオリスを始めとした侍女たちは出て行ってしまった。


「……え」


 どうやら、ドレスの着付けは終わったらしい。

 でも、私、意識を失っていたから、結婚式の流れなんて全然わからない。


 どうしたものか。


 ……なーんて、私はこの世界のヒロインなのだ。


 だから、多少の失敗は許されるだろう。


 そう思いながら、改めて鏡を見る。

 豪華な純白のウェディングドレスに、煌めくジュエリー。琥珀色の瞳。そして、綺麗に高く結い上げられた髪ーーこの髪のせいで頭が痛かったらしいーー。


 どこからどうみても、ラウル殿下のハッピーエンドのヒロインだった。


「……そう、よね」


 先ほどのアナウンスは忘れよう。

 それに、オリスの態度も、少し虫の居どころが悪かっただけよ。


 一度、頬を叩く。


「よし」


 ラウル殿下ルートに入っちゃったのは予想外だったけれど。まあ、相手は第一王子だし。


 結婚相手としては、そこまで悪くない。


 それに、一人を選ぶのは世界の損失、だと思っていたけれど、将来の王妃としてあまねく民を愛するのは、ヒロインとしてありかもしれないわ。


「……うん」



 年貢の納め時ってやつかしら。


 ……コンコンコン。

 控えめなノック音に、扉を開ける。


「お父……」


 そこには、養父ユーズ公爵が立っていた。

 満面の笑みで近寄ろうとして、思わず笑みを引っ込めた。

「……お父様?」


 お父様は大変冷めた瞳で私を見つめていた。

 

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ