ツンデレ
「なあミサキ、ツンデレって何だと思う?」
「はぁ?」
ミサキの部屋で『らき☆すた』という漫画を読みながら、ふと思った自分。そんな事を俺が発言したら、ミサキに素っ頓狂な声を出して返事をされた。またこの馬鹿が……とか思ってんのかな?
「ツンツンしてデレデレする事でしょ?」
ものすごくめんどくさそうな声をだされ、早くもこの話を打ち切ろうとされる。
「いやいや!? それだけじゃさっぱりわからないだろ? ツンツンしながらデレデレするってどうやるんだ?」
ようやくベッドから起き上がり、ミサキは俺の話をきちんと聞いてくれてくれる体制になった。
「何で突然そんな事、聞きたくなったのよ?」
「や、ミサキにツンデレしてほしいから」
「1回死んでやり直して来い」
……ものすごくクールに言い返された。それぐらい希望を抱かせてくれてもいいのに。
「はぁ、ミサキがツンデレしてくれないとは……残念……でもさ、ツンデレてくれるのはあきらめるけど、じゃあ実際にどんなのがツンデレって言うんだろな?」
「2人っきりになったときに、突然甘えてくればそれがツンデレって言うんじゃないの? ツンデレなんて実在するとは思えないけどねー」
うあ、ツンデレに憧れを抱いている大多数の男になんて一言を。いいじゃないか、ツンデレというのは男の夢なんだぞ! そのツンデレが具体的にはよくわからないけど、なんかツンデレって言葉自体にあこがれるんだよ。
「でもさ、2人っきりになったときだけしかデレないんだったら、他の人にはツンデレってわからないじゃん。だからもっとわかりやすいツンデレ像ってあるんじゃないかなーって思うんだよね。だからミサキさ、なんかさっきのとはまた別のツンデレ像ってのを言ってくれない?」
「うっわ、めんどくさっ、自分で考えればいいのに……」
そういいながらもウンウンうなりながら考え始めるミサキ。
「うーん……じゃあ態度だけは思いっきり嫌ってるのに、しゃべっている内容は大好き、みたいな感じなのはどう?」
それをツンデレというのだろうか? 態度が大嫌いな状態は別にツンツンと言うのではないのかと思うのだけど。
「えっとなー、こんな感じなのか? 『私、あなたのことが大好きです!』と、夢子はまるで汚物を見るような目つきで鬼太郎に告白した……いや、これじゃ精神障害者か、夢子ちゃんが鬼太郎に脅されていやいや言わされているって感じじゃねえか?」
「それじゃ、しゃべっている内容は大嫌いなのに、態度は大好き、みたいな感じじゃないの?」
それもまた違う気がするんだけど……。
「えっと、『何でゴキブリみたいなクズと同じ班にならなきゃいけないのよ!』そういいながら夢子の手はぎゅっと鬼太郎の手を握る。強く握られて、鬼太郎がどう頑張っても放すことは出来そうにない。少し手が痛いなと鬼太郎が思い始めていたとき、ようやく手を離してくれた。ほっとしたのもつかの間、ニコニコと笑いながら今度は腕を絡めてきた、驚いて鬼太郎は夢子を見ると、『なによ! 文句ある!?』とうれしそうに怒鳴った。あ、かなりツンデレっぽいな。ミサキ、そんな感じで1回俺に接してみてよ」
「たとえ世界が滅んでもいや」
……本気でばっさりぶった切るよな、ミサキって。せめてもう少し躊躇してくれてもいいのにさ。
「あ、あと、怒りながらも、こっそり世話を焼いてるって言うのもツンデレのひとつになるんじゃないの?」
「んーと……『まったく! あんたってほんとにだらしないんだから! もう知らない!』そう夢子は叫んで部屋を飛び出していった。部屋にぽつんとただ1人残された鬼太郎。無理もない、朝は寝床でグーグーグー。昼はのんびりお散歩だ。夜は墓場で運動会。そんな毎日を続けていたら夢子も愛想を尽かすに決まっている。これからどうしようかなと思いながらも、また眠くなって寝てしまった鬼太郎……昼になっておきてみると、毛布がかけられ、昼食の準備までしてある。びっくりしてちゃぶ台の上を見てみると『もう! しっかりしてよね!』と書かれた置手紙。夢子、ありがとうと思いつつ、また昼はのんびりお散歩、夜は運動会にいそしむ鬼太郎なのであった……なんかこれはツンデレって言うより、尽くす女とひも男みたいな感じだな」
「……さっきから、アツシってば文句ばっかりだね」
しょうがない、なかなか実在しそうなツンデレのイメージが沸いてこないんだから。
「ミサキがツンデレを実演してくれたら俺も満足するからさ。ミサキ、ツンデレてよ」
「だから嫌だって言ってるでしょ。アツシ、しつこい」
「しつこいといわれても、俺は生でツンデレが見たい」
「あんた、馬鹿じゃないの? 私はやらないから」
「お願いだからやって! 一生のお願い!」
俺はひたすらお願いを繰り返す。ツンデレと言うのをやっぱりみてみたい!
「……」
お、黙った。もしかしてこれはツンデレを実践してくれるのか? デレてくれるのか?
「……も、もう……アツシってばいっつもそうやってからかうんだから!」
おおっ! ミサキが、ミサキがデレた! ミサキがでれたっ! …………けどっ!
「おえええぇ、ミサキ、きもっ! きもすぎるっ! お前にツンデレは似合わないっ!」
「死ねえっ!」
「死ねえっ」というミサキの言葉と同時、こぶしが俺の目の前にやってきて、そのまま俺は吹っ飛ばされた。『せっかく……のにさ』とぶつぶつ言いながら部屋を出て行くミサキ……これもまたひとつのツンデレなんじゃないかなと思う。ミサキのツンデレが見れて、俺は本望だ。
一番簡単なツンデレの作り方。
・語尾に『だから!』もしくは『だからね!』をつける。
・最初の一文字を重ねる。
らしいです。ネットサーフィンしてるときにどこかに書いてありました。
「おはよ、元気か?」
「わ、私は元気なんだから!」
「また明日ー」
「ま、また明日なんだからね!」
……なるほど、ちょっとツンデレっぽくなりました。
それではっ。