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8 夕食 レオナルド・ボンディング目線

レオナルド・ボンディング目線です。


~レオナルド目線


「リリア嬢の口に合うといいんだが」

食堂の大きなテーブルに着くと、メイドたちが次々と料理を並べていく。

リリア嬢がその量に驚いて目を丸くしている。


「ここでは料理はいっぺんに出すように言ってあるんだ。俺はかなりの大食漢だから。リリア嬢は食べきれなくても構わない。自分の食べたい分だけ食べるといい」


「はい!ありがとうございます。いただきます」


リリア嬢が美しい所作で料理を口に運ぶ。

さすが王太子の元婚約者だな。

食事のマナーも完璧だ。


「美味しいですわ!この鶏肉、柔らかくてジューシーで、バジルの風味も最高です!」


その笑顔は本当に美味しいのだな。

そうか、鶏肉が好きなのか。

他にはどんなものが好きなのだろう、逆に嫌いなものはあるのか?

聞き出して料理長に伝えておいたほうがいいな。


「そうか、それは良かった。リリア嬢は嫌いな食べ物はあるのか?もしあれば今のうちに言っておいてくれ」


「嫌いな食べ物はありませんわ。食べ物なら何でも食べますわよ?」


食べ物なら?

食べ物でないものは普通に食べなくてもいいと思うが。

いや、食べ物でないものは食べられない。



「ところで、ボンディング様はトーマス殿下とはどういうご関係なのですか?」


リリア嬢が俺とトーマス殿下の関係を聞いてきた。


知らないのか?

彼女は王太子の元婚約者だ。

王太子妃教育では王族の親戚関係は一番に習うはずだが。


「ああ、彼は俺の又従兄弟に当たる。俺の祖母は前王の妹なんだ」


「あ、それは存じているのですが・・・・・・ボンディング様とトーマス殿下の個人的な、と申しますか・・・・・・お小さい頃から仲がよろしかったのですか?」


そうか、トーマス殿下がなぜ俺を自分の婚約者に選んだのか気になっているのか。


そんなのは決まっている。

リリア嬢に対する嫌がらせだ。


「いや、俺はほとんど公の場には出ないから、滅多に王族に会うことはない。今回、呼び出されて会ったのも七年ぶりくらいか。ああ、前回会ったのはトーマス殿下の婚約式だったな」


・・・・・・し、しまった!

トーマス殿下の婚約式の相手はリリア嬢だ。

余計な事を言ってしまったか?


「そうですか、私の婚約者に選んで下さるくらいですから、てっきりよく知る仲なのかと思っておりました」


あっさりと流したな。

彼女はトーマス殿下に対して恋愛感情は無かったのかもしれない。

トーマス殿下に新しい恋人が出来たことも、婚約を破棄されたことも特に傷ついているようには見えないし、俺と婚約することになったのを感謝しているとまで言っていた。


しかし、いくら恋愛感情が無かったとしても10歳の頃から七年間も婚約者として共にあったのだ。

仲睦まじいと評判でもあった。

王太子妃教育だってそれはそれは厳しいと聞く。


それなのに浮気され、一方的に婚約を破棄された挙げ句、会った事もない男の元へ嫁げと命令された。


それも魔物のような見た目と恐れられ、幾人もの令嬢に婚姻を断られていると笑い者になっている男の元へ。


これは完全に、元婚約者であるリリア嬢に対する嫌がらせではないか。


元婚約者として、貴族令嬢として、そのプライドはズタズタに引き裂かれたはず。

普通の女性なら烈火の如く怒り狂い罵詈雑言を浴びせるか、引き籠もって泣き暮らしてもおかしくはない。


「俺もなぜ自分に声が掛かったのか分からないが。君と婚約出来たことに関しては、俺もトーマス殿下に感謝している」


「まあ、嬉しいですわ!それにしても、さすがトーマスね。本当に素敵な方を紹介して下さったわ。ボンディング様、これからもトーマスをよろしくお願いいたしますね!」


トーマス、か。

幼い頃からの婚約者だ、呼び捨てにしてもおかしくはない。


「君を裏切るような男とはよろしくしたくないのだが」


しかし何故か無性に腹立たしい。


「トーマスは優しい人間ですわ。今回の事も、沢山考えて、沢山悩んだ末に出した結論だったのだと思います。私はトーマスの事を信じておりますもの」


そう言って笑う彼女の顔は、穏やかで優しく美しい。


トーマス殿下との七年間は、リリア嬢にとってどういうものだったのだろう。


なあ、トーマス殿下、お前は本当に後悔しないのか?

これ程お前を大切に思ってくれている女性を、どんな気持ちで裏切った?


俺はやっぱりお前とはよろしくしたくはない。



────────────────────

 9 リリアの好みのタイプ へ


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