26 話し合い
みんなが私を守ってくれるための話し合いをしている。
セバスが暖かいココアを淹れてくれた。
「疲れているときは甘いココアにかぎります。リリア様、どうぞ」
「ありがとう、セバス。私ココア大好きなの」
「それはようごさいました」
甘いココアを飲みながら、リリアになってからの自分を振り返る。
私には、トーマスしかいなかった。
トーマスに依存して、逃げる事だけを考えていた。
でも今は違う。
レオナルド様がいる。
ナタリーもいる。
もちろんトーマスも。
だから、私は立ち向かう。
もう逃げるだけじゃない。
守られるだけじゃない。
強くなる。
レオナルド様はあれからずっと私の肩を抱き、手を握ってくれている。
その手をギュッと握り返し、言った。
「計画通り、私は西の隣国に逃げたことにしましょう。信憑性を持たせる為に、トーマスと国境付近まで行ったほうがいいかも知れませんね」
「いや、ナタリーから聞いた遺書の内容を考えると、あの男は国王の座を捨ててでも・・・・国を滅ぼしてでもリリアを追って来るだろう。それに、国境付近は無国籍の破落戸であふれている。そんな危険なところに大事なリリアを行かせるわけにはいかない」
確かにレオナルド様の言う通り、マサヤはどこまでも追って来るだろう。
前世では殺してまで私を手に入れようとしたのだから。
「もうさぁ、あたしがリリアちゃんに成り済まして国王のところにいくわよ。いい加減にしなよって半殺しにでもすれば諦めるんじゃない?」
「アホ。あいつに身代わりが通用するか。10歳の、しかもリンとは違う顔のリリアを見て気づくくらいだぞ?それにお前の半殺しは全殺しだ。」
「でも一度死んだ方がいんじゃない?あ、二度目か。前世ではリンたんを道連れにしたけど今度は一人でね、なーんて、あはは」
「お前は王殺しで首を落とされたいのか、この脳筋!」
「何よ!冗談でしょ!流石にあたしも本気で殺したりしないわよ!」
トーマスとナタリーがギャーギャーと言い合いを始めた。
夫婦喧嘩でさえ、息ピッタリなんてうらやましいわね。
トーマスもナタリーといると、表情も言葉遣いもすごく自然でリラックスしてるのがわかる。
「ナタリー、私の身代わりなんてダメよ? それにトーマスは愛する妻を心配してるのよ、私はトーマスのことなら何でも解るんだから、ねトーマス?」
「な、何だよリリア!恥ずかしいこと言うなよ!」
ナタリーが顔を真っ赤にしてもじもじしてる。
さっきまでの勢いはどこにいったのよ、本当に可愛いわね!
ナタリーが本物の女の子として生まれ変われて良かった。
実体のなかった摩周がトーマスとして生まれ変われて良かった。
トーマスとナタリーが出会う事が出来て本当に良かった。
そんな中、顎に手を当てじっと考え込んでいたレオナルド様が呟いた。
「・・・・・・それだ」
「え?」
「一人で死ぬ・・・・・・これだ!リリアが死んだことにすればいい! リリアが死んだと王宮に伝え、このボンディング公爵家で盛大な葬儀をあげる。棺の中さえ見られなければ騙しきれる!」
「た、確かに! 死んだリリアを殺すことはできないもんな、それならあいつも諦めるしかない! 流石レオナルド! それでいこう!!」
朝になったら、私の実家であるコンポジット伯爵家にリリアの訃報を出す事になった。
それは、すぐに王宮にも伝わるだろう。
『リリア』が死ぬ。
そして四日後、王宮から戻ったセバスから悲しい報告があった。
それは私たちだけでなく、この国のすべての人間を震撼させた。
アレクサンドラ国王の死。
彼は自ら首を切って命を断った。
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27 国王の死
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