-92- 曇り
曇りの日は心がなぜか侘しくなる。図解すれば、(--)顔となる訳だ。^^ ところが、悪い内容が重なっていたとしても、晴れれば、なぜか(^^)顔になるのは不思議といえば不思議だ。これは私の場合で、読者の皆さんの心理とは必ずしも一致しないから誤解なきように…。雨だと、どうなの? という話になるが、雨の場合は不思議と(・・)ぐらいで、時と場合で変化する。^^
梅雨の晴れ間、菊の五十円硬貨[旧五十円硬貨で穴は開いていない]のようなウキウキした顔の菊丘は、衣類や布団の日光干しをしていた。昨日は曇りで、どういう訳かテンションが侘しく下降し、何をする気力も失せていたのだが、今朝は晴れて気分が高揚していた。
「やあ、菊丘さん! 御精が出ますな…」
庭の垣根越しに声をかけたのは、隣に住む新五千円札の顔をしたような北里だった。旧五十円硬貨と新五千円札とでは雲泥の差、月とスッポンの差である。^^ もちろん、北里が雲や月で、菊丘が泥、スッポンということになる。
「ああ、北里さんでしたか、いいお天気で…」
気づいた菊丘が布団叩きの手を止め、下から目線で北里に挨拶をした。新五千円札>旧五十円硬貨といった上から目線ではない顔である。^^
「ですな…」
北里は笑顔で短く返しただけだったが、どことなく菊丘とは威厳の差が滲み出ていた。北里はホールディングスの会長、一方の菊丘は、しがない年金暮らしの元公務員だった。しばらく垣根越しに世間話をし、二人は家へ入った。
『格差か…』
溜め息を吐きながら菊丘はカップ麺の天蕎麦を侘しく啜った。一方の北里は余命、幾許もなく、何も食べられない健康状態だった。
菊丘さん、あなたは幸せですよ。美味しい天蕎麦が食べられるんですから、曇りどころか快晴です!^^
完




