-87- 今年も…
老いて歳末ともなれば、今年も…という侘しい気分に陥る。だが、よぉ~~く考えれば、一年が無事に過ごせたのだから有り難いのである。嗚呼有り難い、有り難いっ! …と思いながら、直立不動の姿勢で四方に一礼する必要があるに違いない。神様、仏様の加護なのか? 将又、キリスト様、その他の神々様の恵みによるものなのか? は、分からないが、まあ、そういうことだ。^^
村畑は侘しい思いにうち沈んでいた。別に沈まなくても、浮袋か何かにしがみつく・・という手立てもありそうなものだが、村畑は侘しい思いにうち沈んでいたのである。^^ 村畑は今年で卒寿を迎え、どちらかと言えばお目出度い部類に属する人物だったのだが、彼は毎年毎年、雑用に追い回される…と深層心理で感じていたから侘しかったのだ。今年も…と思える諸事には大掃除、新年の準備、正月の料理etc.が目白押しに控えていた。
『ああ…極楽へ行きたい』
ふと、そう思った村畑は、動きを止めると溜め息を一つ吐いた。ただ、自殺しよう…などと深刻には思っていなかった。^^ その後、コンビニで買ってきた安価な特売弁当を電子レンジでチン! し、暖かいお茶で食べているうちに、えも言えぬ幸福感が満ち溢れ、村畑の今年も…という侘しい思いは消え去っていた。
「そうかっ! こうして大過なく過ごせる今が幸せなんだな…」
得心した村畑は、いつの間にかウトウトと眠ってしまった。外では、お前なっ! と撞かれる除夜の鐘音が、グォ~~~ン! と鳴って村畑を起こそうとした。だが、大人物の村畑はグッスリと深い眠りに落ち、微動だにしなかった。
今年も…という思いが消え、グッスリと眠れる村畑さん、あなたは大物です。^^
完




