-85- 出世
生きていれば、誰だって出世したいものだ。この出世という意味は、地位やお金、それに名声といった他人に比べて一段、高い立場に立てる・・という内容をいう。私なんかは、いつも下々でサッパリだったのだが…。^^ しかし、出世できないからといって侘しい気分に落ち込む必要はないのである。出世して必ず幸せな人生を送れる・・という保証はないからだ。それどころか、出世したことで人生を棒に振ったというケースも多々、見受けられるのである。
とある町役場である。今年で勤続21年になった万年ヒラの鹿尾は角を切られたあとのような状態で、公園をショボく歩いていた。いくらなんでもこの春には係長へ昇格出来るだろう…と目論んでいたのだが、内示は待てど暮らせど、なかったのである。トボトボとショボく歩きたくなるというのも無理からぬ話である。^^ 同期に入庁した職員達は皆、課長だの課長補佐だのと出世を遂げていた。
「俺はダメだな…」
鹿尾は、自分の不出世を嘆きながら、公園の古びたベンチへドッカリと腰を下ろした。しかし、鹿尾の出世できない万年平は、少しも侘しくなかった。というのは、市町村合併の話が俄かに盛り上がり、各課の管理職は慌ただしく対応する破目に陥り、侘しい勤務を強いられるようになったからである。万年平の鹿尾にとっては無関係な話で、いつものように仕事を終えると帰宅する平穏で平和な日々が続いていった。
「市町村合併らしいよ…」
「あら、そう…」
他人事のように美味い鍋料理を囲みながら家族と団欒し、鹿尾はまだ寒が残る庭の木々を愛でながら美酒を煽った。鹿尾には出世しなかったことが、ほのぼのとした幸せのように思えた。
鹿尾さん、私もそう思えます。^^ 侘しい勤務はいやですからね。^^
完




