-82- 自我
自我があるから侘しい気分が訪れるのである。そのことに気づけば、かなり生きやすくなるはずだ。ところがどっこい、世の中はそう簡単には生きられない仕組みになっている。多くの柵が家を一歩出れば待ち構えている・・と、まあ話はこうなる。 明智光秀さんだって自我を捨て、荒木村重さんのように家来も家族も捨てて素浪人になっていれば事変も起こす必要がなかったのではないか…と考える訳だ。^^
倉崎は悩んでいた。悩めば悩むほど侘しくなり、テンションが落ちていった。市民課課補佐の倉崎が勤める、とある市役所は、人事異動を控え関係者達の疑心暗鬼の場になっていた。
『ああ、いやだ…』
課長に成れようと成れまいと、他人から見ればドォ~でもいいことなのだが、倉崎にすれば生きるか死ぬか…と思えたのである。ついに倉崎は自我を捨てることにした。
『もぉ~いやだっ!!』
倉崎は決断すると、体調の悪化を理由に長期休職の手続きを取った。首の皮一枚を残し市役所から去った。
その一年後、倉崎は復職した。出世レースからは取り残されたが、なぜか侘しい気分は倉崎から消え去っていた。
『サッパリした…』
倉崎はニンマリと哂った。
侘しい気分が消え、復職も出来たんですから、よかったですね倉崎さん!^^
完




