-79- 我慢
年老いてグッ! と我慢する気分は実に情けなく侘しい。ドォ~も思わなければ別にドォ~ってこともないのだが、齢を重ねれば、ついアレコレ…とつまらないことを考えてしまう。和尚さんが言われる無念無想の境地に至るのは、現実社会で生きる私達にとっては至難の業なのである。この境地で世がスイスイと渡れる方は、{達人]と、お呼びする他はないお偉いお方だろう。^^
昭和四十年代中頃のお話である。官庁に勤める中間管理職の鮒川はグッ! と我慢していた。何を我慢していたのか? といえば、上の上司からはアアだコウだと指示され、下の組合からはナンだのカンだのと要求を押しつけられていたのである。もう、どうにでもしてくれっ! と、俎板に乗った鯉ならぬ鮒になった気分だった。恰もそれは、桶の中に炊き上がったご飯と一緒に漬け込まれる塩漬けされた鮒の状況に似通っていた。^^ だが、毎年、繰り返される組合闘争だから、ここは我慢するしかないか…と諦め、侘しい気分で残り少なくなった歳末の日々をビクビクしながら送っていた。誠にお気の毒と言う他はない。^^
「課長っ! 36(サンロク{サブロクとも呼ばれる})が締結されましたっ!」
課長席に副大事に至らずよかったですねっ!^^
完




