-72- 冬場
冬場の天候は安定せず、実に侘しい気分にさせられる。
年が明け、予約しておいた正月旅をと、心勇んで家を出た蝦川は、駅のホームでテンションを落とすことになった。というのも、朝の出がけは快晴で、空には雲一つなかったのである。ところが、駅の新幹線ホームのベンチに腰掛けた途端、パラパラと雨粒が落ち始めた。少しづつ下り坂にはなるとは天気予報が言っていたが、そう崩れることもあるまい…と折り畳み傘を旅行カバンに忍ばせておかなかったのだ。同じ旅をするなら降らずに越したことはない。蝦川はホームに列車が入ってくる間、ポカーンと放心した顔で空を眺める他なかった(別に眺めていなくてもいいとは思うのですが…^^)。よくよく考えれば、冬場の天候は安定しない・・としたものだ。それに気づいた蝦川は、まあ、いいか…と上目線で空を見上げた。早い話、首を上げて空を眺めてはいるが、気分は雲の下を見ている・・といったような気分である。天を見下す気分なのだから、蝦川は、かなりの大物に違いない。^^
そうこうしている間に、列車が到着し、蝦川は車中の人となった。目的の駅に着いたのは、それから小一時間後である。蝦川が駅を出ると、先ほどまでの時雨は止み、雲の切れ目から陽が射していた。冬場なんだから一喜一憂することもないか…と蝦川は湯治の足湯に浸かりながら思い直し、その後は温泉宿の人となった。いい温泉の湯に浸かると、蝦川の侘しい気分は、いつしか消え去っていた。
冬場の侘しい気分は、湯治の湯に弱いようです。^^
完




